前原大臣と水没予定地住民の意見交換会

 2010年1月24日、八ッ場ダム予定地を抱える群馬県長野原町において、地元住民と前原大臣との初対話が行われました。関連記事を転載します。

■東京新聞群馬版2010年1月22日付記事より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100122/CK2010012202000108.html
ー「八ッ場ダム」対話を前に<上> 『条件闘争』『中止容認』… 揺れる地元世論ー

 「住民の大半は、ダムの完成だけを想定して長年暮らし続けてきた。建設中止を受け入れた形での議論は絶対にできない」

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)建設中止問題をめぐり、前原誠司国土交通相との意見交換会の二十四日開催が正式決定したことを受け、地元のダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は、鳩山政権が掲げるダム中止方針の撤回を求める気持ちに変わりがないと断言した。長野原町の高山欣也町長も「ダムを造らないという政策判断は許されない」と強調。地元はあくまで「建設継続」で一貫していると言い切った。

 だが、ダム問題の解決につながる糸口が一向に見えない中、住民の間には多様な意見が生まれ始めている。

 同町の林地区に住む六十代の男性は「国の政策に全面的に抵抗したままでは、地域の将来展望もままならない。ダム中止を認めないにせよ、地元にとって不可欠な生活再建事業を実現するための『条件闘争』を始めた方がいい」と主張。ダム建設予定地が置かれた現実を踏まえた議論への転換を求める。

 政権交代によって生まれた新たな政治状況を、肯定的に受け止める声もある。川原湯地区の五十代の男性は「ダムは本来、地元が建設を求めたわけではない。鳩山政権の中止方針を容認し、ダム事業で壊された地域社会の再建を国に託しても構わない」と訴える。

 一方で、「鳩山政権への徹底抗戦を貫くべきだ」とする意見も根強くある。代替地へ移転を予定する長野原地区の男性は「自民党ならダムを造ってくれる。何年後になるか分からないが、もう一回政権交代するまで耐え抜く覚悟はある」と悲壮な思いを告白する。

 住民一人一人の声を聴けば、地元の世論が決して“一枚岩”ではない現状が浮かび上がる。だが、萩原委員長も高山町長も「ダムの完成が最終目標だ」と強硬な立場を崩すことはない。

 意見交換会が、ダム問題打開のきっかけとなるか注目される中、川原畑地区に住む男性は「ダム建設の是非について、地元の中で議論を深めるのは正直怖い」と明かし、住民の率直な心情をこう代弁する。

 「過去のダム反対闘争では、親族であっても建設賛成派と反対派でいがみ合い、地域社会に大きなしこりが残った。今あらためて意見をぶつけ合えば、再び地域の『分裂』を引き起こしかねない」
     ◇
 八ッ場ダム建設予定地の住民が、前原国交相との「対話」を拒否してから約四カ月。二十四日に前原氏が予定地を再び訪れ、懸案だった住民との意見交換会が実現する。この間、住民の思いは揺れ動いた。一方、ダム中止を訴える市民団体側も、鳩山政権の取り組みに懸念を示し始めている。対話を前に、それぞれの関係者の実情を取材した。

■2010年1月25日 朝日新聞政治面より転載
http://www.asahi.com/politics/update/0125/TKY201001240256.html
ー前原国交相と八ツ場ダム地元、平行線 初の意見交換会ー

 八ツ場(やんば)ダム(群馬県)をめぐり、前原誠司国土交通相と、これまで対話を拒んできた水没予定地の地元住民との初の意見交換会が24日、同県長野原町で開かれた。前原国交相は、建設中止を前提にした生活再建についての協議を始めることを提案。住民は反発し、協議は進展しなかった。

 前原国交相は、就任直後の昨年9月、建設中止を表明するとともに現地を視察した。地元住民は「地元に説明がなく、中止は受け入れられない」として意見交換を拒否。前原国交相はその後、全国のほかのダムと同様に八ツ場ダムも必要性を再検証するとし、計4回にわたり意見交換を申し入れていた。

 前原国交相はこの日の会合の冒頭、「(政権交代で地元に)大変な困惑と怒り、将来への不安を抱かせているのはすべて我々、政治の責任」と頭を下げた。その上で、「再検証はするが、皆さんのお気持ちに応えられない可能性がある」と、改めて中止の方向性をにじませた。

 さらに、「どういう生活再建を皆さん方と作り上げていくか、時間との勝負だと思っている」とし、ダムなしの生活再建策の協議を提案した。

 これに対し、水没関係5地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は、国交相が建設中止の方針を白紙撤回したと受け止めたから意見交換に応じたとして、「決して中止の方針を受け入れたわけではない。仮にダムが中止になった場合の議論は致しません」と反発、中止前提の協議にはならなかった。

 住民からは建設推進を求める意見や、「政権交代後、町民から笑顔が消えた」「精神的にも肉体的にも疲れ果てている」との不満が相次いだ。

 会合を終えた前原国交相は「これが第一歩。これから何度でも足を運びたい」と語った。

■2010年1月25日 朝日新聞社会面より転載
ー八ッ場から ダムが止まるまち 「これは反対発表会」 初対話、戸惑う住民ー

 八ッ場ダムの建設中止に揺れる群馬県長野原町。同町の体育館「若人の館」で24日午後、前原誠司国土交通大臣と地元住民の初めての意見交換会が開かれた。

 報道陣は168人。地元住民には300席が用意されたが、集まったのは138人。空席が目立った。

 あらかじめ決められた12人が一人ずつ意見を述べた。

 「父親から『ダム建設が決まったから、これから先の川原湯の旅館、観光はお前らの世代がやらなくちゃいけないんだ』と言われ、我々は耐えてきた。それから二十数年間、ダム湖を中心とした新しい川原湯温泉の再建ということで、日夜、町づくりに励んできました」(樋田省三・温泉観光協会長)

 「すべての旅館の代替地への早期移転と、ダムに影響されない住民の生活の早期実現をぜひともお願いします。昨夏の総選挙前から、ダムを前提にした生活再建しか考えていないと私は主張してきた。ダムの再検証の結果に関係なく、再検証に先んじて、将来に希望を与えてくれる生活再建をぜひお願いしたい」(豊田明美・温泉旅館組合長)

 川原湯温泉からは3人がマイクを握った。意見発表者の顔を見つつ、前原国交相は机上のノートにメモを取り続けた。

 意見交換会に先立ち、前原国交相は人通りの少ない坂道に並ぶ古い川原湯温泉街を車窓から眺めていた。4ケ月前に現地視察では目にする機会がなかった。 

 「58年の思いはどうなるのか」「前原国交相の中止発言は独裁者のようだ」「謝って済む問題じゃない」「ダムの早期完成しかない」-。建設推進の意見が出る度に、会場から拍手が起きた。一方で、前原国交相の謝罪の言葉やダム中止の理由の説明には、拍手は一切、起きなかった。

 そんな中、後方に座った女性は一度も拍手しなかった。建設賛成派が多数を占める今の地元で、中止に賛成だと言えば「村八分」になる恐れすらある。ただ、「物言えぬ中止の賛同者」がいることを国交相にはわかってほしいと思って足を運んだ。発言の機会はなかった。「中止反対の人たちは、大臣の考えを聞く気がない。意見交換会じゃなくて、ただの意見発表会」。そう切り捨てた。

 意見交換会に向けて、水没5地区連合対策委員会(萩原昭朗委員長)は準備を重ねてきた。温泉街の道路も所々凍り付いた12日夕、連合対策委の会合で、事前に意見を調整することが決められた。

 18日には、意見発表者として選ばれた各地区の代表12人が町役場の隣の公民館に集められた。それぞれどんな意見を言うかを説明し合った。

 「反対の声を封じたわけじゃない」。連合対策委の関係者は、そう話す。
 意見交換会で発言した連合対策委幹部の60代の男性は、「今日の意見交換会はセレモニーみたいなものだ」と話す。この日の発表者は必ず「早期完成」を全面的に主張するよう打ち合わせたと明かす。

 意見交換で発言した12人中11人がダム中止に「反対」を唱えた。中止賛成は1人だけだった。

 ダムなしの考えがあることを示せば、前原国交相が強気に出てくる可能性もある。本当は中止を前提とした生活再建の話も聞いてみたい。地元からも国に要求したいことは山ほどある。でも、ダム中止を認めれば、土地も買ってくれなくなる。下流都県も負担してくれなくなるー。

 そんな警戒心が、本音を封じた。

 ただ、川原湯温泉のある旅館主はこんな見方をする。
 「話し合いするっていうことは、もう反対から賛成になる前提なんだよ。テーブルに着いたら駄目だって。ダム反対闘争をやっていた時も、話し合いを始めたら賛成に変わった。合うのは話を進めるのが前提なんだから」

 対話を拒み続けてきた町にも少しずつ、対話の兆しは生まれつつある。

■2010年1月25日 読売新聞群馬版より転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100125-OYT8T00035.htm
ー双方の溝埋まらず 八ッ場直接対話 住民「ダムで生活再建」国交相「何度も足運ぶ」ー

「ご迷惑をお掛けして申し訳ない」と、深々と頭を下げる前原国交相(左)ら  「ダムの無い生活再建はあり得ない」と主張する住民側と、「中止」と「再検証」を併せて掲げる前原国土交通相。昨年9月の八ッ場ダム(長野原町)中止表明から4か月を経て、初めての直接対話が24日、実現した。前原国交相は「何度も足を運ぶ」と表明したが、双方の溝は深いままだ。

 ■平行線

 意見交換会は冒頭から、立場の違いを印象づけた。

 「ダムを横に置くならばどういう生活再建ができるかを、お許しをいただけるなら何度も足を運ばせていただいて議論したい」

 前原国交相は「ダムに頼らない治水」への政策転換と、「予断無く再検証を行う」ことの説明をした後、中止を前提とした生活再建に言及、深々と頭を下げたが、住民は静まりかえったまま。

 続いてあいさつに立った萩原昭朗・水没関係5地区連合対策委員長が「決してダム中止を受け入れたわけではない。ダムが中止になった場合の論議はしないので最初に申し上げる」と語気を強めると、会場から拍手が起きた。

 長野原町の高山欣也町長は、終了後、「(ダム無しの生活再建について)言わないで下さいと伝えてあるのに、たぶん言うだろうなと思っていたらやっぱり言った」と批判し、意見交換を見守った大沢知事も「ちょっと踏み込み過ぎだ」と不快感を示した。

 ■1号橋

 住民代表が相次いで言及したのは仮称・湖面1号橋だ。ダム湖を横断する県道が通る計画だが、まだ工事が進んでおらず、民主党県連や中止派の市民団体から不要論が出ている。前原国交相は建設を続けるか否かを明らかにしていない。

 「ある一部の人からの意見でダムができないと要らないと出されているが、代替地に移れば川原湯と川原畑を結ぶ重要な生活道路になる」(川原畑地区の野口貞夫ダム対策委員長)。

 「1号橋の完成は川原湯の大多数の住民の総意。早期完成を」(豊田明美・川原湯温泉旅館組合長)

 会場からは拍手が起こったが、前原国交相は「参考にする」と述べるにとどめた。

 同橋は県が事業主体だが、費用の大半は国などのダム事業費があてられる。大沢知事は終了後、橋脚2本の入札を来月、予定通りに行う考えを示した。

 ■なぜ八ッ場?

 「なぜ胆沢ダムは継続で、八ッ場ダムは中止なのか」――民主党の小沢一郎幹事長の事務所が受注業者選定に影響力を持っていたとも報じられている国交省発注の胆沢ダム(岩手県奥州市)との違いをただす声も上がった。

 前原国交相は、胆沢ダム本体工事がすでに完成目前まで進んでいるとして、「政治的な配慮はあってはならないという思いで、客観的に本体工事に着工か未着工かで(凍結か否かを)分けた」と説明した。

 また、水源地域対策特別措置法に基づく地域整備計画が閣議決定された1995年は自社さ政権で、前原国交相が当時、さきがけに所属していたことへの疑問も出され、前原国交相は「その後の状況の変化があった。批判は甘んじて受ける」と述べた。

 ■今後は?

 前原国交相は「何度も足を運ぶ」と繰り返し、長期化は避けられない様相だ。 会場を後にする住民からは、「大臣は自分の言葉で質問に答えてくれた」(長野原地区の男性)、「1回だけでなくどんどん会ってもらって話ができたらいい」(川原湯地区の女性)と、評価する声も聞こえた。一方で、「(次は)検証結果が出てから。このまま会っても仕方ない」(高山町長)、「あとは大臣と下流都県との話し合いが必要。その上で長野原に来るべき」(星河由紀子町議)と硬い受け止め方も依然として根強い。

住民 補償手厚く/無駄遣い

 住民代表の主な発言は以下の通り(敬称略)

 町議・冨沢吉太郎(69)「突然の中止は独裁者の発言。謝ればいいという話ではなく、どう償うのかだ」

 川原畑地区ダム対策委員長・野口貞夫(66)

「湖面1号橋は、代替地に移れば、川原湯と川原畑地区を結ぶ重要な生活道路になる。一日も早い予算付けを」

 川原湯温泉観光協会長・樋田省三(45)「ダムの工期延長で投資できず、旅館などは預貯金を取り崩して修繕し、我慢してきた。住民の打撃を考えた手厚い補償を」

 町議・星河由紀子(67)「下流都県の人たちともっと話し合うべきだ。なぜ一番に八ッ場ダムを血祭りに上げたのか。検証もなく、思いつきのままではと感じる」

 川原湯温泉旅館組合長・豊田明美(44)「報道で、地元選出民主党議員と地元住民の意見があまりにも食い違っていることに驚いている。再度確認してもらいたい」

 農業・金子宏(72)「ダム建設は税金の無駄遣いが多い。徹底的にうみを出してほしい」

 町議・浅沼克行(59)「今の政治は、過去の行動の責任もとらず、信念もないのかと疑問だ。信頼関係を一から積み上げるのは不可能ではないか」

■2010年1月25日 毎日新聞群馬版より転載
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20100125ddlk10010154000c.html
ー八ッ場ダム・流転の行方:国交相と住民意見交換会 前原国交相の発言要旨 /群馬ー

 ◇「すべて政治の責任」 国交相、再検証後の議論提案
 前原国交相は「ダムの建設中止で、大変な困惑と怒り、将来への不安を感じさせてしまった」と謝罪する一方、「(ダム推進を求める)皆さん方の気持ちに応えることはできない可能性がある」とも述べた。前原国交相の発言要旨は次の通り。

 皆さん方にはなんの瑕疵(かし)もない。苦渋の選択で1都5県の川下の安全と財産を守るため、みなさんがダムの底に故郷を沈める選択をしたにもかかわらず、政権交代でダム中止を申し上げ、ご迷惑と将来への不安を抱かせてしまっていることは、すべて政治の責任で、心からおわび申し上げたい。皆さん方は被害者だ。

 ではなぜその決断をしたのか。三つのポイントがある。まずは人口の減少。二つ目は少子長寿化。三つ目は経済のパイが縮まったにもかかわらず、国と地方で国内総生産の倍近い借金を抱えていること。3条件を前提に、税金の使い道を大きく変えていくことを約束して政権の座についた。

 コンクリートが悪いわけではない。お金がいくらでもあれば、ダムを造ることを我々も選択していたかもしれない。国全体を考えた時に、トータルで判断し、八ッ場を含めすべてのダムの見直しをする中で、どこに優先的に使わないといけないのかを決めないといけない。

 八ッ場も予断なく再検証するが、根本の思想を見直していかないと日本の財政はもたない。河川だけでなく空港や港湾整備など公共投資すべてを見直している。民間企業や家庭ならとっくの昔に倒産、破産している。

 その中で再検証するので、皆さん方の気持ちに応えることはできない可能性がある。もしダムを造らないのであれば、どういう生活再建を国と皆さん方との間でつくりあげられるか。もしそういう議論をお許しいただけるならば、何度でも足を運ばせて話をさせていただきたい。

■2010年1月25日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581001250002
ー意見交換会 深い溝埋まらずー

ー建設中止に揺れる八ツ場ダム(長野原町)をめぐり、国と地元との間に深い溝があることを改めて印象づけた。24日、「ダムを造らないなら」とダム中止の姿勢を崩さない前原誠司国土交通相の発言に住民側が反発、「建設中止は大臣の妄言」などと語気強く迫る場面が目立った。

 意見交換会は同日午後、長野原町与喜屋の「若人の館」で開かれ、水没予定地区の住民ら約140人が出席。大沢正明知事や高山欣也・長野原町長らも同席した。

 地元を代表して、最初に大沢知事があいさつ。前原国交相に対し「地元住民は被害者。彼らの苦悩をしっかりと受け止め、政治判断をしていただきたい」と訴えた。

 これに対し、前原国交相は「苦渋の決断でダム建設を受け入れたにもかかわらず、政権交代によってダムの建設を中止すると申し上げたことで、大変な困惑を抱かせてしまっていることを心よりおわびしたい」と謝罪。頭を深々と下げたあと、知事の表現を引用して「みなさんに何の瑕疵(か・し)もなく、被害者だ」と話した。

 そのうえで、前原国交相は「八ツ場ダムについても予断なく再検証するが、国全体ですべての公共投資を見直している。もしダムをつくらないのであれば、どういう生活再建が望ましいのか。何度も足を運んで議論させていただきたい」と述べた。

 「ダム中止」の前提に、住民側は反発した。マイクを握った八ツ場ダム水没関係5地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「意見交換会に応じたのは、中止の方針を受け入れたからではない。『仮にダムが中止になった場合』という議論はしない」と訴え、発言要旨をまとめた書面を前原国交相に直接手渡した。

 水没予定地区の住民らとの話し合いはその後、1時間余り続いた。野口貞夫・川原畑地区委員長は「国交相がつくるダム問題の有識者会議に下流都県の知事を加えるべきだ」。樋田省三・川原湯温泉観光協会長ら商工関係者からは「ダム湖なしの観光振興は考えていない」などの意見が相次いだ。農業を営む冨澤吉太郎町議は「建設中止は前後の見境のない大臣の妄言としか思えない」と食いついた。

 さらに、樋田洋二・川原湯地区委員長は「代替地に移転する住民の用地補償費の予算が尽きたと国交省職員に言われたが、来年度の予算はどうなるのか」と訴えた。

 こうした意見について、前原国交相は「今まで継続してきた公共事業を止めて、それで終わりとは思っていないが、止めるべき公共事業は止める」「生活再建予算については来年度も155億円を計上しているが、優先順位をつけていかなくてはならない」などと答えた。一方で、「貴重な意見をありがとうございます」「改めておわびしたい」などと繰り返し述べ、質問に直接回答する場面はわずかだった。

 終了後、長野原町の高山町長は「生活再建を優先するといいながら、用地補償費については来年度予算の中で優先順位を検討するというのは許せない。(大臣とわれわれの考え方は)もともと平行線だったが、意見交換会の成果はなかった」とぶぜんとした表情で話した。

 「期待はずれ」。前原国交相との初の対話に、地元住民は落胆の表情を見せた。一方、今後も大臣に意見を言う場を求める声もあった。

 「(政府の新年度予算案で)代替地への移転費用をいくら盛り込むのかも話せない。抽象的な答えばかりだった」。川原湯温泉で旅館を営む70代男性は、意見交換会後、不満を隠せなかった。

 川原湯地区の70代男性も「(ダム中止を表明した)昨年9月と何も変わらない」。

 水没地区の80代女性は「生活再建の先延ばしは困る。大臣は1回だけでなく、どんどん来て」と言った。

 旅館を営む豊田拓司さん(58)も「住民が感じている心配なことは伝えられたんじゃないか。ダムが出来ても出来なくても、話し合いを進めていかなきゃいけない」。

 別の地区の50代男性は会場から途中退席した。「住民代表はダム賛成派ばかり。時間の無駄だ」と、空になった紙パックの茶を握りつぶした。

■2010年1月25日 東京新聞群馬版より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100125/CK2010012502000106.html
ー『時間足りない』八ッ場ダム意見交換会  地元、議論継続求めるー

 「(八ッ場(やんば)ダムをめぐる)五十八年間の苦労は、とても二時間では語り尽くせない」-。長野原町の体育館「若人の館」で二十四日開かれた地元住民と前原誠司国土交通相との初めての意見交換会。傍聴した地元住民からは、継続的に議論の場を設けるように求める声が相次いだ。 (中根政人、加藤益丈、菅原洋)

 意見交換会終了後、同町の高山欣也町長は「(前原国交相は)さまざまな問題に対して(住民を)納得させる説明はできなかったと思う。ダム建設を中止するのなら、下流域の人々への説明も含め、これで意見交換会を終わりにはできないだろう」と険しい表情で語った。

 一方、発言の機会が与えられなかった地元住民からは「時間不足」という声が噴出。同町の八十代の男性は「五十八年間も苦しんでいるんだ。たった二時間で思いを伝えるのは難しい。もっと論点を絞って、整理してから継続的に議論していくべきだ」と指摘した。農業の男性(61)も「時間が足りない。大臣が難しいなら、ほかの民主党幹部でもいいからもっとじっくりやらないと」と不満を漏らした。

 ただ、ダムの建設中止に賛成する同町の会社経営の男性(58)は「国交相と職員が二度までも来た。この問題に力を注いでいると思う」と意見交換会に一定の評価をした。

 また、発言者からも終了後、厳しい声が相次いだ。町議の星河由紀子さん(67)は「この場で『話し合いをした』として中止する方向へいく恐れがある。不信感の方が強い。(国交省は)もっと下流都県と煮詰めてから足を運んでほしい」と求めた。男性の一人は「(前原国交相が謝罪したが)謝ればよい、というものではない。この地域のことを考えるなら、謝る前に調査して発言してほしい」と指摘。同町川原湯の樋田洋二さんは「頭を下げるだけならおれでもできる。(ただ)一国の大臣としては勇気がいる。大変だと思う」と配慮も見せた。

■2010年1月24日 民主党ニュース
http://www.dpj.or.jp/news/?num=17588
ー「八ッ場ダムに係る水没地区住民との意見交換会」に参加 前原国交大臣ー

 前原誠司国土交通大臣は24日午後、群馬県長野原町で開催された「八ッ場ダムに係る水没地区住民と国土交通大臣との意見交換会」に臨んだ。政府からは馬淵澄夫国交副大臣、三日月大造国交政務官も参加、政治に翻弄されてきた地元住民らの苦悩や不安、怒りに耳を傾けながらも、「コンクリートから人へ」という鳩山政権の基本方針の下、公共事業全体を見直すなかでダム建設の再検討が必要であると強調した。

 地元住民との意見交換会は、八ッ場ダム建設中止を表明以降、政府側が希望していたもの。水没地区にあたる長野原町、吾妻町の八ッ場ダム建設に関係する住民が多数参加した。

 意見交換会では冒頭、大沢群馬県知事が挨拶し、「現地の苦労を受け止め、今後の政策に反映を」と求めた。

 続いて挨拶に立った前原国交大臣はまず、「皆さんには何の瑕疵(かし)もない。被害者である。大変な困惑と怒り、迷惑と将来に対する不安を抱かせてしまっていることは政治の責任である」と述べ、長年に渡る反対運動の末にダム建設という苦渋の選択をした参加した地元住民に対し陳謝した。

 そのうえで、「なぜ民主党政権はダムの建設中止を決断したか」と切り出すと、多くの日本人が抱えている日本の将来への不安は、(1)人口減少、(2)65歳以上の人口比率が高い少子長寿化により働き手が減少し社会保障が必要な人口層の増大、(3)900兆円を超える莫大な借金--の3点が主な原因であると分析。民主党はこれを前提に税金の使い方を大きく変えていくと約束して政権に就いたとして、公共事業を圧縮し医療・介護・年金といった社会保障の充実や教育、子育て支援に充てていく必要性を訴えた。

 同時にこのような日本社会においては河川のみならず道路、空港、港湾整備等全ての公共投資を見直すとして、143全てのダム事業を見直し、トータルで再検証するなかで今の財政状況と優先順位のなかで決めなければならないと主張。「大きな政策変換のなかでご迷惑をけているが生活再建のために何ができるか、議論させていただきたい」と理解を求めた。

 長野原町の高山町長、吾妻町の茂木町長も「生の声を真摯に受け止め温かい配慮を」「世論から、政府から見放されるのではないかという住民の不安を考えてほしい」などとそれぞれ挨拶した。

 意見交換では、八ッ場ダム建設による水没地区の代表者、町議ら12人が発言。ダム建設を受け入れるまでの経緯とともに「住民の安全安心を確保するために苦渋の選択をしてきた。決断したからには後戻りできない」と述べた川原町八ッ場ダム建設企画委員会の野口委員長を皮切りに、「下流地域の1都5県の知事の意見反映を」「これまでダムありきの生活再建策を考えてきたのですぐに切り替えはできない」「近隣地域を含め手厚い保障を」などとする声が相次いだ。

 これに対し前原国交大臣は、公共事業全体を見直す必要性を重ねて訴え、一度始めたら止まらないこれまでのあり方を改め、法律や予算的裏づけを行いながら生活再建を保障していくと主張。同時に長年ダム事業に、政治に翻弄され続けてきた水没地区の住民の苦悩に理解を示した。また、事業継続となった岩手県の胆沢ダムとの違いはとの問いには、「本体工事に着工しているかどうか」がその判断基準だと説明した。

 一方で、住民側からはダム建設に係るムダ遣いを指摘する声も上がり、補償交渉で不公平があるなど地元国交省職員の働き方を問題視し、「会計検査院による調査を」との要望があった。

 前原国交大臣は最後に、「今回の意見交換を通じて下流地域の命と財産を守るために皆さんが苦渋の選択をされたことへの理解を深めた」と述べ、今後1都5県の知事からの意見聴取や下流地域の方々らと意見交換する考えを表明。「予断ない再検証をさせていただく」と締めくくった。

■2010年1月24日 民主党ニュースより転載
http://www.dpj.or.jp/news/?num=17589
ーこれが第一歩。今後も話し合いを 八ッ場ダム地元住民との意見交換会後に前原国交大臣ー

 前原誠司国土交通大臣は24日午後、地元住民との意見交換後に記者団に対し、「住民の方々とお会いし、政権交代とはいえ国の政策転換のなかでご迷惑をかけたことへのお詫びができたことはありがたかった」との所感を述べたうえで、「これが第一歩であり、今後現地に足を運ぶ中で話し合いを進めていきたい。(八ッ場ダム建設については)予断なく検証していくが、中止の方向性は変わっていない」と強調した。

 生活再建策に関しては、今回の意見交換会では全員がダム建設継続を求めるなか踏み込めなかったと説明し、「前政権の下で計画が延び延びになってきたこともあり、ダム建設中止を前提とした生活再建策を了承していただけるなら一日も早くやらせていただきたい」と表明。「生活再建策や保障は地元の声を聞かないと具体的なものはつくれない。共通の土壌に乗ったとき議論できることであり、不利益を被られる地域の方々との話し合いのなかで決めていきたい」と話し、法律の枠組みについては国交省内で検討していると明かした。

 治水政策に関しては「ダムに頼らない治水」の有識者会議で現在基本的な考え、物差しをまとめている」と述べ、「その過程において当該下流域の首長や関係者との意見交換もあっていいのではないか。いずれにしても今の国の河川整備の基本方針は財政状況を考えれば難しい」と指摘。「基本的な整備計画をどうするのか、代替案をどうするのかは河川ごとに違うものであり、基本的な考えをまとめたうえで再検証する個別の河川に当てはめ、地元の方々と議論するなかで継続か中止かを決めていく」とした。

 今回の意見交換会では5地区の代表と町議会議員のみの発言であったことについては、「地域の委員会で人選されたことであり、先方の仕切りに従わせていただいた。今後は様々なルートで会や個別にも話合いをするなかで住民の皆さんの気持ちを考え、私どもの思いを意見交換していきたい」と語った。

 また、地元で八ッ場ダム建設による地すべりが増えるとの指摘や、水質への疑念の声が上がっているとの指摘には、「民主党としても地すべりは懸念していたこと」だと述べ、水質に関しては、「これまで情報公開されてこなかったことはけしからんこと。鳩山政権においては責任を持ってオープンにしていくことを貫いていく」と明言した。