前原国交相、利根川水防演習に参加

 前原国交大臣がこのほど参加した利根川水系連合水防演習は、1947年に利根川流域を襲ったカスリーン台風の大水害を教訓に、八ッ場ダム計画が発表された1952年以来、毎年開催されてきました。今回開催地となった群馬県邑楽郡板倉町は、利根川とその支流の渡良瀬川に挟まれ、過去たびたび水害が襲った地域です。
 八ッ場ダム予定地で住民による激しい反対闘争が展開されていた1970年、この水防演習が同じ群馬県邑楽郡の千代田町で開催されました。水防演習に参加した根本龍太郎建設大臣、川崎精一河川局長らが八ッ場ダムについて語った言葉を当時の新聞は次のように報じています。
 「八ッ場ダムは予定通り今秋着工、1975年までに完成させたい。なるべく早い時期に水没住民の生活再建計画を明らかにして協力を求める。ただ、“過剰補償”だけはするつもりはない。今のところ現地に行く予定はない」
                                               (上毛新聞、読売新聞)

 今回、前原大臣は「参院選マニフェストに八ッ場ダム明記を」と語りました。40年前、大臣も河川部長も八ッ場ダム問題を理解していませんでした。長年の経過で、解決が当時より遥かに困難になった自民党政権の失策のツケをどう解決するかー民主党政権にとって大きな試練です。

◆2010年5月15日 時事通信より転載
 -川辺川、八ツ場ダムは現状明記=参院選公約に-前原国交相ー
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010051500230

 前原誠司国土交通相は15日、昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で、事業中止を明記した川辺川ダム(熊本県相良村)と八ツ場ダム(群馬県長野原町)について、参院選マニフェストでは「現状の記載を(党に)求めていきたい」との認識を示した。群馬県板倉町で開かれた国や地元自治体などによる利根川水系の水防演習に出席後、記者団に述べた。
 川辺川ダムは、蒲島郁夫熊本県知事が建設反対を表明し、国交省と県、関係市町村がダムによらない治水対策を協議している。八ツ場ダムについては、同相が本体工事の中止を打ち出し、現在、同省の有識者会議で事業の再検証を進めている。

◆東京新聞群馬版 2010年5月16日
 -八ッ場ダム問題 意見の相違解消せず 大沢知事と前原国交相ー
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100516/CK2010051602000128.html

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)建設の是非をめぐって対立する前原誠司国土交通相と大沢正明知事が十五日、板倉町の利根川河川敷で実施された「利根川水系連合水防演習」に出席し、水防訓練や人命救助訓練などを視察した。演習終了後、八ッ場ダム問題について意見交換したが、両者の考えの相違が解消されることはなかった。 (中根政人)

 水防演習は、八ッ場ダム建設の根拠となった一九四七年のカスリーン台風による水害発生を教訓に五二年から開始され、今回が五十九回目。会場では、堤防の漏水や越水を防止するための土のう積みの訓練や、川に取り残された人をヘリコプターで救助する訓練などが展開された。

 演習の開会式では、前原国交相と大沢知事がともにあいさつしたが、全面解決の道筋が見えない八ッ場ダム問題の現状に配慮してか、同ダムの話題には直接言及しなかった。

 だが、地元首長としてあいさつした板倉町の栗原実町長は「(治水の面で)八ッ場ダムを本当に必要としているのは、われわれや下流域の自治体だ。前原国交相には、ダム問題への慎重な対応を求めたい」と発言。鳩山政権のダム中止方針を痛烈に批判した。

 演習の終了後、前原国交相と大沢知事は、館林市内の飲食店で昼食をとりながら懇談した。内容について、大沢知事は「ダムの是非を予断なく検証してほしいと伝えた。(中止か継続か)白紙の状態で問題に臨んでくれると思う」と説明。ダム建設を求める地元の意向を最大限尊重するよう求めた。

 だが、懇談に先立ち演習会場で記者団に対応した前原国交相は「検証はするが、ダム中止の方向は変わらない」と断言。「民主党の参院選マニフェストでは、八ッ場ダム問題について、鳩山政権の現状の取り組みを反映した内容を盛り込むよう提案していく」と述べ、ダム中止方針を徹底する考えを強調した。

(写真)演習を視察する前原国交相(左)と大沢知事。八ッ場ダム問題をめぐる意見の溝は埋まらないままだ=板倉町で

◆朝日新聞群馬版 2010年5月17日
ー国交相・知事 利根川水系連合水防演習参加ー
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581005170001
 八ツ場ダムの中止問題に絡み、前原誠司国土交通相が設けた有識者会議で新たな治水の考え方が議論される中、利根川水系連合水防演習が15日、板倉町で開かれた。共に参加した前原国交相と大沢正明知事は演習後も上機嫌で会食したが、2人の言動からは、ダム問題をめぐる認識の違いが改めて浮き彫りになった。

 「利根川水系連合水防演習」(国交省、群馬など7都県など主催)が15日、板倉町の利根川河川敷であり、約1千人が参加した。出水期を前に、水防技術の向上を図ることなどが目的で、59回目。

 演習は、利根川上流域の大雨で、同町で水害のおそれがあるとの想定で行われた。流域自治体の消防団員らが、漏水など堤防の被災に対応するさまざまな工法の訓練を行った。自主防災への意識を高めようと、土嚢(ど・のう)づくりには住民も参加した。

 中央防災会議の専門調査会が08年に公表した利根川決壊時の被害想定では、最悪のケースが重なれば、板倉町だけで5千人を超す死者が出る可能性がある、としている。
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 「有識者会議で検証作業はしているが、ダム中止の方向性は変わらない」――。水防演習後、記者団に囲まれた前原国交相は重ねて強調した。

 演習は、八ツ場ダム計画が地元長野原町に伝えられたのと同じ1952年に始まった。ともに、47年に起きたカスリーン台風がきっかけ。この台風では、関東地方で約1100人が亡くなった。うち県内は592人を占め、現在の板倉町域でも4人が犠牲になっている。

 栗原実町長は演習で「歴史を考えると、現在問題となっている八ツ場ダムの必要性を訴える当事者は、私ども下流域の町民だ。ぜひ慎重な対応をお願いする」と訴えた。

 治水対策は、八ツ場ダム推進の大きな論拠となっている。しかし前原国交相は「どんな治水対策をしていくか、有識者会議で新たな評価軸を検討している」と説明。この演習の性格については「(治水対策という)人間の能力を超えた災害がやってくる可能性もある。水防訓練を積み重ねることで、そうした時に対応していただきたい」と述べた。

 一方、演習後に館林市内で前原国交相との会食を終えた大沢知事は記者団に「(改めて確認したところ)有識者会議の委員にもダム反対論の人は入れておらず、中止ありきの偏った考えでなく、白紙の状態で検討すると大臣は言っていた」と強調、中止撤回への期待感をにじませ、認識の違いを見せた。

 有識者会議は今夏に中間報告を取りまとめる予定で、その後に個別ダムの検証をすることになっている。