「水門談合」(毎日新聞・読売新聞)

■2007年3月8日 毎日新聞より転載
「水門談合:国交省に官製防止法適用 公取委が改善要求」

水門設備工事を巡る官製談合事件で、国交省に対して行った改善措置要求について会見する杉浦総一郎・公正取引委員会第3審査長=東京都千代田区霞が関で8日午後2時9分、野田武撮影 水門設備工事を巡る官製談合事件で、国土交通省建設施工企画課の近藤治久・元課長補佐(58)ら2人が現職時代、受注予定社を指定するなど官製談合を繰り返したとして、公正取引委員会は8日、中央省庁としては初めて同省に官製談合防止法を適用した。改善措置要求書を受領した同省は、内部調査を実施・公表したうえで、関与した職員への賠償請求を義務づけられる。公取委は同時に要請文も手渡し、二つの文書の中で関与を指摘されたのは、OBを含め7人に達した。

 冬柴鉄三国交相は同日の省議で「省始まって以来の大ピンチ」との見解を示し、給与3カ月の自主返納を表明。同省は談合がしにくいとされる一般競争入札を拡大するなど改善策を実施する。

 現職時代の関与が認定されたのは近藤元課長補佐と元近畿地方整備局機械施工管理官(死去)。さらに▽旧建設省の豊田高司・元技監(70)▽山口甚郎・元国土地理院長(71)のほか▽旧東北地方建設局の元機械課長(64)▽同省所管の独立行政法人「水資源機構」(旧水資源開発公団)の元常務参与(71)と元理事(64)--が退職後に関与したとされた。

 調べでは、近藤元課長補佐は01年5月7日以降、近畿地整を除く全国7地整発注の河川用設備とダム用設備の一部について、落札予定社を指定。元管理官は01年4月1日以降、近畿地整発注分について同様に指定した。豊田元技監と山口元地理院長は、ダム用設備の工事で「世話役」と呼ばれる業界の調整役から落札予定社の腹案を示され、承認を与えて正式決定していたとされる。

 要請文は、傘下の公益法人に天下りしたOBが談合に関与しているとして、5団体の実名を記して再発防止などの指導を求める内容。同機構にもOBの談合関与防止を求める要請文を渡した。

 業界側に対しては、石川島播磨重工業、日立造船など23社が同省、同機構、農林水産省発注分で談合したとして、自主申告で課徴金が免除された三菱重工業などを除く14社に16億7133万円の課徴金の納付を、15社に排除措置を命じた。【国交省官製談合取材班】

 ◇官製談合防止法 03年1月施行。北海道岩見沢市、新潟市、旧日本道路公団に適用され、今回が4例目。適用された発注機関は調査を実施し、その結果と改善措置の内容を公取委に通知し、公表する。関与した公務員に故意や重大な過失があった場合、賠償請求も義務づけられる。罰則(5年以下の懲役または250万円以下の罰金)を新設した改正法は14日、施行される。

 ◇公取委が指導を要請した国交省所管の公益法人は以下の通り(カッコ内は公益法人在職時に談合に関与したOB)。

 ▽日本建設機械化協会(近藤元課長補佐)▽河川ポンプ施設技術協会(元機械課長)▽経済調査会(山口元地理院長)▽日本建設情報総合センター(近藤元技監)▽水資源協会(旧水資源公団元常務参与)

■2007年3月9日 読売新聞より転載
「水門官製談合、OB反発で国交省の自主調査に限界?」

 水門設備工事をめぐる談合で、国土交通省が官製談合防止法に基づき公正取引委員会から改善措置要求を受けたが、今後は、同省が内部調査によって、談合への関与を認定された元職員の賠償責任を明らかにすることができるかどうかに焦点は移る。

 同省は過去に同工事にかかわったOBらを中心に聞き取りを開始しているが、OBの一部からは反発が出ているほか、省内からも「自主的な調査には限界がある」との声が漏れ、真相解明への道は遠そうだ。

 「我々はやれることをやった。あとは、国交省がどこまで内部浄化ができるかだ。国交省の姿勢が問われている」。8日、同省への改善措置要求を済ませた公取委の幹部は、今後の同省の姿勢に注目していることを明らかにした。

 官製談合防止法は昨年12月、関与職員への罰則が新設され、懲役5年以下または罰金250万円以下に処せられることになったが、今回の談合に適用されたのは、あくまでも改正前の法律。ただ、改正前でも、談合への職員の関与について改善要求を受けた役所は、内部調査で職員の賠償責任の有無を明らかにし、国の損害を認めた場合は賠償請求する義務を負う。

 同省は今年1月、公取委の措置要求を待たずに、弁護士や元検事ら第三者を交えた「入札談合防止対策検討委員会」を設置。過去10年間に水門設備工事にかかわったOBも含め、約600人を対象に調査を開始。既に400人程度の聞き取りを終えたが、省内からは「公取委の調書も何もなくて『談合やってましたか』とOBさんに聞いても答えるわけがない」とため息も漏れる。

 一部OBからは内部調査に対する不満も。旧建設省の元課長は「工事の質を保つため、業者の利益を確保させる配慮をしていた。企業は“自首”でおとがめなし、こちらは損害賠償請求というのでは、協力する気になれない」と話した。

 今後、同省は公取委に元職員の調書の提供を求めるほか、水門メーカーからも聞き取り調査する方針だが、あるメーカー幹部は「個人名を出すことには躊躇(ちゅうちょ)がある。調査にどこまで協力できるか自信ない」という。

 冬柴国交相は9日の閣議後記者会見で、「公正取引委員会の指摘は非常に漠然としていて具体的行為が全くわからない。国に損害が生じたかどうか検討もしなければならない。まず調査しないと」と明言を避けた。会見では「業者には厳しく、身内に甘いのでは」という質問も出たが、冬柴国交相は「私はそう思わない。他の省庁に比べてもここまで厳しくやっているところはない」と否定した。