八ッ場ダム中止 前原国交相一問一答(朝日新聞)

2009年9月19日 朝日新聞群馬版より転載

 地元対話「真摯に聞く」

 八ッ場ダムについて、前原誠司国土交通相は17日の就任会見で、建設中止への理解を求めるとともに、地元との対話の必要性や「脱ダム」への思いを語った。一問一答は以下の通り。

 -八ッ場ダムは、どういう手順で中止を進めるのか。
 1952(昭和27)年に計画が始まって以来、57年の長きにわたって、住民、関係者の方々には我々の想像を絶するご苦労をおかけしてきた。
 八ッ場に限らず、こういったダムの建設予定地は、ほぼ例外なく当初は誰もが反対した。地域から離れたり、隣人との人間関係が悪くなったり、様々な苦労を越えて、建設容認へと傾いていったという歴史的な経緯がある。
 本体工事の中止はご理解いただきたいが、一方で我々が考えなくてはいけないことは、皆さん方がいかにご苦労されてきたのかという思いをしっかりもったうえで、お話を伺い、ご要望を伺い、それに沿った形で、解決策を模索していくことが大事だ。
 いままでの計画を変更する以上は当該自治体、住民に対する何らかの補償措置を、法的な枠組み、財政的な裏付けを含めて行っていかなければならない。我々民主党が野党の時にそういった補償措置の法律案を作っている。
 八ッ場についてはできれば連休中に、地元が受け入れ態勢を整えてもらえるなら、私自らお伺いして、皆さん方の思いを真摯にお聞きする場をつくっていただければありがたい。知事や首長さんとも懇談したい。
 
 -流域の都県は「中止するなら事業費の返還を求める」と言っているが。
 いままで推進すると言っていた事業をやめた時、どんな補償措置をとるかという法整備の中に、検討項目の一つとして考えたい。どんな中身にするかは今後詳しく検討したいが、丁寧な対応が必要だ。

 -自治体や住民からは話も聞かずに中止するのかとの反発もある。
 我々は野党の時に、何度も何度も八ッ場ダムについては視察して、地元の方々、あるいは当該自治体の方々とお話して、マニフェスト(政権公約)にした。しっかりと話を伺ったうえで、党の考え方を決めた。
 マニフェストを掲げて総選挙を戦い、政権を預かった我々としては、当該地域の方のご苦労を認識したうえで、マニフェスト通りやるという立場。やみくもに無条件で中止するのではなく、地元の皆さん方にお話を伺い、ご苦労されている現状もつぶさにみて、どのような補償措置が必要かも我々は検討していく。
 
 -建設中止した場合と、中止しない場合を比べて、後者の方がコストが安くても、中止の考えは変わらない?
 変わらない。いま全国で140以上のダム、あるいは放水路が建設中、あるいは建設計画にある。我々はこの事業仕分けをこれからやっていかなくてはならない。
 つまりは八ッ場ダム、川辺川ダム(熊本県)は、我々が全国のダム計画見直しの入り口として考えており、八ッ場ダム一つの得か損かで考える問題ではない。今後の河川行政、そしてまた公共事業のあり方を見直していくうえでの入り口であり、そういった認識を国民の皆さん方にはもっていただきたい。
 改正河川法には、住民との対話、環境への配慮といった理念が盛り込まれている。我々は、できるだけダムに頼らない河川整備を考えたい。山をしっかりと手入れし、保水力を上げていくことも大事だし、そのことによって、河川の水質を上げていく。様々な資源を回復させていく。
 ダムはいったん造ると、砂がたまる。たまった砂の浚渫費用が今後発生する。ダムに砂がたまることで、川から海岸線への砂の供給が減る。砂が減れば海岸の浸食が起き、護岸整備をやらなくてはならなくなる。
 ダムを全否定しているわけではない。ダムの必要な河川整備もあると思う。しかし改正河川法の趣旨をいかして、できるだけダムに頼らない河川整備をしていきたい。

 -川辺川ダムについて、中止時の代替策、地元の生活再建、中止の理由は。
 66年から計画が作られて、43年たった。当初の目的は農業利水、水力発電、治水という三つの多目的ダムで計画が進められた。そのときの総工費見積もりが350億円。本体工事には全く着手していないが、すでに2200億円以上のお金が使われている。
 43年たったいま、三つの目的はどうなっているか。農業利水については、農林水産省が地元住民から訴えられて、福岡高裁で負けた。結果的には撤退をすることになった。Jパワー(電源開発)の水力発電も撤退した。
 当初の三つの大きな目的のうちの二つがなくなった。そういう観点から、事業の見直しをするというのは当たり前と思うし、現在の蒲島熊本県知事もそういった思いを共有し、県議会で1年ぐらい前に中止を発表した。
 国土交通省と熊本県の間で、川辺川ダムに対する治水はどうあるべきかという懇談会で4回ほど議論が行われたと聞いている。
 これを踏まえてどういった代替案があり得るのかや、八ッ場ダムと同様に43年間ご苦労をおかけしたことに対する補償をどうしていくのかということをまとめ、議論を進めていきたい。