八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

藤沼ダム決壊の続報

 東日本大震災により決壊した福島県の藤沼ダムについての続報が入りましたので転載します。

◆産経ニュース2011.6.8 22:07
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110608/dst11060822110028-n1.htm

 ー震災でダム決壊「人災」 見舞いの知事に怒り 福島・須賀川ー

 東日本大震災が発生した3月11日、太平洋から内陸に約75キロ離れた福島県須賀川市長沼では「藤沼貯水池」(藤沼ダム)が決壊。濁流が家屋をのみ込み、8人の死者・行方不明者を出した。8日に開かれた住民説明会では、福島県の松本友作副知事が住民らへ“お見舞い”を述べたが、会場からは「人災ではないか」との声が上がった。管理責任や補償を行政に求める地元住民は、不満を募らせている。(是永桂一)

 「海のない場所に住んでいるのに、なぜ濁流にのまれて人が死んだんだ」。説明会では長沼の住民が、約3カ月がたって訪問した松本副知事に声を荒らげる場面があった。

 農林水産省によると、震災などによって農業用ダムや貯水池が決壊し、人が死亡した災害は記録上ない。

 この事故では、以前からダムが老朽化し、大雨時の水があふれていたことなどから、住民側は決壊を人災と主張。補償を求めるが、ダムを管理する土地改良区は責任を認めていない。藤沼ダムは灌漑(かんがい)用のダムで、昭和24年に完成した。

 松本副知事は「県として被災者におくやみを申し上げ、速やかに貯水池の管理、技術、対応のすべてで専門家を交えて調査をしたい」と述べた。一方、被災した住民からは、事故原因の具体的調査を早急に行うよう求める声が上がり、一日も早い補償や入梅時期を迎え応急的な補給工事を求める声が相次いだ。

 須賀川市によると、決壊はダム北東部の高さ約18メートルの堤で発生。約150万トンの水が下流の集落を襲い、14歳から89歳の男女7人が死亡、1歳の男児が行方不明になった。市によると、家屋19戸が全壊・流失し、床上・床下浸水した家屋は55棟にのぼる。

◆産経新聞2011/06/08 23:06更新
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/511395/

 -人災?天災? 藤沼ダムの決壊…怒り、揺れる住民―

 なぜダムは決壊したのか。東日本大震災で「藤沼貯水池」(藤沼ダム)が決壊し、7人が死亡、1歳男児が行方不明となっている福島県須賀川市長沼の住民は今も憤りを隠さない。人災を訴える住民側と責任を認めない市、土地改良区側と主張は平行線だ。住民からは代表団を作り、補償を求める動きも出ている。(是永桂一、写真も)

 ダム決壊時の濁流から間一髪で逃げた同市長沼の滝地区に住む森キミ子さん(63)は、「地震直後、導水管に一滴も水が流れなくなり、ボキボキ、バキバキという不気味な音とともに、まず木が、それから水が流れてきた」と振り返る。水は1、2回とダムからあふれ出し、3回目に堤が決壊、濁流が津波のように襲ってきたという。森さんは、押し寄せる水から父母とともになんとか逃げ切ったが、近所に住んでおり、ダムの異常を知らせてくれた近くの石田三造さん(68)と、小針トシさん(73)が波にのまれて亡くなった。

 キミ子さんの夫の清道さん(55)によると、ダムはこれまでも大雨の時に水があふれ、道路まで浸ることもたびたびあり、亡くなった石田さんは再三、ダム決壊の危険性を指摘したという。キミ子さんは「雨が降るたび堤や土壌などが緩くなって、水があふれる量も多くなっていた」と話す。毎年恒例の共同の草刈り作業の際も、近隣の住民は地区の区長にダム補強の必要性を再三訴えていたという。

 ダムを管理する市や江花川沿岸土地改良区などによると、ダムは過去2度、県の補助事業として漏水防止を含む補強工事を行った。最後は15年ほど前に行われたが、補強や管理が十分だったのか、具体的な調査すら行われていない。

 2千万円ほどの農機具を流された滝地区の女性(53)は「住民は口頭で、何度も役場にダム補修の陳情を行っていた」とするが、土地改良区や市側は「最後の補修を行って以降、陳情の記録はない」とし、管理責任や今後の補償については「被害を受けた住民に事故状況を説明し、県などとともにできることからやっていく」とするのみだ。女性は「ダム決壊による“津波”が天災だとされると、泣き寝入りするしかない」と肩を落とす。

 森さんら家屋が全壊した滝地区や下流の北町地区の住民は8日、市などに事故原因の解明や補償を求めるため、代表団を結成した。キミ子さんは「悔しいし、このままでは誰を恨めばいいのか分からない。亡くなった石田さんのためにも原因を追及したい」と唇をかむ。

 “人災か、天災か”。責任の所在があいまいなまま、補償や今後の生活をめぐって、地区は揺れている。

◆2011年6月10日 産経新聞より転載
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110610-00000131-san-soci

 -不安募る梅雨 震災で貯水池・農業用ダム86カ所損傷 補修予算わずか1億―

 東日本大震災で東北と北関東の7県の貯水池、農業用ダム86カ所が堤体にひびが入ったり、土砂崩れが起きるなどで損傷を受けていたことが農林水産省のまとめで分かった。このうち福島県須賀川市では貯水池(ダム)が決壊し、死者・行方不明者が8人出るなど、甚大な被害を出した。政府の第1次補正予算では決壊した貯水池を補修する費用は1億円余りしか手当てされず、ブルーシートで覆う程度の応急処置しかできていない。本格的な梅雨シーズンを迎え、地元住民から不安の声が上がる。(三枝玄太郎、是永桂一)

 須賀川市では震災直後に藤沼貯水池(藤沼ダム)が決壊し、あふれた140万トンの水が簀(す)の子(こ)川流域にあふれ、家屋19棟が全壊、流失。7人が死亡、1歳の男児1人が今も行方不明のまま。農水省によると、地震で貯水池、農業用ダムが決壊し、死傷者が出たのは記録上初めて。

 同省は事態を重く見て全国1090カ所の農業用ダム、貯水池の被害を都道府県を通じて照会した。その結果、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬の7県で86カ所の貯水池、農業用ダムに被害が出ていたことが分かった。

 宿(しゅく)の沢(さわ)ダム(宮城県栗原市)では、斜面が幅約30メートル崩落し、危険な状態が続いている。崩落箇所はそのままで応急処置が行われた形跡はない。宮城県は「軽微なもの」というが、決壊した藤沼貯水池も斜面崩落は幅70メートルほどで水が満たされていたら危険だったとの指摘も出ている。

 衣川(ころもがわ)ダム(岩手県奥州市衣川区)では、5つのダムのうち、3つで異常が見つかった。このうち衣川1号ダムは堤体本体が大きな損傷を受けた。幸い治水用のダムで洪水時以外は水をためない仕組みのダムであるため、水が流れ出す被害はなかった。

 ところがこうした大きな被害にこれまで手当てされた予算はわずか1億1400万円。米づくりが本格化するなか、貯水池の水位を下げたままでは営農もおぼつかない。農水省は「水を使いながら安全に全力を傾けたい」としているが、地元では不安の声が聞かれる。

 藤沼貯水池は決壊した堤が震災時のままだ。近くの住民は「梅雨に入ったらたまった水が一気に流れ出すかもしれない」と不安を口にする。

 またこうした貯水池やダムは古いものが多く耐震基準の対象外のものも多い。「全国には江戸時代から戦前期に作られた古いものも多い。補強を進めて対処したい」と農水省の担当者は話している。