八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

政治空白の選挙戦中にダム推進

2010年7月9日
 与党の苦戦が伝えられる参院選。各政党が選挙活動に追われている間にダム推進体制が着々と準備されつつあります。
 八ッ場ダムをはじめとする全国のダムの検証基準を議論する有識者会議は、ダムを推進してきた河川官僚が仕切っていることは当初から指摘されてきたことですが、この有識者会議はダム事業の見直しが実質的に殆ど不可能な中間報告のタタキ台を公表しました。
 市民団体では、こののタタキ台に大いに問題があるとして、前原大臣、有識者会議委員らに緊急提言を行ないましたが、こうした民の声は果たして政治に届くのでしょうか? 

◆2010年7月7日 東京新聞群馬版より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20100707/CK2010070702000113.html
ー公募委員で再検証を 八ッ場ダム問題 市民団体が提言書ー

八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の建設中止を求める市民団体「八ッ場あしたの会」などは六日、国が全国のダム事業の是非を最終判断するための再検証作業について「第三者機関で実施することが必要」などとする提言書を、前原誠司国土交通相あてに提出したと発表した。
 提言書は五日に提出した。治水対策に関する国の有識者会議は、八ッ場ダムなどの再検証基準の“たたき台案”をまとめている。この案について提言書では「検証作業の主体を国交省や都道府県などと定めているのは不適切。『ダム建設推進が妥当』との判断が出る可能性が極めて高くなる」と指摘。徹底的な情報公開を条件に、再検証を公募委員による第三者機関で行うことを求めた。
 さらに、工事継続の是非をめぐって問題となった八ッ場ダム関連事業の湖面1号橋建設などを例に、再検証が終了するまで、現場の工事を基本的に凍結することなども要望した。 (中根政人)

—記事転載終わり

 一方、ダム推進派は余裕の表情です。都県知事と地元の町長とそれを支える官僚体制ー利根川流域の住民も、地元の一般住民も蚊帳の外に置かれたままです。

◆2010年7月9日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581007090001
ー高山・長野原町長に聞くー

 八ツ場ダムの地元、長野原町の高山欣也町長がこのほど、ダムの建設事業費などを分担している下流6都県のうち東京、千葉、埼玉3都県知事を相次いで訪問し、「中止」撤回に向けた結束を確認しあった。この時期に動いた狙いや成果について、8日、町長に聞いた。(聞き手・石田裕貴夫)

 ――石原慎太郎・都知事、森田健作・千葉県知事、上田清司・埼玉県知事を訪問した狙いは何か。

 「全国のダムの必要性を再検証する国の有識者会議の中間報告が8月にも出るといわれている。我々は前原誠司国土交通相の『中止』宣言で脅され、びびったが、今度は我々がどうこう言う前に、八ツ場ダム事業の主体である下流都県の知事が中間報告を精査して、行動を起こしてほしいと、伝えてきた」

 ――仮に報告書が「中止」を追認する内容だったら。

 「本来ダムを必要としているのは下流都県だから、当然『許さない』ということになると思う。我々に気兼ねせずに怒り、騒いでほしい」

 ――前原国交相が八ツ場問題を有識者会議にゆだねて以来、町長はボールはむこう(国交相)側にあるとして静観の構えだった。

 「下流都県は治水・利水のために、我々は水没予定地区の生活再建のために、ダムがないと困る。目的は違うが、下流と地元が一つになっていることを確認することが国交相へのメッセージになる。もちろん、力を持っている知事にがんばってもらうのがいちばんだ」

 ――3人の知事の思いに温度差は。

 「知事には何度も会ったことがあるが、ありきたりのあいさつをしただけで、じっくり話したのは初めて。3都県の中でも埼玉県はせっぱ詰まっている印象だ。地下水のくみ上げで地盤沈下が進んでいるようだし、特に河川のはんらんを恐れている。八ツ場の必要性をもっとも痛感しているのではないか。県職員の名刺にも『八ツ場ダムが必要』と印刷してあった」

 ――下流都県行脚の目的は達したか。

 「3人の知事とは『がんばりましょう』と握手して別れたが、知事の話し方に『自分もがんばるから』という気持ちがこもっていた。八ツ場ダムの国との『共同事業者』であるという自覚というか、覚悟を強く感じた。正直言うと、私が予想していた以上だった」

 ――前原国交相にも直談判するつもりは。

 「国交相は『中止』を我々に言ってきたところからボタンを掛け違えた。中間報告は真っ先に下流都県に示すべきで、それがスジだ。もちろん『中止』撤回なら、最初に我々に伝えてくれればうれしい」