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「利根川整備計画は住民参加で」(東京新聞)

2007年5月12日 東京新聞より転載

 日本最大の流域面積をもつ利根川水系河川整備計画の原案が来月、国土交通省から提示される予定だ。これまで多くのダムや河口堰などの大規模開発事業が進められてきたが、河川整備計画は、今後三十年間に行う河川改修やダムなどの施設整備の内容を定める極めて重要なものである。
 利根川をめぐる状況は大きく変わってきた。かつては首都圏の水がめとしてダム建設が必要とされたが、最近は水道用水の需要が減り続ける。洪水対策は、ダムよりも効果が確実な河川改修に
力を注ぐべきであることが知られるようになった。利水治水の両面面で必要性が希薄になる大規模開発は中止して、失われた自然
を少しでも取り戻す方向に、河川行政のかじを切りかえる時代の変換点にさしかかっている。
 このような観点で整備計画が策定されるためには、利根川に関心をもつ流域住民と国交省などとの間で十分な議論がされなければならない。ではその整備計画の策定はどのように進められているのか。
 策定作業は昨年十一月から始まり、二、三月に第一回の公聴会が開かれたが、住民は意見を述べるだけで、議論には一切参加できない。有識者会議という委員会からも住民は排除されている。
 この点で模範となるのは、今年一月で休止された大阪、滋賀など二府四県にまたがる淀川水系流域委員会である。公募により、住民を委員の一部に加え、すべて公開で時間をかけて議論され、傍聴席からも意見を述べることもできた。民主的な委員会であったからこそ、新規ダムの原則中止という画期的な提言も出された。
 これと比べて、利根川の方はあまりにも非民主的である。公聴会の意見を反映させるか否かも国交省がきめてしまう現行方式を変えて公開の場で十分な議論をつくすようにしなければ、先に述べた新しい観点での整備計画づくりに進むはずがない。住民と国交省などが十分に議論できるよう、策定の進め方を根本から改善することを強く望みたい。
             水源開発問題全国連絡会共同代表 嶋津暉之 63(埼玉県三郷市)