大滝ダム 住民訴訟判決

 八ッ場ダム予定地では、周辺の地質に関して住民の居住地の安全性の問題が指摘されています。このほど奈良県の大滝ダムで地滑り災害にあった元住民らによる訴訟の判決がおりました。関連記事を転載します。

2010年3月31日 毎日新聞大阪朝刊

ー奈良・大滝ダム損賠訴訟:「地滑り予見可能」認定 賠償請求は棄却--奈良地裁判決ー
http://mainichi.jp/kansai/news/20100331ddn012040032000c.html

 奈良県川上村の大滝ダムの試験貯水による地滑りで集団移転した同村白屋地区の元住民ら30人が、国に慰謝料など約2億1650万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、奈良地裁であった。一谷好文裁判長は、地滑りの予見は可能で「国の危険防止措置は不十分」と、国の瑕疵(かし)を認める一方、「地滑りによる元住民らの恐怖心は生命や身体に差し迫っていない」として請求を棄却した。国土交通省によると、国のダム建設を巡る訴訟で国のミスが認められるのは初めて。

 判決などによると、03年3月、同ダムの試験貯水を始めたところ、約1カ月後に白屋地区の家や道路に亀裂が見つかった。国土交通省が設置した有識者委員会が同年8月、地滑りはダムへの貯水が原因と断定。その後、元住民らは同県橿原市内などへ移り住んだ。

 国側は「綿密な調査や専門家の検討によっても、地滑りは予見できなかった」と主張したが、判決は「貯水は地滑り発生の人為的な要因となり得る。別の調査で、大滝ダムの建設により白屋地区の地滑りが拡大すると指摘されていた」などと、国による予見可能性を認めた。

 元住民側の上原康夫弁護士は「画期的な判決だ。今後の大規模工事で同じようなことを繰り返せば、国は責任を問われるという意味で、大きな警鐘となる」と話した。原告団長の井阪勘四郎さん(81)=橿原市=は「国は地滑りが起こり得ることを知りながら工事した責任があり、反省すべきだ」と訴えた。

 上総周平(かずさしゅうへい)・国土交通省近畿地方整備局長は「国の主張が認められたと理解しているが、地滑りの予見可能性が認定されたことは誠に残念だ」とのコメントを出した。【高瀬浩平】
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 ■ことば
 ◇大滝ダム
 奈良県川上村大滝の吉野川(紀の川)で国が建設している洪水調節、水道用水、工業用水、発電の多目的ダム。流域面積258平方キロ、総貯水量8400万立方メートル。1959年の伊勢湾台風に伴う吉野川(紀の川)周辺の洪水被害を受けて65年に着工、02年に本体工事が完了した。03年の地滑り発生で、37世帯が集団移転。国は地滑り対策工事を進め、13年の本格運用を目指す。総工費は当初見込みの約16倍に当たる3640億円に膨れ上がった。

2010年3月31日 毎日新聞奈良版 
ー大滝ダム損賠訴訟:古里は消えた 原告団長「国は謝罪を」--地裁で判決 /奈良ー
http://mainichi.jp/area/nara/news/20100331ddlk29040645000c.html

 ◇住民の傷癒えず

 大滝ダム(川上村)の試験貯水による地滑りを巡る訴訟で、国の予見可能性を認めた30日の奈良地裁判決。半世紀にわたってダム問題と向き合ってきた原告団長の井阪勘四郎さん(81)は「地滑りは起こるに違いないと言い続けてきた。国の責任者は誠意ある謝罪をしてほしい」と訴えた。古里をなくした住民らの喪失感は癒えないままだ。【高瀬浩平】

 山に囲まれ、アユがすむ清流・吉野川沿いの急傾斜地。白屋地区の住民らは林業や農業で自給自足の生活を営んできた。しかし、03年4月に地滑りによる亀裂が見つかり、集団移転を余儀なくされた。家屋は解体され、現在は基礎の石組みや階段が残るだけだ。

 住民は離散し、助け合って生きてきた共同体は消えた。井阪さんも、神社やお寺などとともに橿原市内に自宅を移転。「白屋を追い出されるように出てきた。住民がバラバラになって残念だ」。住民票は地区に残したまま、現在も区長を務める。

 大滝ダムは洪水調節や水道用水、工業用水、発電などの多目的ダムだ。1965年に着工、02年に本体工事が完了したが、本格運用には至っていない。事業費は当初見込みの約16倍、約3640億円に膨れ上がった。国は地滑り対策工事が終わる13年度に本格運用させる方針だ。

 井阪さんは「白屋地区で地滑りが起き、別の場所でも対策工事をしている。なぜ最初から念を入れなかったのか。吉野川周辺は石灰岩で、水をためれば溶けやすい。今後もどうなるか分からない」と疑問を投げ掛けている。

 ダム近くの同村大滝に住む元村議、辻井英夫さん(76)は「ダムができて良くなったのは周辺の道路だけ。川ではウグイが産卵したり、子供が遊んでいたのに交流の場がなくなってしまった。ダムはいらない」と話した。