八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

関係都県知事、国交大臣へ申し入れ

2011年9月30日

 八ッ場ダム事業を進めてきた国交省関東地方整備局が今月13日、「八ッ場ダムが最良」との検証結果を公表したことはテレビ等で大きく報道されましたが、その後、政権内から、八ッ場ダムの是非についてはまだ結論に至っていない、との発言が相次ぎました。

 国交省関東地方整備局と関係都県は、政権交代直後と同様、知事らと地元首長らの「八ッ場ダム早期着工」要望を前面に出して、民主党政権を追い詰めたいようです。
 国交省関東地方整備局は一見、民主党政権に従っているように見えますが、関係都県の担当部長は国交省の出向ですし、各知事がが関東地方整備局の主張をそのまま繰り返していることからも、旧政権下と同様、両者は一体化しているのがわかります。
 9月26日には、ダム推進を強く主張している石原都知事、上田埼玉県知事、大沢群馬県知事が三人そろって大臣と面談し、大臣の早期現地視察を強く要請しました。国交省関東地方整備局や関係都県が表に出ると、利権に敏感な国民は胡散臭いと思いますが、苦境に立たされている地元が前面に出れば、同情論が起こってダムに否定的な世論を鎮めることが期待できるからでしょう。
 民主党政権がダム中止後の具体的な生活再建支援策を打ち出さない中で、ダム事業による交付金、生活再建事業に頼る地元は八ッ場ダム推進を要請せざるをえません。ダム事業を受け入れた地元は現在、衰退の一途を辿っており、ダム事業がこのまま続いても地域の未来は見えませんが、マスコミ報道の多くは地元の「建前」を伝えるだけです。
 10月前半には大臣の現地視察が予定されています。ダム事業を推進してきた自民党政権下では、国交大臣が現地視察をしたのは政権最後の大臣の時だけでしたが、民主党政権になってからは大臣が交代するたびに地元へお詫びの視察が行われています。

◆2011年9月27日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581109270001

 -大沢知事「国交相前向き」県と国に温度差ー

 八ツ場ダム(長野原町)問題で、1都5県の知事らが26日、国土交通省を訪れ、大沢正明知事が前田武志国交相に、早期の再検証終了と工事着工を求める申入書を手渡した。前田国交相は「なるべく早く結論を出す」と答えたが、報道陣には判断時期が遅れる可能性を示唆しており、混乱は続きそうだ。

 直談判は、建設是非を再検証中の国交省関東地方整備局が13日に出した「ダムが最善」との総合評価を受けて行われた。冒頭あいさつ部分以外は非公開。会談時間は約25分だった。

 申入書によると、6都県は、ただちにダム本体工事に着手するよう主張。国交省が1月に3年遅れるとの見込みを示した工期も、予算を集中投資することで、基本計画通りの2015年度完成を求めた。

 知事らは会談後に取材に応じ、大沢知事は「大臣は非常に前向きだった」と手応えを語った。民主党の前原誠司政調会長らが建設是非の判断に「政府・民主三役会議」の関与を示唆したことについては、東京都の石原慎太郎知事は「ナンセンス」と批判した。

 一方、前田国交相は申し入れ後の取材に、「まだ9合目にも達していない」と再検証中だと強調した。

 東日本大震災や大きな被害のあった台風12号をあげ、「河川の専門家だけではなく、どういう危険があり、どう対応すればいいのか、最新技術を有識者に指摘いただきたい」と時間がかかることに理解を求めた。その上で、歴代国交相が今秋までとしてきた決断時期について「それは前任者までの話」と述べた。

 「八ツ場ダム中止」は民主党の政権公約の目玉だけに中止を貫くよう求める声が党内には根強い。中島政希・県連会長代行は、朝日新聞の取材に「知事の意見よりマニフェストが重要。国交省の検証ではなく、国民の信任を得た党が判断すべきだ」と訴えた。(石川瀬里、小林誠一)

【国交相への申し入れ(全文)】

(1)八ツ場ダム建設が最も有利であることが明確にされた今、この検証結果を最大限尊重し、一刻も早く対応方針を決定するとともに、平成24(2012)年度予算での対応を待つことなく、今年度可能な措置を速やかに実施し、直ちにダム本体工事に着手すること。

(2)ダム本体工事の実施に当たっては、この2年間の遅れを取り戻すために予算を集中投資し、基本計画どおり平成27(2015)年度までに八ツ場ダムを完成させること。

(3)国の度重なる方針変更により、長年にわたり塗炭の苦しみを味わってきた地元住民の意見を真摯(しんし)に受け止め、国の責任において生活再建事業を早期に完成させること。

(写真)申し入れ前に前田国交相(右)と握手する大沢知事=東京・霞が関の国土交通省

◆2011年9月27日 東京新聞群馬版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20110927/CK2011092702000068.html

 -八ッ場ダム「早く現地視察を」 1都5県知事申し入れ書ー

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の早期の建設推進を求める申し入れ書を関係一都四県の知事らと共に前田武志国土交通相に渡した大沢正明知事は二十六日、「(前田)大臣には一日も早く現地視察をしてもらいたい」と話した。

 国交省関東地方整備局が治水・利水を含めた総合的な評価としてダム建設が最良との判断を示したことを受け、一都五県の知事名義で申し入れた。

 申し入れは非公開で約二十分にわたった。申し入れの後、大沢知事は「(前田大臣が)予断なく検証するということで安心している。生活再建にも非常に前向きだった」と会談を振り返った。

 共に申し入れた埼玉県の上田清司知事は「早く本体工事に予算を付けて、速やかに完成させなさいと言っている」と強調し、石原慎太郎都知事は「大臣にはとにかく現地に行ってほしい。印象も変わるはずだ」と促した。

 前田国交相は申し入れの後、「非常に重いことだと受け止めた。しかし、あくまでも予断なく検証したい」と述べた。現地視察については「十月の早い時期に現地に入るため日程調整に入った。地元にはいろいろな不満もあるはず。会えるなら誰とでも会いたい」と語った。 (伊藤弘喜)

(写真)八ッ場ダムについての要望書を手渡す前に、前田国交相(右)と握手する大沢知事=東京・霞が関の国交省で

◆2011年9月27日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20110927ddlk10010226000c.html止

 -八ッ場ダム建設:国交相が来月視察へ 大沢知事ら、早期完成求め要望書 /群馬ー

◇反対派批判「茶番劇に加担」

 「現場を早く見てほしい」「ダム建設が中止宣言以来の混乱を収める唯一の方法だ」。八ッ場ダム問題で国土交通省関東地方整備局が「最も有利な案はダム案」とする総合評価を提示したことを受け、大沢正明知事、東京都の石原慎太郎知事、埼玉県の上田清司知事の3人は26日、前田武志国土交通相と面談し、ダムの早期完成を求める要望書を提出。知事側からは前田国交相への注文が相次いだ。一方、ダム見直し派からは建設推進に向けた知事の動きについて「国交省の茶番劇に加担しているだけ」と批判の声が上がった。【鳥井真平】

 要望書には(1)ダム本体工事の早期着工(2)予算を集中投資して基本計画通り15年度までにダムを完成(3)国の責任で生活再建事業を早期に完成--の3項目が盛り込まれた。前田国交相は3知事に、来月の早い時期に現地を視察する考えを伝えた。

 大沢知事は要望後、報道陣に「予断を持たず検証することを前田国交相の口から改めて確認したので安心した」と話し、前田国交相の印象について「真摯(しんし)に話してくれたので、信頼を持てると思った。前田国交相が自分でこの問題に答えを出すという強い意志を感じた」と評価した。

 石原知事は前田国交相の現地視察について「現場を見ると随分印象が違う。判断の論拠がきちっとできる」と語った。上田知事は「ダム建設が混乱を沈める唯一の方法。法的には1都5県知事と議会の同意がなければ中止できないが、(国は)その手続きを一切取っていない」と改めて指摘した。

 一方、ダム建設の見直しを求めている市民団体「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長はこの日、「事業主体の国交省が行っている検証自体が疑問だ。知事らは国交省の茶番劇に参加しているだけだ」と述べた。また民主党県連の中島政希会長代行は「民主党はマニフェストで中を打ち出した。中止の方向性に変わりはない」と話した。

◆2011年9月27日 埼玉新聞
http://www.saitama-np.co.jp/news09/27/03.html

 -八ツ場ダム、計画通りの完成要求 知事ら国交相にー

 前田武志国交相(左)に八ツ場ダムの即時着工を求める申し入れを行う上田清司知事(右)ら=26日午後、国交相室

 八ツ場ダム(群馬県)建設の是非をめぐり、上田清司知事らが26日、前田武士国土交通相と都内で面談し、検証結果を早期に決定し、ダム建設事業を計画通り2015年度までに完成させるよう申し入れた。流域6都県知事の連名で「強く要求する」とした。

 面談したのは上田知事のほか、石原慎太郎東京都知事、地元の大沢正明群馬県知事。申し入れは建設の是非を判断する検証作業で、ダム建設が代替案に比べて最良とする国交省関東地方整備局の総合評価の提示(今月13日)を受けて即時着工を要求した。

 本体工事が2年間、凍結されている状況に (1)本年度可能な措置を速やかに実施し、直ちにダム本体工事に着手する (2)2年の遅れを取り戻すため予算を集中投資し、基本計画通
り15年度までに完成させる (3)国の責任で地元住民の生活再建事業を早期に完成させる -を求めた。

 上田知事は会談後、記者団に「法的(特定多目的ダム法)には、われわれ知事と議会の同意がないと事業は中止できない。とにかく本体工事の予算を遅れた分だけ増額し、15年度までに完成させる。これが『中止宣言』して以来の混乱を鎮める唯一の方法だと申し上げた」と述べた。

一方、10月上旬に現地視察を計画する前田国交相は記者団に「(知事の申し入れは)非常に重く受け止めている。今後、パブリックコメントや有識者会議の意見を聴いた上で私が最終的に判断する」と述べた。さらに東日本大震災級の災害を想定した追加検証の必要性を指摘。最終判断の時期について前田国交相は「(今年の)秋までというのは前任者(前大臣)までの話。3・11を踏まえた対応を有識者の方々に検証してもらい、それを踏まえた上でなるべく早く結論を出したい」と述べるにとどめた。

◆2011年9月27日 上毛新聞
http://www.raijin.com/news/a/2011/09/27/news02.htm

 -八ツ場ダム本体着工を要望 国交相に6都県知事ー

 国土交通省関東地方整備局が八ツ場ダム建設を最も有利とする総合評価結果を示したことを受け、大沢正明知事ら利根川流域6都県の知事は26日、国交省で前田武志国交相と会談し、ダム本体の早期着工などを申し入れた。

 前田氏は会談後の会見で、これまで言及していた東日本大震災を踏まえた検証について、新たな機関などを設けるのではなく、既存の有識者会議に諮る形で検証する意向を示した。

 会談には大沢知事のほか、石原慎太郎都知事と上田清司埼玉県知事が出席した。

 会談後に大沢知事は「大臣には(申し入れを)非常に重く受け止めていただいた。少しでも早く視察したいとの話もあった」と述べた。石原知事は総合評価結果が示された後の前原誠司民主党政調会長の発言について「自分が検証させておいて『不愉快だ』とは非常に軽率だし、あるまじき発言だ」と批判した。

 建設予定地の現地視察について、前田氏は会見で「ぜひ現地を見させていただきたい」と述べ、10月上旬で日程調整に入っていることを明かした。建設の是非の最終判断については「私が行うつもりだ」と自らが下す意向をあらためて示した。

 6都県知事は申し入れ書で、13日に示された総合評価結果を「当然の結果だ」と主張。(1)来年度予算を待たず即時着工(2)計画通り2015年度のダム完成(3)生活再建事業の早期完成-の3項目を強く求めた。

 (写真)前田国交相(左端)に八ツ場ダムの即時着工などの要望書を手渡す大沢正明知事。埼玉・上田清司、東京・石原慎太郎の両知事も出席