川原湯の代替地における地域振興施設案

 八ッ場ダム事業による地域振興をめざす群馬県は、このほど川原湯地区の地域振興施設のプランを住民に公表しました。
 群馬県はかつて、関係都県の基金により、「水源地域振興公社」をつくり、下流都県からの企業誘致も積極的に進め、合わせて450名に上る雇用を見込むと地元に説明しました。ダムにより生活基盤を奪われる住民にとっては、地域の持続的な経済や雇用の場こそが将来の生活を約束するものでした。
 住民は群馬県と国の約束を信じてダム計画を受け入れましたが、それから18年、約束は反故にされ、「水源地域振興公社」も下流都県からの企業誘致も実現しませんでした。この間、多くの住民が疲弊した地域を去り、現在、人口の減少した川原湯地区は、ダム計画による地域コミュニティの破壊という深刻な状況に直面しています。
 生活を破壊するダム事業が「生活再建」を標榜し、ダムを受け入れた地元住民の多くは身動きがとれずに犠牲を余儀なくされるー全国のダム予定地で起こってきた悲劇が今、八ッ場で繰り返されています。

◆2011年4月27日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581104270001

 -しぼむ規模 悩む維持費 川原湯地区の代替地振興施設案 建設費は2割以下に―

 八ツ場ダムが建設されれば全戸が水没予定の長野原町川原湯地区で、移転代替地に設けられる地域振興施設の新たな案が明らかになった。規模は18年前の素案の6分の1に縮小、建設費も5分の1以下となる。それでも採算は取れそうもなく、住民の顔に戸惑いが浮かぶ。

 5都県、赤字負担せず

 木造平屋建て約825平方メートルの校舎のような東西に長い建物に、郵便局や観光案内所、足湯、研修室、貸自転車置き場、テナントスペースが並ぶ造り。建設費は約3億円を見込んだ。

 15日夜、同地区で開かれた地域振興施設検討ワークショップ(WS)で、県に委託されたコンサルタントが施設案を示した。

 施設は、ダムの水の恩恵を受ける東京、埼玉、千葉、茨城、群馬の5都県が出資する利根川・荒川水源地域対策基金の負担で建てられる。水没の見返りだ。

 採算面の不安などから1992年の素案に続き、2009年の見直し案も振り出しに戻った末、住民アンケートやWSを通じて地元の意向を集約したとして示されたのが、今回の案だ。

 最初の素案から18年が過ぎる間に地区人口は7割減り、残った住民も30年続く生活再建の議論に疲れ果てている。この夜、建設規模やコストの縮小には特に異論が出なかった。

 一方、戸惑いの声が上がったのは、維持管理費と収入の差額。テナントスペースに温浴施設を組み入れた場合、人件費を含めた年間の維持管理費は2900万円で、収入は550万円。「入浴料300円で1日50人の利用を想定した。ものすごく多い数字」とコンサルは甘い試算を認めた。

 温浴施設なしの場合はそれぞれ2100万円、100万円とはじき出した。

 出資者の5都県は、民主党政権がダム中止を打ち出す前から維持管理費は負担しない方針を示している。

 住民からは「赤字はどうするのか」といった声が相次いだ。県は「あくまで案であって、今後検証して地元に改めて諮りたい」などと述べるにとどめた。

 WS終了後、川原湯地区ダム対策委員会の樋田洋二委員長は「これでも採算が厳しいのなら、さらに見直す必要があるのかもしれない」と険しい顔で話した。

 県は11年度中に振興施設の詳細設計に入り、12年度には着工する見通しを示している。(菅野雄介)
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 1992年の素案 3階建て3600平方メートルで1千人収容のホールを備えた観光会館、平屋建て200平方メートルの貸自転車のセンター、平屋建て1千平方メートルの温泉保養施設、周遊バス車庫がJR吾妻線の新駅前に並ぶ構想。鉄筋コンクリート造りが主体で、建設に16億円弱を想定した。
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 2009年の見直し案 エクササイズセンター1棟に集約され、3階建て2550平方メートル。テナントスペースやビジターセンター、観光案内所、トレーニングルーム、エステティックサロンなどを設ける案で、概算の事業費は約11億5千万円とされた。