「利根川の未来を考える『蛇口』」(東京新聞)

2007年5月13日 東京新聞より転載

【私説・論説室から】
利根川の未来を考える『蛇口』

 四国三郎と呼ばれる徳島の吉野川。九年前、河口約十四キロにある江戸造築の第十堰(ぜき)を壊し、可動堰を新設する計画に反対運動が燃え上がった。

 徳島市で取材し、昼に食堂に入ると、出されたコップの水は口当たりが良い。二杯目もすぐに飲み干してから「何の銘柄の水?」と尋ね、反対運動の代表の言葉に驚いた。「普通の水道水ですよ。第十堰の上で取水しています」

 第十堰は青石造りから自然漏水して、水はよどまない。河口堰で川が止水して水質が悪く、カルキ臭かった鳴門市の水道水とは大違いだった。

 その後、可動堰の是非をめぐる住民投票で市民はノーを突き付けた。その思いは「蛇口から見えますか?」の問いかけに、巨費を投じて遺産を壊し「水もまずくなる」という暮らしへの危機感だった。

 対する坂東太郎は、関東の利根川だ。国土交通省は今、利根川水系河川整備の方向性を決める策定作業を進めている。治水・利水の開発事業を検証し、自然生態系の復元を考える絶好の機会であるが、首都圏住民の関心は低い。

 ダム群の水に最も依存しているのは都民であり、水余りのなか建設中の多目的の八ッ場ダム(群馬県)には今後、六百億円近く支払うという。

 先の公聴会では、住民から大規模事業の中止も含めた傾聴に値する意見や提案があった。その内容は「利根川流域市民委員会」のブログ(http://tonegawashimin.cocolog-nifty.com/blog/)で見ることができ、シンポジウムが二十日、東京都文京区の全水道会館で開かれる。利根川を知る「蛇口」になるはずだ。シンポ=電042・341・7524(深澤さん)。 (野呂法夫)