群馬の参院選

2010年5月25日 毎日新聞群馬版より転載

ー票流第2幕:’10参院選ぐんま/上 八ッ場ダム中止 富岡氏、争点化疑問 /群馬ー
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20100525ddlk10010176000c.html

 ◇中曽根氏は批判材料に

 「私は必ず八ッ場ダム問題を解決できると思っている」。4月10日、民主現職の富岡由紀夫氏は前橋市内で開かれた国政報告会で熱を込めた。演説では、昨夏の衆院選直後、民主党がダム中止のマニフェストを掲げ大勝したことを受け、長野原町に1週間通ったエピソードを紹介した。

 地元住民の話に耳を傾けると、<ダムができると水がたまる。貸しボート屋ができて、レンタサイクル店や道の駅、野菜の直売所もできる>
 住民の多くが湖を核とした雇用の確保を思い描いていたことを理解した。中止になれば、ダム完成後の交付金などを当て込んでいた町財政も立ち行かなくなることを改めて認識したという。

 富岡氏が示す解決策は「雇用保障」と「自治体への財政支援」の2本柱。しかし、どのように雇用を創出し、財政支援を具体化するか、そのスキームを民主党はまだ明示していない。富岡氏の陣営幹部は「前回の衆院選ですでに争点となっており、ある意味終わった話だ。ダム建設を再び争点にすると、また住民が振り回される。ダムの是非をいたずらに争点とするより、住民がどうしたいのかを一番に考え、生活再建を焦点とすべきだ」と群馬選挙区での争点化に疑問を呈する。

 一方の自民現職の中曽根弘文氏。地元住民と国との関係がこじれた八ッ場ダム問題は、民主党批判を展開する格好の材料となっている。
 「今、日米関係は最悪の状況。普天間や八ッ場ダム、景気回復の問題。どれ一つとしてまともな解決策が見いだされない。マニフェストがころころと軌道修正されている状況です」。参院選に向けた4月24日の事務所開きでは、約1000人の支持者を前にボルテージを上げた。

 中曽根氏の陣営幹部は、ダム問題を選挙戦で訴えることについて「民主が八ッ場ダムを全国の公共工事の是非を巡るシンボルとしてしまった以上、ダム推進を主張するこちらとしては、有権者にダム問題について訴えるのは当然だ」と、民主が昨夏の衆院選で打ち出した「一方的な中止方針」の問題性を訴える必要性を強調した。

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 今月6日、八ッ場ダムの水没予定地に架かる「湖面1号橋」の着工にあたり、安全祈願祭が行われた。中曽根氏はあいさつで「地域の洪水リスクを軽減し、水資源を確保する大事なプロジェクト」と強調した。

 しかし、ダム建設を巡っては「住民の納得を前提に中止」の富岡氏と、「継続」の中曽根氏の主張が真っ向から対立。毎日新聞が行った街頭アンケートの自由回答でも「中止が良いか悪いか、よく分からない」(前橋市の59歳女性)と答える人がいるなど、両氏の論戦がかみ合っていないことをうかがわせる。

 ダムの中止方針を支持する有権者も、その根拠については「計画発表からずいぶんたつのに工事が進まないということは、必要ないのではと感じるから」(前橋市の47歳女性)など漠然とした内容が多く、ダム推進派の一人も「下流域の安全のために不可欠かどうか分からない」(太田市の26歳男性)と述べた。

 街頭アンケートは、ダム建設予定地を離れた都市部に限ったせいか、回答者の多くは、ダム問題が参院選の投票行動の「判断基準にならない」と答え、日米関係や景気対策などを重視する声が上がった。

 ダムの必要性などを再検証する国の有識者会議のメンバーで、東京大公共政策大学院の森田朗教授(行政学)は「八ッ場ダムは公共事業のあり方を今後どのようにするのか、象徴的なケースだ。建設するかしないかは選挙の争点になりうるが、必要か不要かその根拠も示さないといけない」と話している。
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 参院選は6月24日公示、7月11日投開票の日程が有力視されている。政治とカネを巡る問題などが噴出し、政権交代が実現した昨夏の熱が冷めての「第2幕」。投票行動に揺れる有権者や業界団体の動きを追った。