八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム中止手続き、補償法案先送り

 関係都県知事とダム予定地住民組織からの猛反発により、八ッ場ダム問題の解決は先送りされつつあります。

◆2009年12月5日 読売新聞群馬版より転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20091205-OYT8T00002.htm

 ー八ッ場結論は夏以後へー  
 閣議決定新基準で再検証へ
 政府は4日、八ッ場ダム(長野原町)問題について、「有識者会議が来年夏頃に予定している中間取りまとめ等を踏まえて検証を早急に行い、早期に結論を得る」とする答弁書を閣議決定した。ダム建設を中止するかどうかの最終結論は来年夏以降となり、問題の長期化は避けられなくなった格好で、地元や関係都県からは懸念の声が出ている。

 前原国土交通相がダム事業の再検証に向けて設置した「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」は、3日の初会合で、来年夏にもダムの必要性を評価するための新基準を示すスケジュールを確認した。答弁書は、八ッ場ダムについてもこの日程に沿って再検証を行う政府の方針を示したものだ。

 大沢知事は4日、取材に対し、「大いに議論されるのは結構だが、その後に個別のダム検証では、地元はとても耐えられない」と、八ッ場ダムについての再検証を先行させることを求める考えを示した。

 ダム建設に負担金を支出する6都県知事は、11月13日に「来年度政府予算案決定までに検証結果について6都県と地元住民の理解を得ること」とする申し入れ書を前原国交相に提出。今月2日にも再度、早急な再検証を求める申し入れを行っているが、国からはまだ回答がない。千葉県の森田健作知事は4日、「どんどん先延ばしにするのは大変なこと」と憤り、「鳩山首相は『地方の声を』と必ず言うが、実際には全然違った動きをする」と批判した。

 一方、地元では「再検証」に一定の理解を示しながらも、生活再建が滞らないことを求める声が強い。長野原町の高山欣也町長は「だれもが納得のいく基準を作るには時間をかけて精査した方がいい」と理解を示す一方、「生活再建や補償は最優先で進めてほしい。再検証の結果、中止が白紙になることを期待したい」と述べた。また、川原湯温泉旅館組合の豊田明美組合長は「検証と一緒になって生活再建が長引くのは困る。住民の意向に沿って代替地移転を進め、早く新生活をスタートさせてほしい」と話した。

◆2009年12月8日 読売新聞 九州発ニュース特集より転載
ー川辺川ダム再検証せず、建設可能性なくなるー
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news-spe/20080707-3239816/news/20091208-OYS1T00782.htm

 前原国土交通相は8日、閣議後記者会見で、既に建設中止を表明している川辺川ダム(熊本県)について、「再検証のプロセスに乗せることはない」と述べた。ダムの必要性を再検証する対象から外れることで、改めて川辺川ダムが建設される可能性がなくなることを示したものだ。

 一方、同様に建設中止を表明している八ッ場(やんば)ダム(群馬県)については、前原国交相は「再検証の対象にする」と述べた。

◆2009年12月11日 朝日新聞政治面より転載
ーダム中止補償法案、来年の国会提出見送り 国交相表明ー
http://www.asahi.com/politics/update/1211/TKY200912110267.html

 ダム計画を中止した後も水没予定地の住民への国の補償措置を明確にする新法について、前原誠司国土交通相は11日の記者会見で、来年の通常国会への法案提出を見送ることを表明した。前原国交相は9月に川辺川ダム(熊本県)を視察した際に来年の通常国会への提出を表明していたが、新たな治水の基準を検討して個別のダムを再検証する手続きを踏むため、再来年以降にずれ込む見通しだ。

 国交省は現在、ダムに頼らない新たな治水の基準を有識者会議で検討中で、来夏までに新基準を決めた後、個別のダム計画に基準をあてはめて、中止か継続かを再検証する。前原国交相は11日、八ツ場ダム(群馬県)は再検証の対象とするため、最も早く中止されるダムは蒲島郁夫熊本県知事が計画の撤回を表明している川辺川ダムになると指摘。「川辺川ダムを中止のモデルケースとして補償をつめていくことになる」と述べた。

◆2009年12月11日 共同通信ニュースより転載
ーダム予定地の自治体に焦り 中止後の補償法案提出見送りー
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009121101000876.html

 前原誠司国土交通相が11日、八ツ場(群馬県)、川辺川(熊本県)両ダムなど公共事業中止後の補償措置を定める法案の通常国会提出を見送る考えを示したことについて、水没予定地を抱える自治体は「一日も早く生活再建の実現を」(和田拓也・熊本県五木村長)と、地域の将来像が見えないことへの焦りや不安をあらわにした。

 前原氏が中止を表明した両ダムでは、地元自治体が生活再建を大前提としており、問題の長期化は必至。全国143ダム事業の見直しにも影響を与える可能性がある。

 和田村長は「国に求めることは既に何度も申し上げてきている」といら立ちを募らせる。ダム中止に反対する五木村は「生活再建なしに中止は受け入れられない」として、早期に法案を示すよう求めていた。

 八ツ場ダム建設予定地の長野原町の高山欣也町長は「われわれには関心がない話。(法案提出が)遅いと言うのは中止を認めることになる」と述べ、引き続きダムの完成を国に訴えていく考えを示した。

◆2009年12月11日 前原大臣会見要旨より一部転載
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin091211.html

(問)今日の某紙の報道の中のインタビューの話ですが、ダムの補償法案は来年の通常国会は難しいという見通しを示されたということですが、その辺りご説明して頂けますか。
(答)12月3日にダムに出来るだけ頼らない治水のあり方ということで、有識者会議を立ち上げさせて頂きました。
 基本的な考えに則って143のダムをどうしていくのか、治水のあり方を再検討することになります。
 143のうち2つのダムについては中止を明言をさせて頂いております。
 ただ、そのうちの1つの八ッ場ダムについては再検証のルールに乗せていくということですので、他のダムと同様に予断を持たずに再検証をしていきたいと、このように考えております。となりますと、最も早く補償の問題が出て来る可能性があるのは川辺川ダムです。川辺川ダムについては、現在熊本県も白紙撤回ということで、そしてダムにたよらない治水というものを川辺川、球磨川の流域自治体の方々で構成される懇談会の場で今議論をして頂いているところです。
 こういった考え方がまとまった段階で、川辺川のダムの中止というものをひとつのモデルケースとして我々としては補償措置を詰めていくということになろうかと思います。
 私はやはり地元の皆さん方とお話をする中で、国が上からこういった補償措置を決めたから呑んでくれということではなくて、地元の方々、特にダム水没予定地であった方々には長年に渡って苦渋の選択を受け入れてもらいながら、また政権交代の政策変換でご迷惑をおかけしている訳ですので、地元の方々からご意見を伺う中で補償措置というものをまとめていきたいと考えております。
 従って、今申し上げたようなタイムスケジュールで考えていきますと、一番早い可能性がある川辺川ダムにおきましても来年のある時期に正式な、もし中止というものをご決定頂ければそこから地元の皆さん方とのお話の中でどういった補償をしていくべきなのかといったことをヒアリングをさせて頂いて、それを法案にしていくということですので、中々来年の通常国会、特に来年は参議院選挙がある年ですので、延長というのは中々難しかろうと思っておりますので、そういう意味では来年の通常国会というのはスケジュール的に難しいのではないかということを申し上げた次第です。

(中略)

(問)ダムの補償法案についてですが、先程来年の通常国会の提出は難しいと仰いましたが、ということは2011年の通常国会の提出をお考えなのでしょうか。
 またこの法案の中で補償の対象となる方々ですが、八ツ場ダムと川辺川ダムの建設予定地の住民だけなのでしょうか。
それとも再検証した結果、中止となる全ダムの住民も想定されているのでしょうか。
(答)当然ながら今の公共事業は止まらないという前提になっている。
止めた場合にその迷惑を被った地域や住民の方々に対する補償をどうしていくのかということでございますので、八ツ場或いは川辺川に限ったものではございません。
 そして時期でございますが、先程申しあげた通りでございまして、やはり地元の住民の方々のご意向というものを伺った上で作るとすれば、むしろ時間を区切って何が何でも来年度の通常国会に出すということは中々難しいのではないかと思っております。
 ただ仮に中止というものを決定した場合は、出来るだけ速やかに生活再建というものが展望が開けなければなりませんので、来年の通常国会はスケジュール的に難しいのではないかと思っておりますが、それ以降でどういう国会の運びになるかというのはよく分かりませんが、今申しあげられることは来年の通常国会は中々難しいのではないかということであります。

(問)八ツ場と川辺川にはそれぞれ現在も地元のインフラ整備の予算が付けられておりますが、来年度の予算にはそういった生活補償法案が出来ないとすれば、来年度の予算としては現状の色々なインフラ整備の予算を盛り込む形で留まるのかどうかお聞きします。
(答)八ツ場ダムに致しましても川辺川ダムに致しましても、本体工事は中止ということを申しあげている訳でございますが、ダム事業そのものを中止ということは申しあげてはおりません。
 これは今ご指摘のあった所謂生活関連事業というものについて必要なものは継続をしていくという意味でダム事業そのものを中止にはしていないということでございます。
 ただ政権交代がありまして、ダムの見直しと同時に公共事業費の圧縮というものがございます。
 そして基本的には新規事業には着工しないということを全国一律で決めている訳でございまして、そういったものに絡むのかどうなのかといったところで判断が行われる場合はございますが、しかし繰り返しになりますが、ダムの本体工事は中止を致しますが、ダム事業は継続するということで必要な生活関連事業については継続をして参ります。