第三回有識者会議ー宮村忠氏からの意見聴取

 「今後の治水のあり方に関する有識者会議」の第3回会議が1月29日に開かれました。第二回は、ダム中止派の専門家からの意見聴取でしたが、今回はこれまでダム推進とわれきた宮村忠氏からの意見聴取が行われました。

2010年1月30日 上毛新聞より転載
◆ー洪水の歴史など主題に意見聴取 国交省が有識者会議ー

 国土交通省は29日、八ッ場ダムなど全国のダム事業の継続が妥当かどうか判断基準などを策定する「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の第3回会合を開き、関東学院大の宮村忠教授(河川工学)から利根川流域の洪水の歴史や水防への取り組みなどをテーマに意見を聴取した。委員から治水を扱う行政の専門組織の必要性を指摘する意見などが出た。
 宮村教授はダムの有用性を認めながら、治水について研究している。会議後に記者会見した同省の三日月大造政務官によると、宮村教授は地水上のダムの必要性については言及しなかったものの、河口堰は有効との考え方を示したという。

—転載終わり

 第三回有識者会議の配布資料が国土交通省のホームページに掲載されています。↓
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010e38985c1df4932f7cb28755c31746b9128cad91f0.html

議事次第
http://tinyurl.com/yf78yrm
委員名簿
http://tinyurl.com/ygpu54x
資料1-1
http://tinyurl.com/ykv626f
資料1-2治水と水防の構図 ~利根川を例にして~
http://tinyurl.com/yklqyjp
資料1-3
http://tinyurl.com/yk3fvwb
参考資料1資料2今後の討議に向けての主な論点
http://tinyurl.com/yzmd7kw

 この中で、参考資料1として掲載されている「今後の討議に向けての主な論点」を全文転載します。

参考資料1(第2回会議 資料2) 今後の討議に向けての主な論点

◎治水対策案について
○従来の河川区域だけに着目した治水対策から流域全体に目を広げた治水対策に重点を移し、その実現の可能性を徹底的に検証してはどうか。

○流域治水の考えの必要性は、すでに40年以上にわたり河川関係者の間で認識され議論されてきたところであるが、法的な規制、地元自治体の開発行政、関係自治体や住民との合意、技術的課題など多くの問題を抱えており、このような問題点等について、改めて整理し、対策実施の可能性を検討していくことが重要ではないか。

○河道掘削、引堤、堤防の嵩上げは、これまで講じられてきた治水対策であるが、長い延長にわたる工事を行うこととなり、用地買収や橋梁等の架け替え、取排水施設の改築などに莫大な費用や時間を要すること、さらに、堤防の嵩上げは洪水時の水位を上げ、破堤した場合の影響がより大きくなることなどの課題について整理する必要があるのではないか。

○河川堤防は古くから土で築造が繰り返されており、これまでは堤防の安全性を形状で規定してきたが、機能別に性能を照査する方法に転換してきている。現時点で全国直轄河川の約4割もの堤防が何らかの対策が必要とされており、安価な堤防強化工法の開発や照査の絞り込みによる効率的な対策など、様々な課題があるのではないか。

○河川堤防の強化については、これまで計画高水位以下について対策が行われてきているが、計画高水位から天端までの補強などの対策を進めるべきだという意見があり、その効果や実現性等について検討してはどうか。

○計画を超える洪水が多発する可能性があることから氾濫を許容する政策への転換を検討することが必要であり、その場合の対策等として耐越水堤防の工法、実施個所の選定、地域ごとに守るべき洪水位の決定などの課題に真剣に取組むべきではないか。

○遊水地建設は、土地所有者や地域に与える影響等でダム建設と類似している面があり、効果や課題等について十分に整理してはどうか。

○流水、流砂、生物の連続性を確保でき、水没補償の必要もないような小規模の洪水調節専用ダム(流水型)について検討してはどうか。

○既設のダムの機能の実態を徹底的に調査し、より有効に活用して機能向上と便益増大を図るための方策を見出すことが重要ではないか。

○水系に存在する複数の既設ダム(利水単独ダムを含む)について容量再編や連携事業を積極的に進め、全体として各目的についての効率化を目指してはどうか。

○流域全体に浅く、広く流水のエネルギーを分散させるため、流域内の諸施設を利用した雨水貯留施設の整備、住宅における雨水貯水槽、浸透枡の設置などの対策の徹底について検討してはどうか。

○森林が劣化すると、雨水の浸透が低下し、森林面積は変化しなくても都市化と同様の流出率増加が生じる。これが生じない森林の保全が必要である。また、森林が劣化し地表流発生が生じている状況があるとき、地表流発生を抑制する森林状況に回復がなされると、流量は低下する。これらについてどこまで定量的評価可能か。

○森林において雨水の土壌への浸透と貯留がもたらす洪水低減効果は、現状の森林の多くが既に発揮している効果である。森林への新たな投資によって「その効果を更に増加する」という課題があり、現況の森林が発揮している機能評価に比べて、立ち入った議論が必要ではないか。

○他産業より森林作業者への転職可能性については、森林作業の採算性(事業の規模や作業地が分散しているなど)や森林作業の危険性、熟練の必要などの課題がある一方で、中山間地の中小規模の建設会社には、もともと森林における作業から出発しているものもあり、森林に関わる作業への参入に有利な条件もあるのではないか。

○霞堤や無堤部がある箇所を締切らず、洪水の一部を堤内地に導入して遊水効果を生み出し、必要に応じて輪中堤や二線堤によって生命財産を守る対策を極力推進してはどうか。また、堤防区間においても、ある高さ以上に水位が上昇した場合は破堤のおそれのない区間で越流させ、堤内地での氾濫を許容する方策を検討してはどうか。

○氾濫を許容する区域では、土地利用・税制・補償・保険等の制度、地域振興策などについて検証してはどうか。

○ソフト対策として人的被害を軽減するためには、気象予報、洪水情報の迅速かつ徹底した住民への伝達システムの整備、ハザードマップの活用と洪水災害の意識向上、警戒避難体制のあり方、水防活動の強化、コミュニティの強化と防災訓練などが考えられ、それらの有効性や信頼性の検証を行うことが必要ではないか。

○避難勧告の伝達率が低い事例が多い、避難開始まで時間を要している、避難途上で危険に曝されている事例が多い、防災教育には時間もコストもかかる、市町村長が判断できる情報提供の仕組みが必要などの課題があり、実態に即した議論が必要ではないか。

◎評価、検証の進め方について
○幅広い方策を組み合わせて治水対策案を立案し、従来の評価方法(B/Cなど)に加えて、新たな評価軸によって検証を行う必要があるのではないか。

○「どのような災害から守るのか」については、計画を超える洪水が発生する可能性があり、更に中小出水や集中豪雨への対応なども含め、どのような規模や降り方の降雨・洪水を前提に議論するか、明らかにしておくことが重要ではないか。

○「何を守るのか」については、人命、一般資産、公共インフラ、社会システム、経済活動など守る対象を明らかにして議論を行うことが重要ではないか。

○評価に当たっては、時間的な観点を考慮し、対策の実施に要する期間や途中段階での効果発現等について、明らかにしていくことが重要ではないか。

○評価に当たっては、財政的な制約がある中でコストの観点が重要である。なお、コストについては建設に要する費用だけでなく、維持管理に要する費用等を的確に見込むことが重要ではないか。

○環境への影響に関しては、生態系、水質、土砂などの観点で各治水対策について検討していくことが必要ではないか。また、地域社会への影響に関しては、土地の買収、家屋の移転、コミュニティの存続などの観点で各治水対策について検討していくことが必要ではないか。

○各治水対策案について、被害軽減効果、コスト、地域社会、環境等への影響、利水事業への影響、実現性等の評価軸について、総合的に評価する必要があるのではないか。その場合、生態系保全など貨幣価値での費用便益論になじまないものがあったり、経済ポテンシャルが低い地域・住民、人間活動の保全をどのように考えているかについて、議論する必要があるのではないか。

○個別ダムの検証については、当有識者会議で幅広い治水対策の立案手法、新たな評価軸及び総合的な評価の考え方を提示し、各地方で個別ダムの検証を検討する進め方を示していくことが必要ではないか。

◎今後の治水理念の構築
○これまでの治水対策を「高度成長継続型」とすれば、流域治水は「持続的発展社会適応型」と名付けられよう。今後のわが国における持続的国土形成の方向に相応しい変革を遂げなければならないのではないか。

○災害は外力が抵抗力を上回ったところで発現する。さまざまな外力に対して、どのように、またどのようなレベルの災害が発生するのかについてより正確な科学的アプローチが必要ではないか。
○治水、利水は洪水、渇水という極端現象、生態系は変動を含む日常現象として水循環に関わっており、その総合的管理が重要ではないか。

○温暖化による治水、利水、生態系への危機を水循環への影響として認識、水循環系についての温暖化適応策を考えることが肝要ではないか。

○都市域では、いわゆるゲリラ豪雨による被害の発生が顕著である。その発生原因を地球温暖化と単純に結び付けるのには議論の余地があり、都市のヒートアイランド現象や地形気象的要因との関係を検証する必要がある。その上で、都市の熱放出量の抑制、雨水貯留・浸透施設設置の義務化などの施策を強力に実行することが肝要ではないか。

○ダムについては、「用地補償基準妥結の頃」に確度の高い代替案に関する経済評価、利水者や地域住民の動向資料を評価委員会に提出して、評価を受けてはどうか。

○ダム建設中止を判断する時期としては、「用地補償基準妥結の頃」が費用の点からも妥当ではなかろうか。

○人口密集地域における破堤氾濫を防ぐために、堤防点検調査の結果にもとづく堤防弱部の強化対策や必要に応じて河床掘削、河道内樹林の伐採などを先ず優先させる。さらに、中小河川に破堤・氾濫による被害が続発しているから、その対応に力を注ぐべきではないか。

*有識者会議の経過については、こちら掲載しています。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=760