関連工事の遅れは何を意味するのか?

 現在進められている八ッ場ダムの付帯工事、いわゆる「生活再建関連事業」の中で、付け替え国道、付け替え県道の建設は、国交省のスケジュールによれば今春より一部を除いて供用開始の予定でした。けれども、工事は大幅に遅れています。

■2010年2月23日 上毛新聞一面トップ記事より転載
ー「八ツ場」付け替え道一部区間 町道で先行供用へ ー
http://www.raijin.com/news/a/23/news01.htm

 八ツ場ダムの生活再建事業として東吾妻、長野原両町で建設中の国道145号付け替え道(八ツ場バイパス)と県道林岩下線で、国土交通省が一部区間を町道として先行供用する方向で地元と調整に入ったことが22日分かった。両町議会3月定例会で町道認定案が可決されれば、4月にも供用開始されるとみられる。先行供用について国交省は住民の利便性向上のためと説明している。ただ、当面の供用開始が全区間の半分以下にとどまることから、計画の遅れを指摘する声もある。

 先行供用が検討されている区間は、八ツ場バイパスが全長10・8キロのうち東吾妻町松谷の雁ケ沢(がんがさわ)ランプから長野原町川原畑地区の代替地までの4キロ程度。県道林岩下線が全長8・5キロのうち東吾妻町三島の松谷吾妻横断橋から長野原町川原湯地区の代替地までの2キロ程度。ともに別の町道を経由して現在の国道145号と接続する。

 国交省八ツ場ダム工事事務所は地元に対し、先行供用の理由として①地域住民の利便性向上②現在の国道145号が大雨で交通規制された際の交通確保-を挙げている。町道とするのは国道として主要な交通需要を担える状態ではないが、生活道路としての役割は果たせるため。国道145号の付け替え工事では長野原町長野原と同町横壁を結ぶ「めがね橋」も町道として供用されている。

 同事務所は2路線を本年度末までに「概成」させ、新年度早々に供用開始する方針を県や地元などに説明してきた。このため、県は「新年度早々にはほぼ全区間が供用されると考えていた。町道認定の話は聞いていないが、事実なら一部しか供用にならないということで非常に遺憾」と反発している。

 長野原町の高山欣也町長と東吾妻町の茂木伸一町長は「正式に聞いていないのでコメントできない」としている。

—転載終わり—

 付け替え国道で供用が始まるのは、上記記事では、
「東吾妻町松谷の雁ヶ沢ランプから長野原町川原畑地区の代替地までの4㌔程度」
 となっていますが、分譲が始まった川原畑地区の代替地までつながったわけではありません。
 川原畑地区の代替地と吾妻渓谷のトンネルの間には、地質の悪いことで有名な二社(じしゃ)平があり、川原畑の代替地区間も、付け替え国道工事のために山を切った法面が崩落を繰り返しています。
 今回開通することになるのは、主に付け替え国道の中で吾妻渓谷のトンネル区間です。上流側からトンネルの入り口までの道路は、急勾配で線形の悪い工事用進入路を利用しなければなりません。

 一方、付け替え県道も、吾妻渓谷のトンネル区間のみの供用開始となりますが、こちらはすでに川原湯の打越代替地とつながっていますから、利用する人もいるでしょう。ただ、供用開始予定区間の上下は、下流側では工事が難航しており、湖面二号橋につながるはずの上流側では工事着手もしていない区間がかなりあるという状態です。

 共同通信のネット情報には、湖面1号橋に関連するニュースが載っています。

■2010年2月23日 47NEWSより転載
ー住民意向を調査、国交省 八ツ場、湖面橋建設めぐりー
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010022201001065.html

八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設による水没予定地区の生活再建事業の一つで、国土交通省が建設凍結を検討している「湖面1号橋」(約494メートル)をめぐり、関係する地元の約60世帯を対象に代替地分譲などの意向確認の調査票を同省が配布したことが22日、分かった。

 前原誠司国交相は、水没を前提としたインフラ整備を見直すとして1号橋凍結を検討しているが、群馬県や長野原町など地元自治体は強く反発。これを受け前原国交相が「地元の方々の考えを確認し、今後予算の個所付けをする上で判断材料にしたい」として、現地の工事事務所に指示した。

 水没予定地区のうち、移転する場合それぞれの代替地を1号橋が結ぶ川原湯地区と川原畑地区の住民が対象。世帯単位で、世帯主の名前が書かれた調査票を職員が届けた。

 代替地分譲の希望の有無や、希望しない場合でも代替地周辺に移転したいかなどを細かく聞いている。また1号橋や八ツ場ダム事業についての意見を自由記述で求めている。締め切りは26日。

 1号橋は水没予定地区の代替地の間を結ぶ主要な三つの橋のうちの一つ。県道だが、総工費約52億円のうち96%を国が負担する。国の凍結検討に対し、県は今月5日、一般競争入札で橋脚2本の業者を決定した。

—転載終わり—

 地形・地質(自然科学)を無視した大規模開発計画の失敗事例が、八ッ場の工事現場の至る所で見られるというのに、国交省は同じ路線を突っ走ろうとしているように見えます。
 湖面1号橋や代替地については、住民の利便性やコストの面ばかりが取り上げられがちですが、最も重要なのは安全性の問題です。国は何度も地質調査をしながら、工事が難航し、工期が延長され、事業費が膨らみ、地質調査のやり直しを繰り返しています。八ッ場ダム事業がこれほど遅れ、工事費が膨らんだのは、事業計画そのものに科学的な視点が欠けているという致命的な欠陥があるからではないでしょうか。
 国は税金で行っている調査結果をすべて公開し、工事が難航し、安全性が確保できていないことを認めるべきです。湖面1号橋の工事現場は、崩落を繰り返している付け替え国道の工事現場に隣接した、これまた地質が悪いことで有名な穴山沢です。
 失敗のツケは、納税者と地元住民が負わされます。今までどれほど地元の人々は、犠牲を強いられてきたことでしょうか。