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会計検査院調査、ダムの堆砂による防災機能低下

 会計検査院の調査によって、ダムへの土砂流入によって、ダムの目的である治水機能が発揮されていないという問題が明らかになりました。関連記事を転載します。

◆2014年10月16日 朝日新聞
 http://digital.asahi.com/articles/DA3S11403777.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11403777
ーダム100カ所、防災機能低下 土砂流入、洪水リスク高まる 検査院調べー

  国土交通省が所管するダムのうち約210カ所を会計検査院が調べたところ、5割にあたる100カ所余りで土砂がダムにたまり、洪水を防ぐ機能が弱まっていることがわかった。上流部が浸水する危険性が高まるため、検査院は土砂がたまらないよう国交省に対策を求める方針だ。

 国交省によると、平時のダムは閉じた水門付近で水位を保ち、それより低い層で飲料水や工業用水を供給している。豪雨などで川が増水すると、水門より高い層に水をためていき、一定の貯水量に達すると水門を開いて下流に放水し、洪水を防いでいる。土砂が水門の高さを超えると洪水を防ぐ機能が弱まり、上流の川底にも土砂がたまって流域の浸水リスクも高まる。

 国交省直轄のダムと、国の補助を受けて都道府県が建設したダムは全国に計約550カ所ある。このうち約2兆4千億円の国費を投じた計約210カ所を検査院は抽出。国交省が把握している各ダムの土砂の測量結果などをもとに、洪水を防ぐ機能などを調べた。

 その結果、100カ所余りで土砂が部分的に水門の高さを超え、洪水を防ぐ機能が弱まっていた。

 国や都道府県は、稼働後100年でたまる土砂の量を予想してダムを設計・建設している。また、最も古いダムでも稼働から約60年だ。ところが、検査院が土砂の量を調べると、約20カ所ですでに100年後の予想量を上回り、3倍以上のダムもあった。

 国交省河川環境課は「調査の詳細がわからないのでコメントできない」とした上で、ダムの土砂については「著しくたまれば上流域の浸水被害の原因になり得る。ただちに支障が生じるとは認識していないが、土砂の除去には費用と時間もかかり、対策が進んでいないダムもある」と認めた。(水沢健一)

 ■財政圧迫、進まぬ除去
 長野市西部の奥裾花(おくすそばな)ダム。管理する長野県河川課によると、稼働から100年でたまると予想した1・3倍の土砂が昨年末、わずか33年でたまった。

 抜本対策には計100億円近くかかる可能性があり、この10年近くは土砂を取らず、調査だけしてきたという。担当者は「早く対策をとらなければいけないが、費用を考えると慎重に決めざるをえない」と話している。

 1956年にできた宮崎県日向市の渡川(どがわ)ダムでは、予想量の4・4倍の土砂が今年3月までにたまった。年約4千万円をかけて土砂を取り除くが、減る気配はない。県河川課は「大きな予算は見込めない。当分の間、豪雨の前に放水して水位を下げ、貯水容量を確保するしかない」とする。

 今回の調査対象外だが、ダムにたまった土砂の影響で被害が出た例もある。2011年7月の福島県の豪雨では只見川が増水し、同県金山町などで住宅が全半壊した。下流の水力発電ダムには予想量を超える土砂がたまっており、管理するJパワー(電源開発)は「土砂が原因で浸水した」として、一部住民に補償金を払った。

 国や都道府県は予想量をもとに「ダムの寿命は100年」とし、建設の根拠としてきた。だが、市民団体「水源開発問題全国連絡会(水源連)」の情報公開請求で7月に国交省が開示した文書には、予想量を超えたダムが複数並んでいた。

 水源連の嶋津暉之共同代表は「国はダムを建設したいので予想量を甘く見積もるが、100年も持つはずがない。大量にたまれば除去費用がかかり、新たな国民の負担になる」と指摘している。(贄川俊、小林誠一)

 ■ダム治水の限界
 今本博健(ひろたけ)・京都大名誉教授(河川工学)の話 ダムは土砂が底から順にたまることを想定して設計されているが、実際は上流側の洪水を防ぐ層に偏ってたまっていく。このため稼働から数年でも洪水を防ぐ機能が急激に落ちることがある。水を十分にためられなくなると放水の頻度が一気に増え、下流で氾濫(はんらん)が起きるおそれもある。人命にかかわる問題だが土砂の除去には巨費がかかり土砂を運ぶ場所も見つかりにくい。ダムによる治水の限界と言える。堤防強化に予算を振り向けるなど別の手法を考えていくべきだ。

◆2014年10月16日 読売新聞
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141016-00050024-yom-soci

ー土砂流入で治水機能低下のダム、全国100か所ー

 洪水を防ぐ治水機能を持つ全国約100か所のダムで、流入した土砂が堆積し、大雨に備えて空けておくべき容量が減少していることが、会計検査院の調べでわかった。

 局地的な豪雨や台風による大雨が相次ぐ中、河川の氾濫につながる恐れもあり、検査院は国土交通省に対し、土砂の除去などの対策を求める。

 土砂の堆積で治水機能が損なわれているのは、群馬県の藤原ダムや和歌山県の二川ダムなど。検査院は近く、該当するダムを全て公表する。

 国と道府県は、洪水を防ぐため、大雨の際に、河川から流れ込む大量の雨水をためられるダムを全国約500か所に建設。河川からは水とともに土砂が流れ込むため、ほとんどのダムは設計段階で土砂の堆積量を100年分予測した上で、農業や工業に使う利水容量と、大雨に備えて空けておく容量を算出している。

 検査院がこのうち約200か所を抽出し、ダムの状況を記録した書類の分析や現地調査を行ったところ、半分の約100か所で、底面だけでなく河川が流れ込む斜面側にも土砂が堆積していることがわかった。設計段階では、土砂は底面からたまると予測していたため、斜面への堆積により、利水容量、洪水対策用の空き容量とも実際は想定より少なくなっていたという。

◆2014年10月17日 熊本日日新聞
 http://kumanichi.com/news/local/main/20141017002.xhtml
ー想定超過、最大5.7倍も 全国のダム土砂堆積ー

2012年度末で想定を上回る土砂の堆積が明らかになった電源開発の瀬戸石ダム。国の指摘を受け、冬場に土砂の除去に取り組む=2013年12月、芦北町の球磨川
 国土交通省が全国の中規模以上の973ダムで土砂のたまり具合を調べたところ、2割近い178ダムでダムの機能を保証する「想定堆砂量」を既に上回っていることが16日、分かった。県内は電源開発(Jパワー)が芦北町の球磨川に持つ瀬戸石ダムで、完成から54年で想定量の約1・4倍の104万立方メートルの土砂が堆積している。

 国交省は貯水容量1万トンを超える中規模以上のダムの堆砂状況を定期的に調べている。住民ネットワーク・水源開発問題全国連絡会(東京)が開示請求した2012年度末の調査資料を基に熊本日日新聞が分析した。

 ダムは建設時に一定期間(一般的に100年)で堆積する土砂量を想定堆砂容量として算出。その期間は洪水調節や利水の機能が保てるように造る。

 資料によると、いずれのダムも建設時の想定を上回るスピードで土砂が堆積、178ダムで想定容量を既に超えていた。2倍超となっているものも67ダムあり、多くが運用開始から60年未満だった。湯原ダム(岡山県)の5・7倍、北山ダム(佐賀県)の2・8倍など大幅に想定を超えているのもあった。

 九州で想定容量を超えているのは37ダム。宮崎県内が目立ち、耳川水系と大淀川水系でともに6。2倍超も15ダムあった。

 熊本県内で想定容量を超えているのは発電専用の瀬戸石ダムのほか、いずれも県が設置した球磨川水系のかんがい・治水用の清願寺ダム(あさぎり町)と緑川水系の発電用の船津ダム(美里町)。2倍超となっているダムはなかった。(上田良志)

—転載終わり—

「全国ダムの堆砂データ」と解説はこちらに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/?p=8339