台風25号による記録的な豪雨により、千葉県の印旛沼では越水による堤防決壊が三か所で発生し、広い地域が浸水被害に見まわれたままの状態です。その浸水面積は、地元紙、千葉日報の報道によれば約500ヘクタールとのことです。人口の多い地域でJR内房線、総武線、国道なども被害に見舞われ、復旧には時間がかかるとのことです。
印旛沼では水位が上昇すると、越流を防ぐために利根川に排水することになっていますが、利根川の水位が高く、排水が思うようにできないとのことです。
千葉県が他の利根川流域都県とともに八ッ場ダム事業に参画したのは、八ッ場ダムによる利根川下流の水位低下を期待してのことでした。しかし、山間部の八ッ場ダムによる利根川下流の水位低減効果は、実際には誤差の範囲と言われています。
今回のような豪雨の際、利根川水系上流の北関東では、八ッ場ダムをはじめ、多くのダムができる限り貯水して、利根川の水位低下を目指したのですが、上流ダムによる利根川下流の水位低減効果はわずかです。八ッ場ダムのある群馬県では、千葉県が豪雨に見舞われていた21日の夕方には雨が上がっていました。ダムの下流で降った雨はダムにはなすすべがありません。今回のような水害が発生した時、八ッ場ダムのことなどみな忘れ、その治水効果を期待する人もおそらくいないでしょう。
千葉県議、佐倉市議として八ッ場ダム事業への千葉県の参画に反対し続けた大野ひろみさん(さくら市民ネットワーク)のフェイスブックより
◆2026年9月23日 讀賣新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20260923-GYT1T00211/
ー台風一過に印旛沼の堤防決壊、利根川の水位上昇で排水進まず…北関東など上流域で降った雨が流入ー
台風25号は大雨のピークが過ぎた後も影響を拡大させた。千葉県北部の 印旛沼いんばぬま と周辺の堤防が計3か所決壊し、成田市や栄町で約5平方キロ・メートル(推定)にわたって大規模な浸水が発生した。千葉だけでなく、北関東など利根川の上流にも広範囲に雨が降ったのが一因とみられる。(千葉支局 竹田淳一郎、浜田喜将)
「水かさが上がり、気付いたら50センチ以上になっていた。約50年前に創業してから初めてのこと」
印旛沼から東に約1キロの成田市大竹で自動車整備会社を経営する男性(77)は、高台から水没した工場を見つめ、つぶやいた。
預かっていた車など20台以上が水につかり、事務所に入れない状態。21日夜に台風の大雨はピークを過ぎたが、22日午前7時頃から工場が浸水し始め、車を避難させる余裕もなかった。
印旛沼は干拓事業で北印旛沼と西印旛沼に分かれている。流域は成田市や栄町など13市町にわたり、流域面積は494平方キロ・メートルで千葉県の面積の約1割にあたる。今回の台風では、西印旛沼の水位が22日午前4時半時点で5・04メートルと、8月の千葉豪雨時の4・33メートルを上回った。
印旛沼の水位を管理する水資源機構や専門家らによると、北印旛沼の水は通常、北側の利根川へと排出されるが、今回は利根川の水位も上昇したため、排水が進まなかった。台風一過の22日朝になって沼の堤防(上部の厚さは5メートル)が約100メートルにわたって決壊したほか、沼の北側と南側の川の堤防が1か所ずつ崩れて水があふれた。
利根川に排出できない場合、西印旛沼を通じて東京湾側に排出することになっているが、今回は流域から大量の水が流れ込み、排水が追いつかなかったとみられる。西印旛沼方面に流れ込む高崎川でも氾濫が起き、佐倉市のJR佐倉駅北側も広範囲に水につかった。
中央大研究開発機構の古米弘明教授(都市雨水管理)は、先月の線状降水帯による千葉豪雨と異なり、台風に伴う広範囲の大雨が要因と指摘する。20日からの雨で印旛沼と利根川の水位が上がっていたところに、北関東など川の上流で降った雨が継続的に利根川に流れ込んだという。
対策として、貯水池やポンプの増設など排水能力を高めることに加え、「このレベルの大雨が降ると災害は必ず起きる。命を守る行動をいかに早くとるか、市民の防災意識をさらに高めることが重要だ」と話した。
県は、国土交通省の緊急災害対策派遣隊「TEC―FORCE(テックフォース)」の派遣を受け、堤防の復旧を進めているが、復旧時期は見通せていない。
◆2026年9月23日 共同通信(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD231HW0T20C26A9000000/?n_cid=SNSTW001&n_tw=1790164162
ー台風25号、千葉・印旛沼が最高水位観測し決壊 1968年の管理開始後初ー
台風25号の記録的大雨で、千葉県北部の印旛沼は水位が過去最高に達し、堤防2カ所が決壊した。独立行政法人水資源機構が23日までに発表した。1968年に管理を開始してから決壊は初めてという。
人的被害はないが、住宅や田んぼなどが浸水している。排水ポンプで水位を下げ、県や国などと連携して早期に復旧させる方針。
機構などによると、印旛沼は利根川水系の沼で、流域では総雨量300ミリ超を観測。22日午前4時半に佐倉市の水位計で基準点から5.04メートルと過去最高水位となった。決壊した幅は、いずれも約100メートルという。
機構は台風に備えて17日から水位を下げる「予備排水」を行い、水位が高まった20日夜から利根川と東京湾へポンプ排水をしていた。担当者は「計画の想定を超える雨量だった。8月から続いた雨で土中の水分量が多かったことも一因ではないか」と話す。
8月の千葉豪雨や2019年10月の大雨では、堤防などが耐えられる最高水位とされる4.25メートルを超えたものの、決壊しなかった。
復旧には県のほか、国土交通省が緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)を派遣して技術的な支援などを担う。〔共同〕
◆2026年9月24日 日テレNEWS
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6596333
ー【解説】印旛沼の堤防決壊 自治体は“決壊”情報どう把握? 「いつ決壊したのか」現在のところ不明ー
印旛沼の堤防が決壊したのは「初めて」ということですが、では、この決壊について県や市はどのように把握していたのでしょうか。小栗泉・日本テレビ特別解説委員が解説します。
■“用水路の堤防が崩れている”など消防から通報も
改めて、印旛沼の決壊した部分は千葉県の成田市に位置しています。23日に関係各所に取材しましたが「印旛沼がいつ、決壊したのか」は現在のところ不明、わかっていないということです。
ただ、台風25号が千葉県に最も接近していた21日夜の段階で、印旛沼を管理する千葉県の河川環境課が水位の上昇を把握していて、「印旛沼の水位が計画高水位に到達した」つまり“氾濫のおそれが高まっている”という情報を午後8時40分に成田市などに対しメールで共有したといいます。
その後、22日の午前1時台に消防から成田市に対して、「印旛沼から続く用水路の堤防が30メートルほど崩れている」などと通報があり、市でも決壊を把握したということです。
◇
――その時点での周辺住民への呼びかけは行われたのでしょうか?
はい。成田市でも決壊の前から印旛沼の水位の監視はしていて、水位の上昇を受けて、周辺の住民などに防災無線などで周知はしたということでした。
ただ、越水や決壊については「想定していなかった」ということで、避難指示は21日の夕方に出された「警戒レベル4避難指示」は土砂災害を理由としたもので、浸水を想定した避難指示は出さなかったということです。また、決壊を把握したあとも浸水を想定した避難指示や緊急安全確保は出されておらず、その理由は「現在調査中」だとしています。
■当時「決壊の情報」得ることはできた?
では、周辺にいた人は決壊の情報を得ることはできたのか。23日、「news zero」は当時の状況について話を聞きました。
近隣で働く人「(自治体などから)情報は入っていなくて、自分の予想ではこの量降ったらやばいかなと思っていたが、決壊するとまでは思っていなかった」
――危なそうだという情報を、住民のみなさんが自分で調べれば得ることはできたのでしょうか?
「news zero」も豪雨の際によく利用する気象庁のサイト、川の氾濫についての危険度がどの程度高まっているかを示す「洪水キキクル」を見てみますと、印旛沼に流れ込む河川は色分けで表示されていますが、印旛沼そのものの危険度は表示されないんです。
また、浸水についての危険度がどの程度高まっているかを示す浸水キキクルも、雨の量などから浸水の危険度を計算して示しているため、沼の実際の水位まで考慮しているわけではありません。
このように、キキクルだけで「印旛沼の水が上昇し堤防が決壊する危険性が高まっている」と直接判断することは難しいんです。
――今回のような状況では危険度を見るのが難しかったということですね。
そうなんです。今回の印旛沼だけでなく、ため池や湖、遊水池、ダムなどの実際の水位や危険度はキキクルではわからないんです。
こうした地域にお住まいのみなさんは、国土交通省の「川の防災情報」で水位を把握できるケースがあります。印旛沼も「川の防災情報」で水位を確認できる場所があります。自治体が出す避難情報には従い、また、たとえ避難情報が出ていなくても、危険を感じたら自分の命は自分で守る行動が大切になります。
印旛沼を管理する水資源機構によりますと、排水は進めているものの、通常時の水位に戻るまでには、まだ数日かかる見込みだということです。