ダム問題に取り組む市民団体では、国土交通省による全国のダムの堆砂に関するデータを毎年情報公開で請求してきました。国土交通省ではこれを受けてか、ホームページで「全国のダムの堆砂状況」を公開するようになり、現在、以下のページで2012年度からのデータを閲覧できます。➡「過去の全国のダムの堆砂状況」
掲載されている最新のデータはこちらです。➡「全国のダムの堆砂状況(令和4年度)(PDF 603KB)」
当会では、これまで同様、情報公開請求を行い、2022(令和4)年度のエクセルデータを入手しました。国土交通省のホームページに掲載されている表と同様、ダムのリストは治水等多目的ダムと利水ダムに分かれており、これまでは竣工年月の欄がありましたが、今回はありませんでした。
八ッ場ダムは2019年度末に完成していますが、情報開示資料のリストにも国土交通省ホームページに掲載されているリストにも八ッ場ダムは含まれていませんでした。
八ッ場ダムの堆砂状況については当会で別に開示資料を入手しています。それらの資料によれば、八ッ場ダム貯水池にはダム完成前に襲来した東日本台風により想定を超える大量の土砂が堆積しました。東日本台風襲来前の2019年8月から襲来後の同年12月に堆積した土砂量は251万㎥、翌年11月までにさらに23万㎥増加。この時点における堆砂量274万㎥は想定の15.7倍にもなりました。ダム堆砂容量はダムの寿命とされる100年分に貯まる土砂量を想定して計算されますが、八ッ場ダムの場合は完成から間もないこの時点で堆砂容量の15年分余が使われてしまったことになります。詳しい解説はこちらのページをご覧ください。
利根川水系では八ッ場ダムより少し貯水容量の大きな下久保ダム(1968年)や鬼怒川上流の川治ダム(1983年)の堆砂量がすでに100年分の想定を超えています。堆砂量が多いダムの中には、堆砂量が堆砂容量の何倍にもなっているダムもあります。堆砂による水害発生等を防ぐために各地のダムでは、ダム湖の土砂の浚渫、ダムの下流に新たに大きなダムを建設して古いダムを土砂ごと新しいダムの貯水池に沈めるなどの方策が模索されていますが、堆砂問題を抱えるダムの維持管理には膨大な予算が必要となります。最終的な解決策であるダム撤去は我が国では進んでいません。
国土交通省より開示されたエクセルデータを基に、堆砂が進んでいるダム等を色分けした表を以下に掲載します。オレンジ色は堆砂量が堆砂容量に達しているダム、黄色は堆砂量が堆砂容量の8割以上となっているダム、灰色は堆砂容量が設定されていないダムです。
(堆砂状況を示す表の拡大表示、ダウンロードは以下の画像をクリックしてください。)
●表=治水等多目的ダムの堆砂状況
利根川水系の川治ダム、下久保ダム、渇水時にしばしば取り上げられる四国の早明浦ダム、 球磨川水害で問題となった市房ダムを青色にしています。
●表=利水ダムの堆砂状況
利水ダムは治水ダム以上に古くから建設されてきており、堆砂が進行しているダムが数多くあります。中には堆砂容量が設定されていないダム(灰色表示)もあります。火山性のもろい地質を上流に抱えるダムは、より多くの土砂を貯め込みます。全国的には知られていない小さな発電ダムが洪水時に水害を増大させる場合もあります。戦後のダム建設で脚光を浴びた佐久間ダム(1956年)、御母衣ダム(1961年)、黒部ダム(1963年)などの水力発電ダムも堆砂容量を超えています。首都圏では相模ダムの堆砂が顕著です。堆砂が社会問題となっている富士川の雨畑ダムを含め青色で表示しました。