「利根川流量、別の試算 八ッ場ダム根拠」(朝日新聞群馬版)

2009年1月23日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000000901230006

 200年に1度の大雨が利根川上流域に降った場合の中流部の流量について、国土交通省が、これまで示してきた毎秒2万2千トンとは別に、1万6750トンという試算を出していることがわかった。2万2千トンは利根川の治水計画の前提となっており、国交省が新年度に本体着工を予定している長野原町の八ツ場(や・ん・ば)ダム建設の根拠でもある。八ツ場ダム反対派は「1万6750トンなら、既存の堤防で十分洪水は防げる。新たなダムは不要」と主張している。(大井穣)

◆住民訴訟きょう結審―前橋地裁

 利根川の治水計画は、関東地方の6都県で死者1100人の被害を出した1947年のカスリーン台風をモデルに、上流域に3日間で318ミリの大雨が降るケースを200年に1度とし、その被害抑止を図る目的で国交省がつくっている。

 利根川中流部の伊勢崎市八斗島町の観測地点で、この大雨が降った場合に想定される流量を「基本高水流量」とし、これを毎秒2万2千トンとしている。

 一方で同省は06年、水防法に基づく利根川水系の浸水想定区域図を作製した際、200年に1度の雨が降った場合の八斗島地点の「洪水ピーク流量」を1万6750トンと想定していた。矢木沢、下久保など既存の6ダムの調整能力を加味するなどしてシミュレーションしたという。

 国交省関東地方整備局は「1万6750トンはあくまでカスリーン台風と全く同じ降り方をした場合に想定される流量で、違うパターンで利根川上流域に大雨が降った場合には異なる数字になりうる」とし、下方修正ではなく全くの別物であると強調している。

 いずれの試算も基本モデルはカスリーン台風だが、肝心の八斗島地点では実際の流量データがなく、当時の専門家は上流の観測地点のデータなどから1万5千トン程度と推測した。その後、関係自治体の意見を加味するなどして、基本高水流量は49年に1万7千トン、80年に2万2千トンと修正されてきた経緯がある。

 沼田市の市街地を水没させる総貯水容量8億トンの沼田ダム計画が持ち上がっていた70年前後には、2万6900トンとする試算も出されている。

 現在では、この基本高水流量をもとに、八ツ場ダムを含む上流域のダム群で5500トンを抑え、残り1万6500トンを堤防や河道の整備などで対応することとしており、後者については中・下流域の整備はおおむね進んでいる。

 ただ、国交省によると、上流域のダム群の調整能力は、既存の6ダムで1千トン程度で、八ツ場ダムが完成してもプラス600トンにとどまる。計5500トンに達するには、さらに3900トンの調整能力が必要になるが、関東地方整備局は「具体的計画はまだない」としている。

 二つの試算の相違は、八ツ場ダム建設の是非をめぐり関東地方の6地裁で争われている住民訴訟でも明かされている。前橋地裁では23日に結審を予定しており、司法の判断に影響するかが注目される。