八ッ場ダム推進で自民攻勢

 自民党は八ッ場ダムの推進姿勢をアピールすることが世論の支持を受けると自信を持っているようです。八ッ場ダムへの関心が薄くなった今、関連記事は地方版にしか載らない傾向がありますが、参院選を意識したこうした情報は、全国版に掲載される価値があると思います。
 八ッ場ダム事業を受注している会社の実質的なオーナーである自民党県連会長は、「鳩山首相には学べば学ぶほど八ッ場ダムは必要だと言っていただきたい」とインタビューに答えていますが、「学べば学ぶほど、八ッ場ダムを推進する責任は重い」のではないでしょうか?

◆2010年5月7日 朝日新聞群馬版より転載
ー「ダム推進」自民攻勢ー
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000431005070001

 八ツ場ダムの建設中止を鳩山政権が表明後、混乱の象徴のようになった湖面1号橋。その工事が本格的に始まる場に、民主党関係者の姿はなかった。6日、長野原町川原湯で開かれた橋脚建設工事の安全祈願祭。出席した自民党議員らからは、八ツ場ダム推進を旗印に参院選へ攻勢をかけるかのような発言が相次いだ。(菅野雄介、石田裕貴夫)

 「コンクリートより人、とおっしゃるが、必要な公共事業はある」。自民党県連会長で今夏に改選を控えた中曽根弘文参院議員は、大沢正明知事と高山欣也町長に続いて立ったあいさつで、民主党との違いを前面に出した。

 「県選出の一部の国会議員の方々から1号橋の建設反対ということを表明されたことは大変残念。私たち自民党は、ダムの建設中止撤回に向けて、県や皆さんと共に今後も活動を続ける」

 前原誠司国土交通相に対し、民主党県連の国会議員7人は昨年11月に1号橋の建設凍結などを提言。12月には民主党県連が1号橋の橋脚工事の入札中止を要望した。

 国交相も見直しを示唆する一方、今年2月に実施した川原畑、川原湯両地区の住民への意向調査を踏まえ、1号橋建設継続を決めた。こんな経緯から、地元側の民主党国会議員への反発は根強い。

 自民党県連幹事長を務める地元吾妻郡選出の南波和憲県議も、あいさつで二の矢を放った。「沖縄・普天間の米軍基地移設問題で『学べば学ぶほど海兵隊は必要だ』と言われたそうだが、ぜひ鳩山首相には『学べば学ぶほど八ツ場ダムは必要だ』と言っていただきたい」と皮肉った。

 鳩山首相が来県した4月24日、JR高崎駅前で開かれた八ツ場ダム推進議連の街頭演説で自民党県議団は、ダム建設中止の撤回と、そのための中曽根氏の再選を訴えた。約2週間前の空気が、そのまま地元に持ち込まれた。

 安全祈願祭には、民主党からも県連会長の富岡由紀夫参院議員が顔を見せるはずだった。参院選で中曽根氏と1議席を争う。4月に高山町長が再選を決めた際には祝いに現れた富岡氏だったが、この日は「副幹事長として党本部の会合に急に呼ばれた」として欠席した。富岡氏の事務所は「欠席に他意はない」と話す。

 同様に欠席した自民党の小渕優子衆院議員や山本一太参院議員が代理を立て、祝電も打った一方で、富岡氏からは代理も祝電もなし。だが、出席者には目立って批判的な反応はなかった。

 富岡氏は地元事情を比較的わかっているが、ほかの一部の民主党議員が富岡氏の言うことを聞かない。地元ではそう信じられているからだ。

 式典の中で「県出身の国会議員の一部が1号橋は不要だと大臣に陳情した」と民主党国会議員団を暗に批判した大沢知事も式典後、記者団に富岡氏の欠席を問われ「中止問題の前から八ツ場に入っている唯一の民主党国会議員だと思っている。彼にはそれだけの思いがあるのではないか」と話した。

 一方、地元には「また八ツ場ダムを政争の具にされたくない」との思いもある。ダム建設反対闘争が続いた60年代半ばから80年代半ばにかけ、反対派は中曽根康弘氏を、条件付き賛成派は福田赳夫氏を頼り、ダム問題が2人の大物議員の対立の象徴のようになった経験がある。

 この日の高山町長のあいさつは、ダム建設推進を改めて訴えたものの、民主党を批判する言葉はなかった。

ー「一筋の光明」と長野原町長ー
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581005070001

八ツ場ダムの地元、長野原町で6日、ダム湖にかかる「湖面1号橋」の橋脚建設工事の安全祈願祭があった。前原誠司国土交通相が一度は見直しを示唆した事業だけに、高山欣也町長は「ダム本体(建設)の先行きが不透明ななか、一筋の光明を見いだした思いがする」と話した。

 1号橋はダム湖にかかる3本の橋のうち、いちばん下流側にできる。水没予定の川原湯、川原畑両地区の移転代替地を結ぶ県道の一部で、長さ494メートル。事業費約52億円の96%は国が負担し、事業は県が担う。2014年3月の完成を見込んでいる。

 1号橋に注目が集まったのは昨年11月。民主党県連の国会議員が前原国交相に、1号橋の建設凍結を含む生活再建案を提言。地元が反発するなか、12月には同党県連が工事入札の中止を要望。国交相も見直しを示唆する一方、今年2月に実施した両地区の住民の意向調査を踏まえて、工事の継続を決めた。

 川原湯地区ダム対策委員長の樋田洋二さん(63)は「水没予定地区の生活再建事業が一歩前進した。これで弾みをつけてダム本体の建設へ向かいたい」と話した。

 湖面3号橋はすでに完成し、2号橋もほぼ完成に近づいている。いずれも今年度中に開通する見通し。

◆2010年5月7日 読売新聞群馬版より転載
ー中曽根氏、民主対応を批判 富岡氏は欠席 「湖面1号橋」で安全祈願祭ー
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20100507-OYT8T00059.htm?from=nwlb

 安全祈願祭を見守る中曽根参院議員(右端)ら。富岡参院議員に用意された席(手前)は空席だった(6日、長野原町川原湯で) 八ッ場ダム建設予定地の長野原町で6日、水没地区の住民の移転先となる代替地同士を結ぶ「湖面1号橋」(全長494メートル)橋脚工事の安全祈願祭が行われた。今夏の参院選で群馬選挙区から立候補予定の現職2氏のうち中曽根弘文元外相(自民)は出席したが、富岡由紀夫参院議員(民主)は東京で会合が入り“ドタキャン”。ダム本体の建設を巡って対立する民主、自民の「呉越同舟」の場面こそなかったが、中曽根氏らが民主党の対応を批判するなど、八ッ場ダムが選挙の争点の一つとしてクローズアップされてきた。

 祈願祭には、工事発注者の大沢知事、高山欣也長野原町長、地元住民ら約80人が出席。小渕優子衆院議員、山本一太参院議員は秘書が代理出席して祝電を送ったが、富岡氏に用意されたイスは空席で祝電も無かった。

 来賓としてマイクを握った中曽根氏は、先月24日の鳩山首相来県について「八ッ場ダムは、住民の長年の念願で、洪水リスクを軽減する大事なプロジェクト。(首相が)訪問しなかったことは大変遺憾だ」と批判。さらに、民主党県連所属の国会議員が昨年11月、前原国土交通相に、1号橋の橋脚工事の入札凍結を要望したことについて、「大変残念だ。自民党は建設中止撤回を求めて今後も活動を続けていく」と述べ、民主党との違いを強調した。

 南波和憲・自民党県連幹事長は、米軍普天間飛行場移設問題を挙げて、「(鳩山首相は)『学べば学ぶほど海兵隊が必要だ』と言ったが、『学べば学ぶほど八ッ場ダムの必要性は高まっている』と言ってほしい」と皮肉を込めて援護射撃した。

 終了後、中曽根氏は記者団の取材に「反対しているのだから、(富岡氏は)来られるわけがない。八ッ場ダムは普天間問題と同じで、住民と国との約束。参院選で民主党が大敗し、政策を変えればいい」と、余裕たっぷりの様子で語った。

 富岡氏は、所属する参院決算委員会の会合に出席するため欠席したが、秘書によると、5日夜に会合開催の連絡があったという。

 富岡氏は、昨年9月以降、高山町長や水没地区の住民と面会するなど建設推進派とも関係を構築。4月に無投票再選を果たした高山町長の祝勝会にも駆け付けるなど、地元に配慮する姿勢を示している。

 大沢知事は、安全祈願祭では民主党県連の要望活動を批判していたが、終了後、富岡氏の欠席については「(富岡氏は)民主党の中では、八ッ場に入っている唯一の国会議員で(実情を)一番理解している。用事が出来たのだろう」と語る気遣いも見せた。

 一方、地元住民は複雑な思いで、八ッ場ダムの争点化を見つめている。

 川原畑地区ダム対策委員長の野口貞夫さん(66)は「ダム推進は、参院選の判断基準になるが、富岡さんは、地元のことを考えれば微妙な立場なのだろう」と語る。