長崎県の事業である石木ダムは、半世紀以上前に計画されながら、本体工事を着工できない状況が続いてきました。
今年3月に長崎県知事に就任した平田研氏は、問題を解決するために、改めて有識者に意見を聞くとともに、関係住民への意見聴取を進めています。
石木ダム事業が膠着状態にあるのは、ダムに反対する住民13世帯約50人が事業用地から立ち退かないためです。平田知事はすでに当選直後の3月10日に反対住民らと面談していますが、今月18日には、ダム予定地の上流に位置する木場地区の住民から意見聴取を行ったとのことです。
木場地区はダム事業用地とは直接は関わりがないのですが、ダム予定地のある「こうばる地区」に隣接する農村地帯です。概してダム事業では、ダム計画に反対する予定地住民を地域から孤立させるために、ダム事業者が隣接する地域にも飴と鞭で様々な働きかけを行います。石木ダム事業も例外ではなく、木場地区には道路計画や地域振興策などが提示されてきました。木場地区には、ダムに反対する「こうばる地区」住民を支援する住民もおり、「木場地区」の棚田米はダム反対運動の支援活動に活用されています。
長崎県では、有識者への意見聴取のビデオを公式ホームページで公開していますが、18日の木場地区住民への意見聴取については議事録を公開しています。ダム行政における人間関係の破壊が地域に影を落としていること、道路や地域振興策などのダム関連事業が住民を翻弄してきたこと、長崎県が一旦立ち止まって住民に発言を求めたことで、住民個々人がダム問題に向き合い、自らの言葉で考えをまとめようとしている様子が率直な発言から伝わってきます。➡「第3回 石木ダムに係る有識者の意見を聞く場(木場地区)議事録」
関連記事を転載します。
◆2026年8月22日 長崎新聞
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=98685b4947a34f919fa5c4e942b0571c
ー石木ダム「意見を聞く場」 住民の思いさまざま 長崎県川棚町ー
7月から始まった石木ダム建設事業の在り方を巡る平田研知事の「意見を聞く場」は、長崎県東彼川棚町の地元関係住民への聞き取りに入った。ダム建設予定地上流に位置する木場地区住民は地区の分裂が再び起きないようくぎを刺し、建設予定地から移転した住民は早期完成を強く望んだ。主な意見をまとめた。(村瀬晴香、岩佐誠太)
◎木場住民 分裂「絶対いけない」
木場地区には40世帯が暮らす。18日に非公開であった「意見を聞く場」には22人が出席した。出席者や県が21日に公表した議事録によると、住民は、水没予定地の川原地区住民同様、ダム問題に翻弄(ほんろう)されてきた地区の歴史を踏まえ「地域住民の分裂は二度とあってはならない」「将来に禍根を残さないためにも慎重な判断をお願いしたい」と訴えた。
木場地区の住民は1982年の県の強制測量の際、測量容認派と反対派に分かれ対立。それまで互いに協力してきた葬式や結婚式、法事などで「呼ばない」「行かない」との状況をもたらし、相互扶助の慣習が途絶えた歴史を持つ。2000年代初頭に関係は修復した。
「聞く場」では、住民が隣接する川原地区の住民と交流があることに触れ「(木場の住民はダムについて)言わない方が差し障りがないと考えていると思う」と打ち明けた。別の住民はダム建設が「生涯をかけてダム問題と闘っている人の犠牲の上でできること」とし、「本当に必要なら誠意を持って(ダムの必要性を)伝えないと今の膠着(こうちゃく)状態がずっと続く」と指摘した。
また、佐世保市の水需要予測の妥当性に疑問を抱き「ダムは見直すべきだ」という声や、これまでの強制測量などを踏まえ「強制してまでする必要はないんじゃないか」との意見もあった。ダム整備の有無にかかわらず、生活道路になる付け替え県道の整備工事を確実に進めることも要望された。
平田知事が事業に対する県の姿勢を尋ねる場面もあり、住民は「(過去にあった)上から目線のような姿勢が亀裂を大きくし、尾を引いている」と語った。
現職知事と住民の正式な面会はこの20年なかった。会合終了後、住民の一人は「話し合いをして、知事の回答が聞きたい」と、意見を伝えるだけの場に物足りなさを覚えたという。別の住民は「今でこそ(地区は)まとまっているが、心の底ではお互い思うところがある」と心情を吐き出した。