八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

「八ッ場ダム東京訴訟」

■2008年11月26日 朝日新聞群馬版より転載
「八ッ場ダム東京訴訟 判決、年度内にも 前橋・水戸、年明け結審」

吾妻川上流に計画されている八ツ場ダム(長野原町)の建設に反対する市民団体などが、1都5県のそれぞれの知事らを相手取って6地裁で起こした住民訴訟のうち、東京地裁の訴訟が25日、結審した。前橋、水戸の両地裁の訴訟も来年1月に結審する予定で、これら3地裁の判決は今年度中に出される見通し。原告側は「6地裁のうち一部でも勝訴すれば、ダム建設は止められる」と主張する。(大井穣、菅野雄介)
 6地裁の先陣を切って行われたこの日の最終弁論には、訴訟を提起した都民と訴えられた都双方の関係者など約90人が傍聴に訪れた。「水は余っており、新たなダムは不要だ」などとして、都に対して建設負担金の支出差し止めを求めてきた原告側が熱弁をふるった一方で、被告側は聞き役に徹していた。
 原告側は「都は最新の水需要予測(03年12月)をはじき出す中で13年度の1日当たりの最大配水量が600万トンになるとしたが、実際は99年度以降は1日550万トンを超えた日はなく、07年度以降は1日500万トンに達した日もない」と図表を交えて説明。さらに、これまでの裁判で被告側は、10年に1回の渇水年を想定すると八ツ場ダムからの利水は不可欠と主張してきたが、「地下水も含めて都がすでに保有している水源は配水量に換算して1日当たり約701万トンにのぼり、渇水などを考慮しても有り余る水源を保有している」と、あらためて反論した。
 足かけ4年にわたった審理を終えて会見した高橋利明弁護団長は「これまでの裁判で、八ツ場ダムがムダな事業だと十分主張できた。(被告側は)当初、渇水の発生割合を5年に1回としていたが、途中で10年に1回に変更したのは『水余り』を意識している証拠だろう」と指摘。同席した只野靖弁護士も「水需要がこれから増えるならば事業の必要性は理解できるが、水需要は減っている。都が水をさらに欲しがる理由がどこにあるのか分からない。駄々っ子じゃあるまいし」と述べた。
 川辺川ダム(熊本県)や大戸川ダム(滋賀県)について関係府県の知事が事業中止を求めている現状を「追い風」に、八ツ場ダムをめぐる一連の訴訟で事業中止につながる判決が出るのかどうか――。住民訴訟が続々と終結する見通しの年明け以降、ダム建設の是非を問う異例の広域訴訟は大きな山場を迎えることになる。

■2008年11月26日 毎日新聞群馬版より転載
「八ッ場ダム負担金差し止め訴訟 初の司法判断へ 東京地裁結審 来年3月にも判決」

国が長野原町に計画を進める八ッ場ダムの建設負担金を東京都が支出するのは違法として、市民団体「八ッ場ダムをストップさせる東京の会」(深沢洋子代表)が支出差し止めなどを都に求めた訴訟は25日、東京地裁(定塚誠裁判長)で結審した。判決は来年3月にも言い渡される見通し。八ッ場に対する司法の判断が注目される。
 原告側代理人の只野靖弁護士は同日、記者会見し「この訴訟が行政、特に国政に与える影響は大きい」と指摘。民主党が計画の見直しを次期総選挙のマニフェストに盛り込む動きを見せるなど八ッ場を巡る議論が活発化している点を挙げ、「勝てばダム議論は加速するが負ければ水を差される可能性もある」と訴訟の重要性を強調する。
 同様の訴訟は群馬のほか埼玉、千葉、栃木、茨城の5県でも展開され、東京が最も早い結審となった。判決では八ッ場ダムについて、初めて司法の判断が下されることになる。東京地裁の判決に拘束力はないが、最初の判例が他の訴訟に与える影響は小さくない。
 仮に差し止めが命じられた場合、国が見込んでいる費用に穴が開くことなり、計画は見直しを余儀なくされる。公共事業の公金支出差し止めを巡っては今月、那覇地裁が沖縄市の泡瀬(あわせ)干潟埋め立て事業を「経済的合理性を欠く」として沖縄県と市に支出差し止めを命じたばかりだ。
 逆に、原告側の訴えが退けられた場合、判決の内容によっては、行政にとってダム建設推進の正当性を訴える材料となりそうだ。
 訴状などによると、原告は都の水源が既に確保されているとし、「ダムは治水・利水の両面で必要性が失われている」と主張。今後の支出差し止めと、提訴(04年11月)までの1年間の支出約32億9000万円の返還などを求めた。これに対し、都側は「住民訴訟の定型に合致せず、訴えは不適法」などとして却下を求めている。
 前橋地裁では来年1月23日に結審、今年度内に判決が言い渡される見通し。【伊澤拓也】

■2008年11月26日 東京新聞より転載
「八ッ場ダム 都に不要 支出差し止め 東京訴訟が結審」

 「首都圏の水がめ」として、国が来年度着工を目指す八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)。4年前、首都圏の1都5県の地裁に一斉に起こされた公金支出差し止めなどを求める住民訴訟のうちで初めて、東京地裁の訴訟(東京訴訟)が25日、結審した。(関口克己)

 市民団体「八ッ場ダムをストップさせる東京の会」が都を相手取った東京訴訟。原告側は、この日の最終弁論で、利水(水道水)と治水(洪水対策)、環境への影響などの争点をあらためて指摘した。
 利水に関して、都は一日最大排水量は六百万立方㍍(二〇一三年度)と予測しているが、原告側は一九七五年以降の毎年夏場の水需要のグラフを示して、九九年度以降は五百五十万立方㍍を超えた日がないと指摘。実際は水源に用いられながら、都が「水源」に含めていない多摩地域などの地下水を合わせると都は七百一万立方㍍の水源を持ち、「これ以上の水源確保は必要はない」と訴えた。百万立方㍍は四百万人分の生活用水に匹敵するという。
 原告側は治水や環境面などからもダムは不要と主張。ダム関連事業落札業者への国土交通省職員の天下り実績を挙げ、国交省がダム事業を中止しないのは住民のためでなく、国交省自身の利益のためだと指摘した。
 判決は来年三月までに出る見込み。公表額で四千六百億円に上る事業費のうち、一都五県で最大の六百億円以上を負担する東京都を相手にした訴訟の判決は、他五県での訴訟にも影響を与えそうだ。
 結審後、記者会見した原告弁護団長・高橋利明弁護士は「裁判所は、利水でも治水面でも八ッ場ダムは不要との確信に至ったと思う」と強調。原告の一人、深沢洋子さんも「熊本県の川辺川ダムや滋賀県の大戸川ダムをめぐって、地元知事が中止方針を打ち出している。都はダム計画を認めているが、判決でインパクトを与えたい」と期待を込めた。