民主議連、ダム中止後の生活再建支援法案を提出

2011年9月26日

 民主党の「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」は9月7日に国会内で総会を開き、「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案」(仮称)を公表しました。
 これは同議員連盟が昨秋発足して以来、衆議院法制局との作業によって固めてきたもので、政権交代後2年目にしてようやく見えてきたダム事業を中止する場合の法整備を目指す動きです。

 わが国には、ダム事業を促進するための法律はありますが、ダム事業の中止を前提とした法律がありません。1990年代以降、ムダな公共事業への世論の風当たりが強まり、旧政権下では全国でいくつものダム事業が中止になってきました。しかし、ダム事業中止を想定した法律がないため、それまでダム事業に依存してきた地域では、ダム事業が中止になった後、それに代わる地域再生のための裏付けがなく、人口減少・地域の衰退が止まらない不幸な事例が数多く見られます。
 ダム事業を促進する法律は「水源地域対策特別措置法」(略称:水特法)といい、1973年に施行されました。当時、ダム事業を押し付けられた全国の水没予定地では行政に対する激しい抵抗運動がありました。八ッ場ダム予定地も例外ではありません。けれども、この水特法により、ダム予定地域には多額の税金が投入されることになりました。このことがダム事業を肥大化させ、ダム関連事業による景気を期待する周辺地域の世論を変え、最終的には孤立した地元を軟化させることになりました。
 八ッ場ダム事業では、ダム事業費4,600億円のほかに、水特法事業に997億円という予算がついています。これらの巨額の税金は、ダム予定地に多くの道路や施設などのハード設備の建設を促しましたが、この間ダム予定地域は人口減少、地場産業の縮小により衰退の一途をたどっているのが実情です。
 
 ダム事業の見直しをするためには、それを前提とした法整備が必要となりますが、いまだにわが国ではこの問題に焦点が当てられていません。ダム中止を前提とした法整備は八ッ場ダムに限らず、全国のダム予定地にとって必要な法律であり、公共事業の見直しを可能にするための重要な施策でもあります。

 同議員連盟会長の川内博史衆院議員のホームページに、この法案の要綱と概要、民主党の前原誠司政調会長へ9月16日に提出された要請書がアップされています。

●特別措置法案の要綱
http://kawauchi-hiroshi.net/images/topics/img/20110916_1190929116_FilePath_1.pdf

●特別措置法案の概要
http://kawauchi-hiroshi.net/images/topics/img/20110916_1562049893_FilePath_1.pdf

●議連の役員連名で提出された前原誠司政調会長への要請書(2011年9月16日)
http://kawauchi-hiroshi.net/images/topics/img/20110916_1324226741_FilePath_1.pdf

◆2011年9月16日 愛媛新聞より転載
http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20110916/news20110916072.html

 -中止で支援金・用地提供 山鳥坂や八ツ場ダムー

 国土交通省が事業凍結中の山鳥坂ダム(大洲市)や八ツ場ダム(群馬県)などの建設是非を検証している問題で、民主党国会議員有志の「八ツ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」がまとめた特別措置法案の内容が15日までに分かった。

 事業を中止した場合、建設予定地域の振興や住民の生活再建を支援する内容で、移転しなかった住民への支援金や住宅の新改築助成なども盛り込んだ。

 議員立法として10月にも開かれる臨時国会への法案提出を目指している。

 同議連(会長・川内博史衆院議員)は、地元に検証対象のダムがある議員らで構成。県関係では高橋英行氏(衆院比例四国)が副会長に就いている。

 公共事業の中止で影響を受ける住民への補償を定めた法律がなく、2010年7月に大洲市を訪れた前原誠司元国交相が法整備の方針を表明していたが、実現していない。

 高橋氏は「見通しがはっきりしない状況で地元住民の不安が高まっている。事業の継続、中止いずれにしても、国が責任を持つということを明確にする」と狙いを説明する。

◆2011年9月17日 上毛新聞より転載

 -八ッ場ダム 自民、民主両党議連が活動 「着工早期に決断を」 「再建支援策が必要」-

 自民党の「八ッ場ダム推進国会議員連盟」(会長・佐田玄一郎衆院議員)は16日、緊急総会を開き、前田武志国土交通相に着工を早期に決断するよう申し入れることを決めた。出席した国土交通省の担当者は再検証の最終結論が示される時期について、「関東地方整備局の結論を取りまとめるのにあと1カ月以上は必要になる」と述べた。
 佐田氏は、国交相として建設中止を表明した民主党の前原誠司政調会長が整備局の総合評価に不快感を示したことを「前原氏が始めた再検証。クレームを付けるのは間違っている」と批判。「ダム完成に向けて全力で頑張る」と強調した。
 一方、民主党の「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」(会長・川内博史衆院議員)は同日、議連で取りまとめた「ダム事業廃止地域振興特措法」の早期成立などを求める要請書を前原政調会長に提出した。
 前原氏は「ダム建設を中止するところでは、このような生活再建の支援策が必ず必要になるので参考にさせていただきたい」と述べ、今後は党内の国土交通部門会議で検討していく意向を示した。

◆2011年9月19日 読売新聞群馬版より転載
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/feature/maebashi1316187702477_02/news/20110919-OYT8T00165.htm

 -地域再生 ダム頼み 下流都県が費用負担ー

 残暑の厳しい日差しが照りつけた10日。長野原町長野原地区の真新しいビニールハウスで、50~70歳代の男性7人でつくる「長野原園芸生産組合」のメンバーが、滝のような汗を流しながらイチゴの苗株を整理していた。元町職員で組合長の佐藤甲子さん(74)は「春の低温で苗がうまく育たないかと思ったが、よく成長した」とほっとした表情を浮かべる。

 八ッ場ダム事業で水没予定の同地区では、先祖伝来の田畑を手放した人も多く、園芸施設整備費を負担してもらえる水源地域対策特別措置法(水特法)事業を活用。減少農地分の収入を確保しようと、収益率が良く、冬の暖房代も安いイチゴ栽培に昨年から取り組んでいる。

 メンバーは、野菜や稲作の経験はあるが、イチゴに関しては素人。昨年度は、売り上げ1000万円の目標に対し、実績は約750万円にとどまった。加部恒夫さん(54)は「収穫の際に実を強く触って変色し、市場からクレームが来たり、3月に害虫が大発生したりした」と悪戦苦闘ぶりを明かす。今年度は、直売所新設やジャム加工なども検討しており、加部さんは「早く採算ベースに乗せて、農業で生活できる人を一人でも増やしたい」と張り切る。

 八ッ場ダムの本体工事は凍結されているが、地元の長野原町では、代替地造成などの生活再建事業は継続されている。ダム中止表明から2年間で、国道145号バイパスがほぼ全線開通するなど、町の姿は大きく変貌した。

 一方、ダム事業で土地を失った住民らの移転で、水没5地区は人口減少が著しい。町人口は、水没地区の用地補償価格が決まる直前の2001年3月末の7232人から、今年8月末の6289人まで943人減少したが、減少分の9割近くを水没5地区が占める。

 各地区では、長野原地区のイチゴ栽培のように、水特法や、利根川・荒川水源地域対策基金を使った地域再生に向けた動きも始まっている。

 政権交代直後、工事途中の橋脚が巨大な十字架のように見えて有名になった「湖面2号橋」のたもとの林地区では、地区の住民が運営する「道の駅」が13年に開業する予定だ。

 運営内容について、住民間の話し合いをまとめる同地区ダム対策委員長の篠原茂さん(60)は「農地は3割以上減り、このままでは地域が駄目になる。住民参加型で地元にお金が落ち、雇用が生まれるのは道の駅しかない」と力説する。

 予定地は、草津町や嬬恋村へ通じる国道145号バイパス沿いと条件は良い。代替地として分譲予定の約7000平方メートルを町が買い取り、整備費は基金事業を活用する。白菜やキュウリ、ジャガイモなど地元農家が栽培した野菜や加工品を柱に、足湯や地域を巡るツアーの受付コーナーなども設ける構想で、同副委員長の町田文雄さん(69)は「水没5地区の核になる施設にしたい」と意気込む。

 01年3月末に約240人だった人口が約60人に激減した川原畑地区でも、町が、都市住民を対象にした宿泊滞在型の市民農園「クラインガルテン」設置を検討。住民と町職員が長野県佐久市の事例を視察に行くなどしている。

 だが、こうした地域再生の原資は、水特法事業や基金事業が中心。ダム建設という前提が崩れれば、下流都県に費用を負担し続ける理由がなくなる。そして、「ダム湖を観光資源の目玉に」という地元の夢も水の泡となりかねない。

(写真)イチゴの苗を確かめる佐藤さん(手前)と加部さん(奥)(10日、長野原町で)

(写真)湖面2号橋(中央)たもとの「道の駅」建設予定地(18日、長野原町林で)

この連載は森広彰、佐賀秀玄が担当しました。

 水源地域対策特別措置法 ダム建設に伴う移転などで不利益を受ける水源地域の住民の生活再建を支援するため、1973年に施行。水源地域整備計画を策定し、社会基盤整備や農林業振興などの費用を、ダム建設で恩恵を受ける下流自治体が負担する。八ッ場ダム関連では、計62事業(約997億円)が予定されている。