八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

シンポジウム「八ッ場ダムの真実」の記事

 さる9月23日に前橋市で開催したシンポジウム「知っていますか? 八ッ場ダムの真実」の記事を転載します。

◆2011年9月24日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581109240002

 -再検証は「茶番」 見直し派3団体批判ー

 八ツ場ダム(長野原町)計画をめぐるシンポジウム「知っていますか?八ツ場ダムの真実」が23日、前橋市新前橋町の県社会福祉総合センターであった。

 「八ツ場あしたの会」「八ツ場ダムを考える1都5県議会議員の会」「八ツ場ダムをストップさせる市民連絡会」の見直し派3団体の共催。国土交通省関東地方整備局が13日に「八ツ場ダムが最善」との総合評価を出すなど再検証が佳境に入る中、県内外から約330人が集まった。

 3団体は、ダムを推進してきた国交省による再検証自体を「茶番劇」と批判しており、シンポでは総合評価への批判が相次いだ。

 関良基・拓殖大准教授(森林政策学)は、治水面の「問題点」を指摘。整備局は再検証の中で、八ツ場ダムなど事業を予定通り進めた場合として、伊勢崎市八斗島地点での利根川の目標流量を毎秒1万7千トンとした。これは、大きな被害を出した1947年のカスリーン台風時に八斗島地点で実際に流れたと国が推計している数値と同じだ。

 この目標流量について、関准教授は「カスリーン台風当時は戦争中の乱伐と燃料需要で、山に樹木がなかった。再検証は非現実的な代替案との比較にとどまり、森林の保水力を無視している」と主張した。

 シンポには、民主党や共産党などの見直し派議員も出席した。

 大河原雅子参院議員(東京選挙区)は、住民の生活再建のための「ダム事業廃止地域振興特措法」の試案を前田武志国交相に提出したと報告。県議会議員の会会長の角倉邦良県議(リベラル群馬)は「状況は厳しいが、ダムに代わる堤防強化など代替案を示し、県民と国民の納得を得たい」とあいさつした。

◆2011年9月24日 東京新聞群馬版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20110924/CK2011092402000087.html

 -八ッ場ダム問題 国の検証に疑義相次ぐー

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の国による検証のあり方を問うシンポジウム「知っていますか?八ッ場ダムの真実」が二十三日、前橋市の県社会福祉総合センターで開かれた。国土交通省関東地方整備局が十三日、ダム建設が最も有利とする検証結果を出したことを受けて、八ッ場あしたの会、八ッ場ダムを考える一都五県議会議員の会、八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会が共催した。 (伊藤弘喜)

 シンポジウムでは整備局の検証への疑義が相次いだ。水問題研究家の嶋津暉之さんは、整備局がダムの代わりに示した利水案は「静岡県の富士川から延々二百キロ導水するなど現実性がない」と批判した。

 嶋津さんは「東京都は一九九二年以降、水道の配水量が減少の一途をたどっている一方で増加する予測を出しており、(検討の場は)そのまま認めてしまった」と指摘。本来なら、ダムの根拠となっている関係都県の水需給計画の妥当性を検証すべきだったと述べた。

 拓殖大の関良基准教授(森林政策学)は、治水面で対応が必要とされている水量「目標流量」の毎秒一万七千立方メートルは「過大だ」と指摘。この目標流量は「六十年前、戦中の乱伐ではげ山状態だった山々が前提。現在の山の森は五・四倍に増え、森の保水力も増している」とし、八ッ場ダムの必要性に疑問を呈した。

 地質の専門家の中山俊雄さんは八ッ場ダム予定地の周囲に浅間山など活火山があることに触れ、「火山による地層の隆起に伴い断層や亀裂が多く、地滑りの危険性が大きい。ダム建設には適さない」と指摘した。

(写真)大勢の人が参加した八ッ場ダムのシンポジウム=前橋市で

◆2011年9月24日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20110924-OYT8T00096.htm

 -八ッ場ダム 「推進」「反対」動き加速 再検証ヤマ場 シンポや国政報告会ー

 八ッ場ダム(長野原町)の再検証作業が終盤に入り、推進、反対派双方の動きが加速している。23日は、反対派が前橋市内で再検証の問題点を追及するシンポジウムを開催する一方、推進派の小渕優子衆院議員(自民)が地元の長野原町で国政報告会を開き、建設再開を訴えた。前田国土交通相は、10月上旬に地元入りする意向を示しており、国交相の今後の対応に両派の関心が集まっている。

 ダム建設見直しを求める市民団体などが主催したシンポジウムには約300人が参加。「八ッ場ダムの検証は茶番劇」と題し、水問題研究家の嶋津暉之(てるゆき)氏や、関良基・拓殖大准教授(森林政策学)らが、ダムを「最も有利」と評価した国土交通省関東地方整備局の検証手法を批判した。

 嶋津氏は、首都圏の水道配水量が年々減少しているデータを示した上で、「整備局は過大な水需要予測の見直しを行っていない」と指摘。関准教授は、同整備局が河川上流の森林土壌が雨水を一時的にためる能力を過小評価していると説明し、「堤防強化が喫緊の課題だ」と語った。

 また、前田国交相と京大の同級生で、ダムに懐疑的な今本博健・京大名誉教授(河川工学)は「長年苦しんだ地元のことを考えると八ッ場ダムは難しい問題」とした上で、国交相には「後世に汚名を残すな」と助言したことを明かした。

 一方、小渕議員の国政報告会には約150人が出席した。22日に自民党有志の「八ッ場ダム推進議員連盟」の一員として前田国交相に陳情した小渕議員は、「大臣は『(再検証の)最終結論は私が決める』と話していた」と説明。「大臣は当然の決断をしてくれると思う。国交省出身で河川が専門の方。中止になれば、自身が歩んできた道のりを否定することになる」とけん制した。

◆2011年9月24日 上毛新聞

 -「八ッ場の問題点 指摘 前橋 見直し派がシンポ」ー

 八ッ場ダム建設見直しを求めている市民団体「八ッ場あしたの会」など3団体は23日、前橋市の県社会福祉総合センターで、建設の是非を決める検証をテーマにしたシンポジウムを開いた。ダムに慎重な専門家ら4人がパネリストとして講演。国土交通省関東地方整備局が、検証作業の一環でダム案を「最も有利」と総合評価した点を「ただ単に手続きだけを踏み、中身を検証していない茶番劇」などと批判した。
 拓殖大の関良基准教授らが、これまでダム建設を推進してきた整備局が検証主体であることなど検証手法の問題点を指摘。元東京都土木技術研究所主任研究員の中山俊雄氏らが、ダム建設予定地周辺の地滑りの危険性について訴えた。
 関氏らは治水面の検証について「目標とする洪水の規模やダムの治水効果を過大に設定し、森林の保水能力などを無視して進めている」と問題視。利水面でも「人口減などによる今後の水余りを考慮せず、関係都県が必要と主張する大量の水をそのまま認め、それを前提に検証している」と批判し、あらためてダム建設の見直しを訴えた。
 シンポジウムには一般市民や関係都県の都県議、国会議員ら約300人が集まった。