代替地の安全性

2010年11月3日
 
 国土交通省は昨日、八ッ場ダム事業の一環である川原湯温泉の移転代替地(打越地区)の造成について、安全計算にミスがあったことを記者発表しました。

 国土交通省の記者発表資料は、国土交通省八ッ場ダム工事事務所のホームページに掲載されています。↓
http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/kisya/h22/h221102.pdf

 代替地の安全性の問題については、今回の記者発表は氷山の一角と考えざるをえない状況にあります。関連記事を転載します。

◆しんぶん赤旗 2010年10月28日
ー地すべり調査ずさん 国交省 八ッ場ダム 住民移転先ー

 群馬県の八ッ場ダム計画で、国土交通省が地すべりの危険性を知るのに欠かせない地下水の水位をずさんな方法で調査していたことが27日までに、NGO「八ッ場あしたの会」が入手した同省の文書でわかりました。この調査方法では、地下水の過小評価につながるため研究者からは「ありえない調査」と批判があがっています。(矢野昌弘)

 雨量ゼロ日「地下水なし」

 問題点が指摘されているのは、国交省八ッ場ダム工事事務所が行った代替地の安全性調査です。
 代替地は、水没予定の6地区住民の移転先として、近隣の標高が高い場所を造成し、つくられました。山の尾根を削り、谷や沢を埋め立て、盛土の高さが30㍍にもなる場所があります。代替地には、すでに住民の移転がはじまっています。
 今回の調査は、代替地が「造成宅地防災区域」に該当するか、判断材料となるものです。「宅地造成等規正法」では、同区域に指定されると、県知事は事業者の国に改善を勧告できます。
 8月末に群馬県に報告した調査結果では、12地点のうち9地点で、盛土の内部に地下水が浸入した「可能性無し」としていました。
 地下水の水位(図参照)は地すべりの危険性をはかる重要な材料です。地下水位の上昇で浮力が働き、地すべりを抑える摩擦力が減り、滑りやすくなるためです。
 ところがその後、調査の実態がわかりました。
 国交省が出した別の文書によると、調査にかけた時間はわずか2日。さらに「調査方法」は「盛土の土羽(どは=のり面のこと)や盛土前面に設置した擁壁の水抜き管から、水のしみ出しが有るか否か、目視により確認した」というおざなりなものでした。
 現地調査をしたある地盤地質の研究者は「降雨後の水位を調べるべきだし、山側の水位が高い可能性もあるから、ふつうは観測用井戸を掘って調査すべきことだ。これだけの盛土をしたのだから、慎重に調べるべきで、擁壁から出た水だけで判断するのはおかしい」と驚きます。
 さらに調査した7月7日と9月7日は、晴天が続いた時期です。とくに9月7日は、雨量データでは、当日まで7日間「雨量ゼロ」。地下水が出にくい”好条件”でした。
 同ダム工事事務所は「この方法で大丈夫だと認識している。この方法がいいいか悪いかの判断は県がやること。井戸を掘ると工事費がかかるので、目視でやらせていただいた。コストがかからない普通の方法と認識している」と答えています。

 ありえない方法  奥西一夫・京都大学名誉教授
 代替地として造成したところには「土石流危険渓流」を埋めた場所がいくつもあります。最近の地震災害の事例では、谷を埋めた盛土が地すべりを起しており、その経験を生かした工事になっていません。法的に問題がないとしても、技術的には大変危険な工事だと思います。
 雨が降る以上、地下水があるのは当然です。「地下水の深さはどれぐらいになるか」という観点で調査するのが当然です。
 地下水を調べる方法はたくさんありますが、こんな調べ方は見たことがありません。
 代替地の地盤のもろさがひどすぎて、こういう調査で、都合がいい日を狙って調べたと思われても仕方ないと思います。

◆朝日新聞社会面 2010年11月2日
http://www.asahi.com/national/update/1102/TKY201011020452.html

ー八ツ場移転代替地、大地震で崩落の恐れ 耐震計算ミスー

 八ツ場(やんば)ダム(群馬県)の水没予定地の住民たちの移転先となる代替地の一部が、阪神大震災や新潟県中越地震級の揺れで崩落する恐れがあることがわかった。造成した国土交通省が「耐震性の計算を誤った」と2日、発表した。危険個所に住宅は建っていないが、地盤補強の追加工事でさらに数千万円が必要という。

 国交省が崩落の危険があると判断したのは「打越代替地」の一部。温泉街のある川原湯地区の住民の移転先だ。谷を埋めて造成した斜面の盛り土部分の耐震性を計算した結果、震度6~7の大地震に耐える安全度の基準を下回った。

 中越地震を受けて改正された宅地造成等規制法では、高台に造成した宅地の地盤が地震で崩落しないよう、盛り土の量や斜面の角度、地質などを計算し、耐震強度を確保することを求めている。群馬県が昨年2月、代替地を造成した国交省に対し、正しく計算したのか回答を求めていた。

 国交省は今年8月、業務を受注したコンサルタント会社の計算結果をもとに「大地震でも問題はない」と回答。しかし、この業者が業務の報告書を取りまとめるために再び計算したところ、地質の数値を誤って計算していたことが判明したという。

 打越代替地には9月末時点で14世帯が移転済みで、温泉街の共同浴場や旅館なども移転を予定している。問題となった斜面は一部が家庭菜園になっているが、住宅はない。しかし、県道が造成されることになっている。国交省は今後、耐震性を確保するため斜面を補強する。
 同省八ツ場ダム工事事務所の佐々木淑充所長は「ご迷惑をおかけし、申し訳ない」と話している。(菅野雄介)

◆2010年11月2日 読売新聞社会面より転載
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101102-OYT1T01118.htm?from=navr

ー八ッ場ダム、住民移転の代替地に斜面崩壊の危険ー

 国土交通省八ッ場(やんば)ダム工事事務所(群馬県長野原町)は2日、ダム建設事業で水没予定地の住民が移転する代替地の盛り土部分について、大規模地震時に斜面が崩壊する危険があると発表した。

 危険が発覚したのは、川原湯温泉街が移転する「打越代替地」。9月末現在、14戸が移転しているが、盛り土部分に住宅は建っておらず、対策工事も半年以内で終わるという。

 造成は1999年に開始。県は2009年2月、盛り土部分が、造成開始後の06年に施行された改正宅地造成等規制法で安全対策が必要な「造成宅地防災区域」に該当するかどうか判定するため、同事務所に調査を依頼。同事務所は今年8月、基準値を満たしていると県に報告したが、業務を請け負った建設コンサルタントが10月中旬、「計算ミスがあった」と連絡。再計算で基準値を下回っていることが判明した。

◆2010年11月2日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/today/news/20101103k0000m040049000c.html

ー八ッ場ダム:移転代替地に土砂崩れの危険ー

 民主党政権が建設中止を打ち出している八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)問題を巡り、国土交通省八ッ場ダム工事事務所は2日、水没予定地の住民が移転する代替地の一部で、大規模な地震が起きた場合、土砂崩れが起きる危険性があると発表した。この場所に家屋はないが、家庭菜園があるほか、県道の一部が通っているという。

 移転代替地は、斜面に盛り土して整備しているため、土砂崩れの危険性を指摘する声が以前からあったが、同事務所は今年8月「安全性に問題はない」との調査結果を発表していた。

 ところが発表後、データの入力ミスが発覚。計算し直した結果、調査した4地区のうち1地区では「安全率」の最低値が基準の1.0を下回り「斜面崩壊の危険がある」とされる0.989になる部分があった。補強工事で安全を確保できるとしている。【鳥井真平】

◆2010年11月3日 上毛新聞一面より転載
ー八ッ場で国交省 耐震計算に入力ミス 打越代替地盛り土 大地震で崩壊懸念ー

 八ッ場ダム問題で、国土交通省八ッ場ダム工事事務所は2日、長野原町の川原湯地区の住民が移転する打越代替地の盛り土の安定計算に入力ミスがあったと発表した。一部で大規模地震時の耐震性が法律の安全基準を下回り、盛り土が崩壊する恐れがあるという。今月中に補強工事を始め、安全性を高める。
 同事務所によると、安定計算に誤りがあったのは「湖面一号橋」近くの大規模な盛り土。県道川原畑大戸線や地区公園の建設が予定されている。実際に住民が移り住むのは山を削って造成した隣接地のため、崩壊の恐れはないという。
 安定計算は盛り土が斜面を滑り出す力(起動力)と、それを摩擦などで抑える力(抵抗力)を比較し、平常時と大規模地震時の崩壊の危険性を確認する手法。同事務所は8月末に「問題がない」とする計算結果を県に提出していた。
 だが、委託先の業者が再点検したところ、地層のデータを誤入力していたことが判明した。再計算の結果、阪神大震災級の地震発生時に起動力が抵抗力を上回ることが分かった。
 同事務所は2日、県に計算結果の修正と補強工事の実施を報告。県庁で記者会見した佐々木淑光所長は「関係者の皆さん、地元の方々に大変な迷惑と不安をかけたことをおわびします」と陳謝した。

◆2010年11月3日  読売新聞群馬版より転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20101103-OYT8T00131.htm

ー国の不手際 住民不満……八ッ場盛り土 計算ミス見抜けずー

 八ッ場ダム(長野原町)水没予定地の川原湯温泉街が移転する「打越代替地」の盛り土を巡り、国土交通省八ッ場ダム工事事務所は2日、大規模地震時の斜面崩壊の危険性を公表した。同事務所は、対策工事で危険は解消されると強調するが、安全性を確認する際の計算ミスが発覚しなければ、対策もとられなかっただけに、住民からは国の不手際に不満の声が上がった。

 同事務所によると、山の斜面を削る「切り土」による造成に対し、斜面に土をかぶせる「盛り土」は不安定という。打越代替地に占める盛り土部分の割合はわずかで、住宅は未着工だが、すでに移転した住民の家庭菜園の敷地の一部や未分譲地、県道、公園の予定地が含まれている。

 県庁で記者会見した同事務所の佐々木淑充所長は「大規模な揺れが繰り返されれば、どのような影響が出るか分からない」と危険性を認め、「地元の方に不安を与え、申し訳ない」と謝罪した。

 今年8月、一度は、県に代替地の安全性に問題がないと報告しながら、計算ミスを見抜けず、危険性の発覚が遅れたことについては「技術者として恥ずかしい」と頭を下げた。

 同事務所では同日から、職員が住民への説明を始めているが、代替地を生活再建の中心に据える住民は不満を隠しきれない。

 打越代替地に移転予定の50歳代男性は「国は今まで強度は大丈夫と言っていたので不信感が募る。民主党やダム建設反対派に(中止の)いい口実を与えてしまう。工期が延びるのも心配だ」と表情を曇らせる。

 川原湯温泉街で食堂「旬」を営む水出耕一さん(56)は「国は、『万が一のことがないように安全を確保している』と説明していたので残念だ。補強工事で安全性を高めてほしい」と注文をつけた。

◆2010年11月3日 朝日新聞群馬版より転載
ー代替地の耐震性計算に誤り 国も県も見逃す 住民「安全性確保を」ー

 長野原町の八ッ場ダム予定地周辺の住民が生活再建の場として移転する代替地に、耐震性の問題があることが2日、明らかになった。発端は国土交通省のダム工事事務所から受注したコンサルタントの計算ミスだが、チェックした工事事務所も県も見逃していた。住民らは不信感を募らせている。(菅野雄介)
 震度6~7程度の大地震で崩落の恐れがあるとされたのは、川原湯地区の打越代替地の一部。70㍍超の高さに土を積み上げて約2平方メートルを造成した。同代替地にはすでに14世帯が移転済みだが、問題の場所には住宅はなく、県道や公園などが造られる予定になっている。
 「分譲の説明を受けた時と違う」「あんな斜面のままじゃ、安心して住めない」
 これまでも川原湯地区の会合では、移転先となる打越代替地の安全性について、住民の一部から疑問の声が上がっていた。しかし国交省は、河川や海岸などの設計、施工の技術基準を踏まえて造成しているとして「代替地は安全」と説明してきた。
 一方、阪神大震災や新潟県中越地震で谷間や山の斜面の大規模盛り土造成地が崩落したことを教訓に、宅地造成等規制法(宅造法)が2006年に改正された。各都道府県や政令指定市などが既存の造成宅地を調べ、安全性に問題があれば「造成宅地防災区域」に指定することに。これを受け、県は09年2月、国交省に八ッ場ダム予定地周辺の代替地の情報提供を求めた。
 国交省はコンサルタント会社に宅造法による耐震性の計算を発注。ダム予定地周辺の5地区の移転代替地のうち、盛り土面積が3千平方㍍以上○盛り土の高さが5㍍以上ーなどの要件に該当した川原湯地区の2ケ所と川原畑、横壁の両地区の各1ケ所を調べ、いずれも耐震性に問題なしとした。その結果を今年8月末、県に報告。県も9月に報告を追認していた。
 しかしその計算に使う数値に誤りがあった。国交省は今月中にも対策工事に取りかかり、半年程度かけて安全策を講じる考えだ。
 川原湯地区の飲食業水出耕一さん(56)は「早い段階でわかって不幸中の幸いだった。水没しようとしまいと、代替地の安全性の確保は最優先してほしい」と話した。

◆2010年11月3日 毎日新聞群馬版より転載
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20101103ddlk10010150000c.html
ー 八ッ場ダム・流転の行方:移転代替地、年内にも補強工事 土砂崩れの危険で /群馬ー

 ◇国交省
 八ッ場ダム問題を巡り、水没予定地の住民が移転する代替地の一部で、土砂崩れの危険性があることが判明した。国土交通省八ッ場ダム工事事務所は2日、県庁で会見し、家庭菜園や県道の一部への影響が懸念されることから、年内にも補強工事に着手する方針を示し、「地元住民には早い段階で説明したい」と陳謝した。

 同事務所によると、危険性が明らかになったのは代替地4地区のうち、すでに14世帯が移転している「川原湯地区打越代替地」の一部で、同事務所は2日朝から地区住民に問題の経緯を説明した。代替地の地盤の安全性をコンピューターで計算する際、この地区の地層データを別の地層データと取り違えたのが原因という。

 計算し直した結果、安全率の最低値が、基準の1・0を下回る0・989に。佐々木淑充所長は「技術者として恥ずかしい。家屋に影響ないことが不幸中の幸いだった」と述べた。

 一方、ダムに反対する市民団体「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」の嶋津暉之代表は「修正前の安全率も1・106で基準ギリギリだった。この結果は、住民の生活を考えると非常に問題だ」と批判した。長野原町の高山欣也町長は「故意の間違えではないので仕方ない。ただ、安全対策は早くしてもらわないと困る」と話した。【鳥井真平、奥山はるな】