八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

ダム関連事業に関する県議会での一般質問

2011年2月26日

 群馬県議会の2月定例議会が始まり、23日には八ッ場ダム予定地を抱える吾妻郡選出の萩原渉県議が一般質問を行いました。
 群馬県議会のホームページから、質疑の模様が録画で見られます。本来、一般質問の議事録ぐらいは公表されるべきですが、残念ながら群馬県は録画公開のみです。新聞で取り上げられたのは、32分の質疑の中の一部のみですから、具体的なやりとりを知りたい方は、群馬県議会のホームページからご覧下さい。 
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 http://snipurl.com/25c8ae
 当該質疑の「再生」をクリック

 平成23年2月定例会 平成23年2月23日(水) 本会議(一般質問)
 萩原 渉(自由民主党)
  1 八ッ場ダム建設事業について
 (1)知事の対応について   知事
 (2)有識者会議の中間報告等及び今後の検証について   県土整備部長
 (3)生活再建事業について   茂原副知事
 (4)上信自動車道の長野県とのアクセスについて   茂原副知事

 萩原県議は八ッ場ダム推進1都5県議員の会事務局長の立場から、民主党政権下で国交大臣の交代が三度目であることや八ッ場ダムの工期延長と事業費増額の可能性が公表されたことを批判しています。大臣交代は自民党が参議院で馬淵前大臣の問責決議を出したためですが、自由民主党所属の萩原県議はこれには言及しませんでした。また、工期延長や事業費増額の可能性は、自民党政権下で決定した八ッ場ダム事業の矛盾が露呈したものですから、現政権に矛先を向けるのはおかしなことです。

 ジャーナリストのまさのあつこさんは、この県議会でのやりとりを早速ブログで取り上げました。少なくとも群馬県において、利水上、八ッ場ダムの必要性は皆無であることを、グラフでわかり易く解説しています。
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 http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/
 「ダム日記2」より
  「このグラフが目に入らぬか?群馬県知事と大畠大臣」

 群馬県はすでに人口のピークを迎えており、今後、さらに急減していくことを国の研究所が予測しているというのです。本格的な少子高齢化社会に突入しつつある群馬県が、今でも水が余っているのに、今後も利水を名目に八ッ場ダムの負担金を支払い続けることは、確かにグラフを見ればおかしいことが一目瞭然です。
 
 東京新聞群馬版では、国交省関東地方整備局が公表した工期延長と事業費増額を群馬県が「容認しがたい」と強調したことを伝えています。容認しがたくとも、八ッ場ダム事業を継続するのであれば、工期延長も事業費増額も不可避です。今後、地元を抱える群馬県はどうするつもりなのかは不明です。

 それはさておき、萩原県議の質疑は、本題に入ると、いつものように地元民の不安の声を踏まえた具体的な内容で、県当局からも具体的な答弁を引き出しました。 
 この質疑の中で、ようやく付け替え鉄道の工事の遅れがクローズアップされました。現在のJR吾妻線はダム本体予定地を走っており、工期延長の本当の原因は、鉄道付け替えの遅れです。
 付け替え国道は八ッ場ダム関連事業の目玉ですが、現在の国道をダム予定地の下流側で付け替え国道と繋ぐためには、この区間を走っているJR吾妻線の付け替えが必要です。ところが、2010年度末、つまり今年3月までに完成するはずだった鉄道付け替えの見通しが未だに立っていません。付け替え国道も今年3月までに完成する予定でしたので、苦肉の策として国交省は、新設が厳しく規制されている踏切を仮設することになりました。

 ダム本体予定地を走っている付け替え鉄道の工事の遅れは、ダム推進派が目指している八ッ場ダムの本体着工にも影を落とします。
 県当局に対して萩原県議は、付け替え鉄道の工事の遅れには触れず、「入札の期間を短縮するなどして工期を短縮できるのではないか」という質問をしました。上毛新聞では、工期短縮の可能性があるように県当局が述べたと伝えていますが、実際の答弁はそれ程明確なものではありませんでした。
 
 国交省関東地方整備局が公表した新たな工程表では、政権交代前に殆ど作業が終わっていたはずの入札に9ヶ月をとっています。当会では、すでに終わっている転流工がこの工程表ではこれから9ヶ月かけて実施することとなっている問題と共に、この入札にとる9ヶ月が付け替え鉄道の遅れをカモフラージュするためのものではないか、という疑問などを公開質問書として国交省関東地方整備局に提出していますが、今日現在、回答は届いていません。

 下記の記事とも関連する公開質問書の全文をこちらに掲載しています。
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 https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1156
 八ッ場ダム事業の工期延長と事業費増額に関する公開質問(2月8日)

◆2011年2月24日 東京新聞群馬版より転載
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20110224/CK2011022402000062.html

 -「取り返しが付かない」 八ッ場で県議会 大沢知事が猛反発―

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の是非に関する再検証で、国がダム建設を再開した場合の完成の遅れを示唆していることについて、大沢正明知事は二十三日の県議会一般質問で「地元の将来にとって取り返しの付かないことだ」と猛反発。「二〇一五年度完成」と定めた現行の事業計画を守るよう強く求めた。

 萩原渉氏(自民)の質問に答えた。大沢知事に続いて答えた茂木恭成県土整備部長も「県としては、ダムの工期延長や事業費増額は容認し難い」と強調。ダム再検証に関しては「進行速度が遅いとの声がある」として、国土交通省関東地方整備局が作業の状況を報告する「検討の場」について、流域都県知事らが出席する本会議の開催を求めるとした。

 同整備局は一月中旬、今秋を目標とする再検証の終了後にダム本体の工事に着手した場合、完成時期が現行計画より三年遅い一八年度となり、事業費も現在の四千六百億円から増額されるとの試算を発表した。

 完成時期については、大畠章宏国交相も今月四日の衆院予算委員会で「建設再開の場合は、一八年をめどに完成させたい」と、同整備局の試算に沿った答弁を行っている。

 一方、ダム生活再建事業の一環として計画された国道145号付け替え道路(延長一〇・八キロ)では、東吾妻町の雁(がん)ケ沢ランプから東側の一・四キロが未開通となっている。茂木部長は、この区間の工事について「付け替えの終わっていないJR吾妻線との交差部分には仮踏切を設置する。今年の秋口までに開通させたい」と目標を述べた。 (中根政人)

◆2011年2月24日 上毛新聞より転載

 -八ッ場バイパス 今秋 全線開通目指す 県 吾妻線との交差に踏切―

 八ッ場ダム建設事業の生活再建事業であるJR吾妻線付け替え工事の遅れに伴い、国道145号の付け替え道路(八ッ場バイパス)の全線開通も遅れている問題で、県は23日、現吾妻線とバイパスの交差部分に踏切を設けて今秋の全線開通を目指す考えを明らかにした。
 同日の県議会一般質問で萩原渉氏(自民)の質問に茂木恭成県土整備部長が答えた。バイパスは10.8㌔のうち東吾妻町松谷の「雁ケ沢ランプ」東側の1.4㌔が未開通。この区間は現吾妻線と交差するため、開通は線路の付け替え完了が前提だったが、用地取得の難航で付け替えが遅れているため、国と県、JR東日本が対応を協議していた。
 現在のままだと現国道との行き来は急カーブの雁ケ沢ランプを経由するしかなく渋滞の懸念があることから、現吾妻線に暫定的に踏切を設け、付け替え前に開通させる方向でまとまった。JRが今後、踏切設置に必要な手続きを進める。
 一般質問ではこのほか、ダム建設の是非の検証後に本体工事を再開した場合、完成が現計画より3年遅れるとの見通しを国が示している点について、茂木部長が「新技術などで工期を短縮する方法はあると考えている」と述べ、政府に短縮を求める考えを示した。
 

◆2011年2月24日 毎日新聞群馬版より転載
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20110224ddlk10010170000c.html

 -八ッ場ダム・流転の行方:バイパス、秋に全線開通 吾妻線に暫定踏切設置 /群馬―

 八ッ場ダム生活再建事業の一環として建設中の国道145号の付け替え道路(八ッ場バイパス)について、県は23日、当初予定通りに秋に全線開通する見通しを明らかにした。県議会本会議で、茂木恭成・県土整備部長が萩原渉議員(自民)の一般質問に答えた。

 県によると、八ッ場バイパスは長野原町長野原-東吾妻町松谷間(10・8キロ)を結び、長野原町側は国、東吾妻町側は県が建設している。このうち、東吾妻町側の雁ケ沢ランプ-松谷間(1・4キロ)が未開通となっている。

 未開通区間はJR吾妻線と交わっているため、10年度に予定された吾妻線移設を待って着工する計画だったが、用地買収の遅れで吾妻線の移設が延期に。そこで、国と県、JRは暫定踏切を設置して未開通区間の完成を急ぐという。【奥山はるな】