国交省、八ッ場ダム等の見直し基準公表

2010年7月14日
 昨日13日、国交省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の第11回会議が開かれ、八ッ場ダムをはじめとする全国のダムの見直しのための検証基準が公表されました。
 会議の配布資料は、国土交通省の下記ホームページに掲載されています。
 ↓
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010eca85086f44bd575ce95065a80dde5a9f0236b785.html

 関連記事を転載します。
 関連記事については、こちらでも取り上げています。↓
 https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=962
 「ダム検証基準についての朝日新聞と東京新聞の記事について」 

◆2010年7月13日 共同通信47ニュースより転載
http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010071301001023.html
ーコスト最重視で治水代替策 国交省、来夏にもダム是非判断ー

 国土交通省の有識者会議は13日、八ツ場ダム(群馬県)など全国84ダム事業を検証するための判断基準案をまとめた。ダム以外の治水対策として堤防のかさ上げや遊水地、放水路、雨水貯留施設など25の手法から選び、それを組み合わせて代替案を複数つくり、厳しい財政事情から「コスト」を最も重視して治水策を決めるとした。

 これを受け前原誠司国交相が今秋にも、直轄31事業は事業主体の国に、補助53事業は30道府県に検証を求める。国交相は各主体からの報告を基に事業の是非を判断するが、多くは来年夏の概算要求時期となりそうだ。

 また、25手法に含まれる土地利用規制や水害保険など、川のはんらんを前提にした対策には住民の反発も予想され、前原氏が提唱する「ダムに頼らない治水」がどこまで進むかは不透明だ。

 検証では、各事業主体が対象ダムの総事業費や工期など基礎データを点検。次にダム建設を前提とする河川整備計画と同等の安全度を備えた代替案を2~5案作成し、「コスト」「安全度」「実現性」「環境への影響」など8項目で評価。ダム計画とも比較した上で、コストを最重視して対応方針を決定し、国交相に報告する。

ーダム事業検証の判断基準案要旨ー
 
 国土交通省の有識者会議がまとめたダム事業検証の判断基準案要旨は次の通り。

 【事業の点検】
 国交相が事業主体の地方整備局(直轄事業)や道府県(補助事業)、水資源機構などに検証を指示または要請。基本計画作成から長期間経過したダムは、総事業費や工期、過去の洪水実績など事業計画の前提となっているデータを詳細に点検する。

 【治水対策案の立案】
 検証では、河川整備計画の目標と同程度の安全度を確保した複数の治水対策案を立案する。一つは検証対象のダムを含む案とし、その他にダム以外の方法による案を必ず作成する。以下を参考に幅広い方策を組み合わせて検討する。

 (1)ダムの有効活用(2)遊水地(3)放水路(4)河道の掘削(5)引堤(6)堤防のかさ上げ(7)河道内の樹木の伐採(8)決壊しない堤防(9)決壊しづらい堤防(10)高規格堤防(11)排水機場(12)雨水貯留施設(13)雨水浸透施設(14)遊水機能を有する土地の保全(15)部分的に低い堤防の存置(16)霞堤の存置(17)輪中堤(18)二線堤(19)樹林帯(20)宅地のかさ上げ、ピロティ建築(21)土地利用規制(22)水田の保全(23)森林の保全(24)洪水の予測、情報の提供(25)水害保険。

 【対策案の評価】
 極めて実現性が低かったり、コストが高い案などを除き2~5案程度に絞る。各案を(1)安全度(被害軽減効果)(2)コスト(3)実現性(4)持続性(5)柔軟性(6)地域社会への影響(7)環境への影響(8)流水の正常な機能の維持への影響―の8項目で評価する。多目的ダムは利水の観点からも検討する。

 検証は厳しい財政事情を背景にしており、一定の安全度確保を前提としてコストを最も重視する。コストは完成に要する費用だけでなく、維持管理費も含める。ダム中止に伴う費用もできるだけ明らかにする。

 【透明性の確保】
 検証の際には、透明性の確保を図るため、関係自治体で構成する「検討の場」を設置し、公開で審議するなど情報公開を行うとともに、主要な段階でパブリックコメントを実施する。また学識経験者や関係住民などの意見を聞く。

 【報告と国交相判断】
 事業主体は評価を踏まえ、事業を継続するか中止するかの対応方針と理由を国交相に報告する。国交相は、検証が手順に沿って行われたかどうか有識者会議の意見を聞いた上で、各事業の対応方針を決定する。検証が手順に沿っていない場合、国交相は事業主体に再検証を指示または要請する。

◆2010年7月13日 読売新聞政治面より転載
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100713-OYT1T00865.htm
ー32か所のダム再検証へ新基準案、意見募り決定ー

 前原国土交通相の私的諮問機関「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」は13日、国と水資源機構が全国で建設を進める32か所のダムを再検証する新基準の中間取りまとめ案を作成した。

 パブリックコメントを募って今夏に新基準を完成させた後、各地方整備局などが関係自治体を集めて「検討の場」を設置し、新基準に基づいて各ダムの必要性を再検証。ダム建設を継続するか中止するかを国交相に報告し、国交相が建設を中止するダムを最終的に決定する。

 前原国交相が建設中止を表明している八ッ場(やんば)ダム(群馬県)も再検証の対象だが、前原国交相は13日の閣議後記者会見で「中止の方向で考えている」と述べており、再検証結果にかかわらず建設を中止する方針。

 再検証の際には、各ダムごとに「ダムを含む治水案」と、遊水地や川幅の拡幅工事、堤防強化などを組み合わせた「ダム以外の方法による治水案」を立案。その上で、河川ごとの安全度を確保することを前提に、コストを最重視しながら、実現性や環境・地域への影響などについて総合的に評価。各ダムについて「継続」「中止」などの方針を作成して国交相に報告する。「中止」の場合は、ダム以外の方法による治水案も報告する。

 報告の締め切りはないが、建設中止になる可能性があるため、再検証中のダムには、進行中の工事を継続できる程度の予算しかつけない。検討の場は公開し、主要段階でパブリックコメントを募るほか、学識経験者や関係する住民、知事などの意見を聞く。

 道府県が事業主体となっている53か所の「補助ダム」についても、新基準で再検証するよう、国交相が各知事に要請する。

◆2010年7月14日 朝日新聞社会面より転載
http://www.asahi.com/national/update/0713/TKY201007130509.html
ーダム頼みの治水見直し、流域で対策を 有識者会議が提言ー
 
 ダムに頼ってきた治水のあり方の見直しを検討してきた国土交通省の有識者会議(座長=中川博次京大名誉教授)は13日、提言をまとめた。ダムありきではなく、それ以外の治水対策の組み合わせと、ダムを建設する場合とで安全性やコストを必ず比較。関係住民の意見も聴いて判断する。水没する上流の山村だけに犠牲を強いるのではなく、下流域の都市住民も含めた流域全体で治水対策を分担する手法で、従来の考え方を抜本的に見直す。

 前原誠司国交相は本体工事着工前の全国84カ所のダムに、この手法を当てはめる考え。31のダム事業を抱える国と水資源機構、53の補助ダム事業を抱える30道府県は、どちらがコストや環境への負荷を抑えられるか比較し、ダム中止か継続かを決める。

 これまでの治水の考えでは、洪水時の下流域での被害を防ぐため、上流にダムを建設してきた。有識者会議は、水没する犠牲への合意を得るため事業の長期化と建設費の増大を招いたと指摘。人口減少や厳しい財政状況をふまえた新たな治水理念として「流域全体での分担」を挙げた。

 ダム以外の治水対策として有識者会議は25の具体例を提示した。下流域の住宅地の道路を堤防並みにかさ上げする「二線堤(にせんてい)」▽集落を堤で輪のように取り囲む「輪中堤(わじゅうてい)」▽完成したダムのかさ上げ――など。25の手法の効果には差があり、川沿いの土地の利用規制など住民の反発を招きそうな対策もある。

 国と道府県はまず、これらを組み合わせた「ダムによらない治水対策」を9月から立案する。作業は必ず公開され、流域住民や学者、市町村長らの意見を聴く。その上でコストや安全度、環境や地域社会への影響など八つの評価軸をもとに分析。ダム継続か中止かの方針を決める。

 今回のダム見直しの発端が国の財政難にあることを踏まえ、コストを最重視する。一方で、ダムの代案は、それぞれの川でここ20~30年内に達成を目指していた治水安全度と同レベルの安全性を確保するのが条件。補助ダムを抱える道府県の多くは事業継続を求めていることから、検証が十分かどうかを国交相が判断する。検証作業の結果、ダムの方が有効との結論ならばダム建設を認める。

 政権交代の象徴となった八ツ場(やんば)ダム(群馬県)のある利根川水系は、霞ケ浦導水(茨城県)や南摩ダム(栃木県)など全国最多の6事業が対象になるため、水系全体での代案づくりは長期化が予想される。(歌野清一郎)

◆2010年7月14日 NHKニュースより転載
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100714/t10015718881000.html
ーダム事業に初のガイドラインー

 前原国土交通大臣が建設中止の方針を示している群馬県の八ッ場ダムなど、全国各地のダム事業がほんとうに必要かどうかを判断するためのガイドラインが、初めてまとまりました。この中ではダム以外の治水対策を考え、ダムを造る場合とコストを最も重視して比較するとしています。

 このガイドラインは、「できるだけダムに頼らずに治水を行う」という政策転換を受け、去年12月に前原国土交通大臣が設けた有識者会議が、13日夜に公表したものです。全国84のダム事業がほんとうに必要かどうかを判断するための手順を、初めてまとめました。それによりますと、ダム事業の見直しは、これまでダムの計画を進めてきた国の出先機関や都道府県が、みずから行います。そして、堤防の強化や遊水池の整備、川底を深くして水をあふれにくくするなど、ダムに代わる治水対策を必ず複数考えます。そのうえで、それぞれ治水対策とダムを造った場合を、治水の効果やコスト、地域社会や環境への影響など8つの観点で比較します。判断にあたっては、財政難のため、一定の治水効果を前提に、建設費だけでなく維持管理費も含めたコストを最も重視するとしています。国土交通省は、これから一般の人からの意見を聞いたうえで、来月末にもダムの必要性を判断するためのガイドラインを正式にまとめ、地方に検討を要請することにしています。今回示されたガイドラインについて、河川行政に詳しい関西大学の河田惠昭教授は「専門家が密室で検討して結論を出すのではなくて、治水対策の検討をこういう形でやりますよという評価軸をきちっと示していることは評価できる」と話しています。その一方で、河田教授は、ダム事業の見直しを地方がみずから検討することの難しさについて、「自治体は今まで検討をした経験がなく、下流側と上流側、右岸側と左岸側は利害が対立するので、調整ルールを作る必要がある。それに多くの時間がかかるのではないか」と指摘しています。一方、ダムの見直しを求めている市民団体でつくる水源開発問題全国連絡会は「ダムの見直しを検討するのが、これまでダム事業を推進してきた地方にある国の出先機関や都道府県であるのは問題だ。結局、ダムが必要だという結論になるおそれがある。ダムの見直しは、住民も参加した第三者機関によって行われるべきだ」とコメントしています。ところで、今回のガイドラインが正式にまとまれば、それぞれの地方でダムの必要性を判断する検討が始まり、その結果は国土交通省に報告されます。これに関して13日夜に記者会見した国土交通省の津川政務官は、ダムによって規模や地域の事情が異なることから、地方の検討会が結論を出す期限は設けないと述べました。検討には長い時間がかかる可能性があり、群馬県の八ッ場ダムなど一刻も早い結論を求めている地元の住民に波紋が広がりそうです。