長野原町長選、高山町長無投票で再選決定

 2010年4月13日、八ッ場ダム事業の地元、長野原町と東吾妻町で町長選が告示されました。
 名勝・吾妻渓谷の下流に位置し、八ッ場ダム事業による国道や鉄道の付け替えなどの関連事業が行われている東吾妻町では、現職の茂木伸一町長の対抗馬として中沢恒喜氏(吾妻森林組合長、坂東コンクリート社長)が立候補し、激しい選挙戦に突入。
 一方、水没予定地を抱える長野原町では、高山町長のみの立候補で、早くも告示日当日に無投票再選が確定しました。八ッ場ダムの58年の歴史の中では、町長選をめぐってダム問題が大きく取り上げられた経緯がありますが、地元がダムを受け入れた1990年代以後、八ッ場ダムは町長選の争点とはならなくなりました。今回は、政権交代により八ッ場ダム中止方針が示されたことで長野原町長選に対する関心が高まり、新聞の全国版でも取り上げています。

◆2010年4月14日 毎日新聞政治面より転載
ー選挙:群馬・長野原町長選 八ッ場ダム推進現職、無投票再選 民主、戦いを回避
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100414ddm041010102000c.html

 <追跡>

 ◇迫る参院選、迷走
 八ッ場(やんば)ダムの建設中止問題で揺れる群馬県長野原町で13日、任期満了に伴う町長選が告示された。立候補を届け出たのはダム推進派で現職の高山欣也氏(66)=無所属=だけで、無投票再選が決まった。ダム中止を掲げる民主党は対抗馬を立てず、夏の参院選の公認候補が高山氏の「必勝」を祈願する迷走ぶり。ただ、これを機にダム問題の解決の糸口を見いだそうとの狙いもうかがえる。これまでの方針と矛盾する民主党の動きに批判もあるが「地元の方を向き始めた」と歓迎する住民もいる。【奥山はるな】

 午前10時、高山氏の選挙事務所で始まった出陣式。参院選に民主党公認で立候補する現職の富岡由紀夫・同党群馬県連会長から1本の電報が届いていた。

 <最後の最後まで必勝にむけてご健闘されますよう心よりお祈り申し上げます>

 民主党県連は09年12月、ダムが完成すれば湖の両岸を結ぶ「湖面1号橋」の建設中止を国土交通省に要望し、高山氏と全面対決したばかり。結局、前原誠司国交相が住民アンケートに基づき建設継続を決めたが、両者の溝が埋まったとは言いがたい。電報の内容を知った高山氏の選対幹部は「手のひらを返したような対応」と失笑を漏らした。

 今夏の参院選群馬選挙区は激戦が予想される。定数が2から1に削減され、富岡氏と自民党の中曽根弘文前外相の両現職が議席を争う構図になりそうだ。富岡氏の行動を「票目当て」と批判する声も上がる中、再選を決めた高山氏は事務所を訪れた富岡氏と握手を交わし「針のむしろの中をあえて来てくれた」とたたえた。選対委員長を務めた地元の温泉観光協会の樋田省三会長も富岡氏に歩み寄って名刺を交換。「今後もしっかりと話し合いたい」と伝えた。ダム推進派と反対派の間では、これまで見られなかった光景だった。
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 町内では中央政党とは別に、立候補を模索する動きもあった。前回の町長選で、高山氏と一騎打ちの末に敗れた福嶋誠氏(58)は「ダムがなくても、希望のある町づくりはできる」をスローガンに出馬を検討。チラシまで印刷していた。

 3月中旬、福嶋氏は立候補のあいさつをするため町長室を訪ねた。福嶋氏によると、これを機に高山氏と町の将来について10時間以上話し合ったという。出馬をやめた福嶋氏は「自民党はダムを造れと言い、民主党は造るなと言った。でも住民の生活は後回しという点で一緒。高山氏と話し、ダム問題を自分の手で決着したいという思いが理解できた」という。

 もう中央の意向に左右されるのはうんざり--。そんな気分が地元には漂う。無投票再選を支持する声はダム推進派、中止派を問わずに広がっていた。

◆2010年4月14日 読売新聞政治面より転載
ー気勢上げる小渕さん…八ッ場ダム推進町長再選でー
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100414-OYT1T00537.htm?from=main3

地方行政

当選が決まり、富岡参院議員と握手をする高山氏(右) 八ッ場ダム問題に揺れる群馬県長野原町で13日、町長選が告示され、ダム建設推進を掲げる現職の高山欣也氏(66)(無所属)が無投票で再選を果たした。

 祝勝会では、地元選出の小渕優子衆院議員(自民)が「ダム本体着工を」と気勢を上げる一方、富岡由紀夫参院議員(民主)が前原国土交通相の中止発言に謝罪する一幕も。国、1都5県、地元がそれぞれの思惑を抱える中、町のかじ取りを託された高山氏は「ダムが中止になるとは思っていない。必ずや解決できると思う」と力強く決意を語った。

 高山氏の公約は、ダム推進のほか、生活再建関連事業の早期完成への努力、安定した財政基盤の確立など。午前8時半過ぎに届け出を済ませると、町内で出陣式を開き、選挙カーで遊説に出た。「高山です」「よろしくお願いします」と、ダム推進を前面に出すことはしなかったが、水没予定地の川原湯温泉街では、車を出迎える支援者もいて、高山氏は窓から身を乗り出しながら手を振って応えた。

 午後5時過ぎ、無投票再選が決まると、選挙事務所では祝勝会がスタート。小渕議員や自民党県連幹事長の南波和憲県議ら自民党関係者が集まる中、民主党からは富岡議員が姿を見せた。花束贈呈の後、高山氏は目を潤ませながら、「皆さんに与えられたチャンスを精いっぱい生かしていきたい」と決意表明した。

 ◆小渕氏気勢、民主議員謝罪◆

 あいさつに立った小渕議員は「八ッ場ダムを抱える長野原での無投票再選は大変意味がある。国に対する強いメッセージになる」と声を張り上げ、「一日も早くダム本体の着工を」と呼びかけると、会場は大きな拍手に包まれた。

 続いてマイクを握った富岡議員は、神妙な表情で登壇。「この場にお邪魔することを非常に考えた」と切り出し、「前原国交相の就任早々のあの(中止)発言は誤りだった。地元の歴史的経緯を踏みにじった発言で反省している」と謝罪した。

 さらに「まだ地元の皆さんと、話し合いを十分に出来ているとは言えない。私の責任で皆さんに納得して頂き、色々な問題について話し合いが進められるよう尽力したい」と語り、自ら問題解決に乗り出す考えを明らかにした。

 祝勝会後、高山氏は記者団に対し、「今後の重責を感じた。今日の気持ちなら頑張れると思う」と、改めて意欲を語った。さらに、国が今夏以降、八ッ場ダムを含む全国のダム事業を再検証して建設の是非を判断することについて、「新しく検証して線引きすれば(ダム本体を建設せざるを得なくなり)、大臣も振り上げた槌(つち)を下ろせるのではないか」と話した。

◆2010年4月16日 朝日新聞群馬版より転載
ー長野原の高山町長 ダム完成の「期待と責任」ー
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581004160001

八ツ場ダムの地元、長野原町長選で無投票再選を果たした高山欣也町長(66)が15日、朝日新聞とのインタビューで、ダム建設に向けた姿勢を改めて明らかにした。国が「中止」をいう以上はまず、下流6都県の納得を得るのが先決との考えを示した。水没地区住民が現地にとどまる生活再建案は「ありえない」とはねつけた。(石田裕貴夫)

――無投票再選をどう受け止めるか。

 「4年間の町政を評価していただいたと感謝している。八ツ場ダム完成への期待と責任の重さを感じている」

――前原誠司国土交通相は「ダム中止」の方針を変えていない。町ができることは。

 「全国のダムの是非を検証する国の有識者会議が八ツ場の是非を再検証することは評価したい。8、9月にも出る結論を待つしかないが、国交相がそれを真摯(しん・し)に受け止めれば、建設に向かうと期待している」

――水没予定地の代替地を結ぶ湖面1号橋は建設継続になった。

 「英断だ。民主党県連が凍結を陳情したにもかかわらず住民の意向を調査し、その結果を重く受け止めてくれた」

――民主党県連の国会議員は、水没地区住民の現地での生活再建も提案した。

 「すでに半数以上の住民が代替地に移り、そんなことをしたら町が二分される。水没予定地区は河川法に基づく国管理の『河川』になっており、川原湯地区の旅館も勝手に増改築できない。現地での生活再建はありえない」

――その民主党県連会長の富岡由紀夫参院議員が13日の当選祝賀会に駆けつけ、「町長と重い責任を共有したい」と述べたが。

 「できることとできないことがある。富岡氏は生活再建の力になりたいと言ったのだと理解している。だが、私の背負っている責任はダムを完成させること。(民主党政権が『中止』と言っている以上)これは共有できない」

――富岡氏は「国交相と話し合いを進められるよう尽力し、住民が納得できる解決に向けて努力したい」とも語った。期待できるか。

 「有識者会議の結論がでるまで国交相と話すことはない。仮に国交相から、ダムなしの生活再建案が示されれば添削ぐらいしてもいいが」

 「そもそも国交相のやり方は手順が逆だ。八ツ場の事業主体は下流の6都県。治水のためにダムが必要だとお金も出しているのに、我々が(中止を)『わかりました』と言えるはずがない。『中止』だというなら、まずは下流都県と話し合い、納得を得るのが先だ」

――今年度のダム建設事業の当初予算のうち、用地買収や住民の移転などの予算は約45億円。昨年度は年度途中で足りなくなった。これで代替地への移転は進むだろうか。

 「用地売買契約をすると2年以内に移転しなければならない。移転するつもりでも、代替地の造成が進んでいない人は契約を急ぐ必要はない。未契約分は150億円程度と聞いているので、なんとかなるかもしれない」

――川原湯のしにせ旅館が先月末休業し、最盛期には20軒を超えた旅館が6軒になった。町長の出身地でもある川原湯の将来をどう見るか。

 「川原湯は草津や嬬恋などが控えていて、通過人口に期待できる。ダム湖のほとりの温泉街、『湖畔の宿』として今よりいい温泉街になる。それが夢、希望、目的だ」

――町の活性化のため、ダム以外の施策はあるのか。

 「町は観光と農業が基幹産業。長野原地区の有志がイチゴ生産組合をつくって今年夏からハウス栽培を始めるなど、我々も自助努力をする。が、やはりダム湖ができるかどうかにかかっている」

◆2010年4月19日 朝日新聞社会面より転載
ー◆八ツ場ダム、縮まらぬ溝 民主動かず「推進派」町長再選
http://www.asahi.com/politics/update/0419/TKY201004180315.html

18日は八ツ場(やんば)ダムの地元・群馬県長野原町長選の投開票日のはずだった。だがこの日、町内のポスター掲示場に候補者のポスターはなかった。告示日の13日、現職の高山欣也町長(66)が無投票での再選を決めたのだ。

 その夜、祝賀会場には地元選出の自民党の小渕優子衆院議員や同党の県議らが駆けつけ、ダム推進の決起集会のような熱気に包まれた。そんな会場に、選対幹部も予期しない人物が現れた。民主党群馬県連会長の富岡由紀夫参院議員だ。あいさつのため登壇すると、会場は静まりかえった。

 「地元との話し合いが十分できているとはいえない。みなさんに納得していただき、いろいろな問題の話し合いが進められるよう尽力したい」。今夏に参院選を控える富岡氏にとって長野原町も大事な選挙区。高山町長にとって、富岡氏は携帯電話で話せる貴重な政権与党とのパイプ役だ。
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 民主党県連は昨年11月、地元の猛反発を受けた。水没予定地の住民が移転する2カ所の代替地の間に架ける予定の橋の建設凍結を、前原誠司国土交通相に提言したからだ。国交省が2月に実施した意向調査でも、水没予定地に住む66世帯の大半が、今も移転を望んでいる。
 前原国交相のダム中止表明から半年以上たった今も、地元と政権与党との距離は遠い。
 「普天間とここは同じだよ」。中止か建設か、政府の方針に気をもみ続ける現状に、米軍基地の移転問題を重ね合わせて水没予定地区の70代の男性は嘆く。

 昨夏の総選挙で、比例区を含め群馬県では民主党の衆参両院議員は7人になり、5人の自民党を逆転した。だが、民主党は総選挙で長野原町を含む群馬5区に候補者を擁立しなかった。今回の町長選でも、民主党は候補擁立の検討すらしなかった。

今夏の参院選で群馬選挙区は改選数が2から1に削減される。富岡氏と自民党の中曽根弘文参院議員の現職2人が立候補を予定している。今月、県内では8市町村で首長選があるが、参院選の前哨戦とはほど遠い状況だ。現職2人は自民党の推薦を受けたが、民主党県連はすべての選挙で自主投票。昨夏の熱気は冷め、県内で民主党の存在感は薄い。
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 「民主党は地元の意見を聞かないと言われる。意見を聞けば住民の反発する気持ちもほぐれるかもしれない」。今月12日、民主党を中心とする利根川下流域の6都県の都議、県議約20人が、水没予定地を一軒ずつ訪ねた。

 「民主党の……」と名乗っただけで玄関を閉ざした家もあったが、お茶を出してくれる家もあった。民主系の埼玉の県議は「地元にとって大切なのはダムよりも生活再建」との認識を強くしたという。

 だが、その生活再建にも波風が立つ。今月初め、国交省は八ツ場ダム関連で計上した154億円の今年度予算の使い道を地元住民に説明した。代替地や付け替え道路の整備に84億円、住民に最も大事な用地補償費は45億円だった。「不足するかもしれない」との説明には怒号が飛んだ。「誰だって早く移転したいんだよ」「のろいこと言ってどうにもなんねえ」

 全戸移転に必要な額は150億円前後。今後の見通しを、国交省はまだ説明していない。(菅野雄介、石田裕貴夫)

(写真)高山欣也町長(左)の前であいさつする民主党の富岡由紀夫参院議員=13日、群馬県長野原町
 

◆2010年4月18日 NHKオンラインより転載
ー東吾妻町長に新人の中沢氏ー
http://www.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1006407561.html

 任期満了に伴う東吾妻町の町長選挙は18日、投票が行われ、無所属で新人の中沢恒喜氏(59)が現職を破って初当選を果たしました。
 東吾妻町長選挙の開票結果は次の通りです。
▼中沢恒喜。無所属・新。
 当選。 5623票。
▼茂木伸一。無所属・現。
     4659票。

 新人の中沢氏が現職の茂木氏を破って初当選を果たしました。投票率は76、1%でした。中沢氏は59歳。地元でコンクリート製品の製造販売業を営むとともに、吾妻森林組合の組合長をつとめています。中沢氏は今後の抱負について「魅力ある町づくりをするために地場産業を活性化させていきたい」と話しています。

◆2010年4月19日 読売新聞群馬版より転載
ー東吾妻町長選に中沢氏初当選ー
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100419-OYT8T00159.htm

 現職の茂木氏破る
 東吾妻町長選は18日、投開票され、新人で吾妻森林組合長の中沢恒喜氏(59)(無所属)が、現職の茂木伸一氏(60)(同)を破り、初当選を果たした。投票率は76・10%。当日有権者数は1万3667人。

 当選を決めた中沢氏は「今までの町政の混乱は、町民につらいものだったと思う。『和の町政』を進める」と述べた。選挙戦では町長の給料30%カットや幼稚園、小中学校の給食費無料化などを公約に掲げた。

 茂木氏は、財政健全化などの実績をアピールし、行政サービスの向上などを掲げたが、及ばなかった。