前原国交大臣、八ッ場ダム中止を明言

2009年9月18日
 昨日(17日)、新政権発足後まもなく、就任したばかりの前原国交大臣が八ッ場ダム、川辺川ダム中止を表明しました。同時に前原大臣は、「八ッ場ダムと川辺川ダムは今後の河川行政、公共事業のあり方を見直していくうえでの入り口との認識を国民の皆さんにはもっていただきたい」と述べ、ダム計画の犠牲となってきた水没予定地住民への補償などの問題に早急に取り組むとの考えを明らかにしました。

◆2009年9月18日 朝日新聞一面トップ記事より転載

ー国交相「143ダム見直し」 川辺川中止も明言ー
http://www.asahi.com/politics/update/0918/TKY200909170504.html

 民主党が政権公約で建設中止を掲げた川辺川ダム(熊本県)について、前原誠司国土交通相は17日の就任会見で、八ツ場(やんば)ダム(群馬県)に続いて中止を明言した。ダムに依存した河川行政の全面見直しにも言及。「八ツ場ダムと川辺川ダムはその入り口」として、建設中または計画段階の全国143カ所のダム事業を見直す考えを示した。

 鳩山首相もこの日、二つのダムの建設中止について、「決めたことはやりぬく姿勢を貫くことは非常に大事だ。特に無駄遣いをなくすというのを、国民の皆さんは非常に期待している」と語った。

 前原国交相は会見の冒頭、「税金の配分を大きく変えていかなくてはいけない。少子長寿化、莫大(ばくだい)な財政赤字、人口減少の現在において、どこに優先的に税金を使うべきかで考えれば、公共事業の新規投資は減らさざるを得ない」と基本姿勢を語った。

 その上で、建設中か計画中のダムや放水路が140以上あるとし、「我々はこの事業仕分けをこれからやっていかなくてはならない」と事業見直しに言及。「八ツ場ダムと川辺川ダムは今後の河川行政、公共事業のあり方を見直していくうえでの入り口との認識を国民の皆さんにはもっていただきたい」と語った。

 八ツ場ダムについては、19日からの5連休中に群馬県長野原町の建設予定地を訪問し、地元住民と生活再建策やこれまでの経緯について話し合う考えを示した。計画浮上から57年がたち、総事業費が当初の倍の4600億円に上り、民主党は「時代に合わなくなった大型公共事業の典型」として中止を公約に掲げた。

 川辺川ダムは計画から43年たち、農業利水、水力発電、治水の三つの目的のうち、利水需要がなくなり、発電は事業者が撤退。総事業費が当初の350億円から2200億円に膨れ上がっている点を指摘。熊本県の蒲島郁夫知事も昨年9月に白紙撤回を表明しており、「事業の見直しは当たり前のことではないか」とした。

また、「計画を変更する以上、自治体や住民に対する補償措置を、法的な枠組み、財政的な裏付けを含めて行う」とも語った。

 民主党は総選挙前に示した政策集で、計画中または建設中のダムについて、「いったんすべて凍結し、一定期間を設けて、地域自治体住民とともにその必要性を再検討する」と記している。ただ、前原国交相は17日夜、現時点では全ダム事業の凍結は「考えていない」と語った。

 前原国交相は今後の河川行政について、97年に改正された河川法の「住民意見の反映」と「環境への配慮」の二つの理念を挙げ、「できるだけダムに頼らない河川整備を考えていきたい」と述べた。ただ、「ダムを全否定しているわけではない」「ダムの必要な河川整備もある」とも語った。(津阪直樹、歌野清一郎)

◆上毛新聞一面トップ記事より転載
ー八ッ場中止を表明 前原国交相 転換の「入り口」強調 大型連休中に現地入り意向 地元補償検討へー

 前原誠司国土交通相は17日の記者会見などで、民主党が衆院選で掲げたマニフェストの通り、同省が長野原町で進める八ツ場ダム建設事業の本体工事中止を表明した。「河川行政や公共事業のあり方を見直す入り口」と位置付け、損得にかかわらず中止する決意を強調した。19日からの大型連休中に本県入りし、関係住民や首長らの意見を聞く意向も示した。これを受け、大沢正明知事は国に関連都県との協議を要求する考えを表明。自民党県議は抗議活動の動きを本格化させた。

 前原国交相は17日未明の初登庁で記者団の質問に答え、同事業について「マニフェストに書いてあることであり中止する」と表明。同時にダム事業に翻弄されてきた地元の生活再建に触れ「やみくもに中止すると混乱が起きる。どういう補償措置を前提として取るかが必須の条件」と述べた。

 その後の記者会見では、中止した場合の支出が継続した場合に比べ多くなっても中止方針は変わらないか、との質問に「変わらない」と強調。「八ツ場ダム一つの得か損かという問題ではなく、今後の河川行政、公共事業のあり方を見直す入り口という認識を国民の皆さんに持ってほしい」と理由を説明した。

 また、「自治体や住民に対する補償措置を、法的な枠組み、財政的な裏付けを含めて行わなければならない。できれば連休中にうかがい、地元の皆さん方の苦労された経緯、思いを真摯しんしに聞きたい」との意向を示した。

 同省八ツ場ダム工事事務所の渋谷慎一所長は同日、長野原地区住民の会合で「今後の仕事の進め方を新しい大臣の判断、指示に従ってやって行かざるを得ない。今後について十分な説明が出来ず、大変申し訳ありません」と陳謝するとともに、「今やっている工事については、これまで通り継続する」とした。

抗議の動き 県内で加速 長野原町議会は意見書
 前原国交相の八ッ場ダム中止表明に、県内関係者の抗議の動きが活発化した。
 長野原町議会は17日の本会議で「国の政策として国と町、住民が約束したこと。今更中止など到底受け入れられない」と事業の継続を求める意見書を鳩山由紀夫首相らに提出する議案を可決。高山欣也町長も「議会の協力を得ながら住民と共に最善を尽くす」と中止撤回を求める考えを表明した。
 大沢知事は「地元住民や関係市町村、共同事業者である1都5県の意見を聞くことなく建設を中止したことは言語道断であり、極めて遺憾。1都4県と連携して抗議し、国と地方の協議の場を早急に設置するよう求める」と批判した。
 自民、公明両党の県議らでつくる「八ッ場ダム推進議連」は同日、今後の抗議活動などを18日に協議することを決めた。地元住民らでつくる「八ッ場ダム推進吾妻住民協議会」とも24日に話し合う。公明党は17日、事業の是非の検証チームを国会議員や地方議員でつくる方針を決めた。
 一方、事業見直しを訴えてきた「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」の関口茂樹代表世話人は「ダム本体の中止と地元の生活再建という要望通りの発言でありがたい」と歓迎した。

◆2009年上毛新聞社会面より転載
ー八ッ場ダム中止表明 前原国交相一問一答 地元要望に沿い解決をー
 前原誠司国土交通相は17日午後、東京・霞ヶ関の国交省で記者会見し、八ッ場ダム(長野原町)の本体工事建設の中止を表明した。要旨は次の通り。

 -中止に向けて、どういう手順を踏むか。
 1952年以来、住民には想像を絶する労苦をかけた。ダム建設予定地では当初は誰もが反対だった。地域から離れたり、隣人との人間関係が悪くなったり、さまざまな苦労を超えて建設容認に傾いていった歴史的経緯がある。ぜひ理解いただき、本体工事中止の方向でまとめたい。
 大事なことは(地元の)苦労した思いを持って要望をうかがい、それに沿った形で解決策を模索していくこと。補償措置、法的な枠組み、財政的な裏づけを含めて行いたい。(民主党が)野党の時、補償措置の法律案を作っている。
 連休中に(地元に)行き、経緯、思いを真摯にうかがう場を作ってもらえればありがたい。知事や首長とも懇談したい。いずれにしても本体工事は中止。丁寧に対応し、事後策を考えたい。

 -中止の場合、流域都県が事業費の返還を求めている。
 法整備の中に、検討項目として考える。

 -地元の話も聞かずに中止するのかと反発の声がある。
 (党として)何度も視察し、地元と話してマニフェストにした。話を聞かずにというのは事実認識が違う。党の考え方を決めてマニフェストを掲げ、選挙を戦い、政権を預かった。地域の労苦をしっかり認識した上でマニフェスト通りやるという立場だ。やみくもにやるわけではない。補償措置を検討する中で約束したことを全うさせてもらう。

 -中止した方が費用が高くなるという指摘がある。
 (中止は)変わらない。140以上のダム、導水路が建設中、建設計画にある。事業仕分けをしなければならない。八ッ場、川辺川ダムは入り口だ。一つの損得という問題で考えず、今後の河川行政、公共事業の在り方を見直していく入り口との認識を持っていただきたい。個別の事業だけで判断するものでない。
 改正河川法は二つの理念が持ち込まれた。住民との対話、環境への配慮。できるだけ、ダムに頼らない河川整備を考えていきたい。山を手入れし、保水能力を上げていくのも大事だ。
 ダムを造ると砂がたまる。しゅんせつ費用が発生し、河口に砂の供給が減ることで海岸の浸食が起きる。護岸整備をしなければならない。小さなところだけで、損得を考えるのでない。ダムを全否定するわけでないが、改正河川法の趣旨を生かしたい。