八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

事業評価監視委員会は「八ッ場ダム建設継続」を了承

2011年12月5日

 関東地方整備局の事業評価監視委員会は、もともと「止まらない公共事業」を再評価する目的で設置されているのですが、これまで、行政の意向に反する結論を導き出したことがないという、いわゆる形ばかりの委員会です。
 八ッ場ダムの検証においても、11月22日と29日の二回の会議のみで、批判的な意見は出たものの、検証結果は妥当という行政の意に沿う結論となりました。
 第二回目の会議の翌日の11月30日、関東地方整備局は国交省本省に八ッ場ダムの検証結果を報告し、同日中にホームページに報告内容(八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書)を掲載しました。
 こうした経緯からしても、事業評価監視委員会での審議は、単に関東地方整備局によるダム検証にお墨付きを与えるための儀式に過ぎなかったことがわかります。

 29日の会議で配布された資料の中には、22日の会議で委員から出された質問に答えるために関東地方整備局が作成したものも含まれています。
 ↓
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000050170.pdf
 八ッ場ダム建設事業に関する事業評価監視委員会委員からのご質問等について

 「治水」、「利水」の必要性について、従来の国交省の主張を繰り返すためのデータを取り揃えた上記資料は、八ッ場ダム事業について特に詳しいとも思われない委員らのために作成されたものなのでしょうが、ダムに批判的な識者らを納得させる新たな知見は見当たりません。

 P20~23には、八ッ場ダムの生活再建事業についての資料もあり、当初の代替地計画の図なども掲載されています。
 人口減少に苦しむ現地の状況を見れば、代替地計画が実現していないことは明らかです。地元への約束を果たしていない行政の無計画ぶりを糾弾するための資料にもなりうるものが、「地元へ約束したのだから、今さらダム計画を撤回するわけにはいかない」というダム推進の根拠とされているのです。行政は「責任」とか「反省」という言葉とは無縁なのでしょう。

◆関東地方整備局のホームページより事業評価監視委員会の名簿を転載します。
http://www.ktr.mlit.go.jp/shihon/shihon00000045.html

委員長
家田 仁 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授

委員長代理
鈴木 誠 東京農業大学地域環境科学部造園科学科教授

委員
遠藤 和義 工学院大学工学部建築学科教授
大野 栄治 名城大学都市情報学部教授
岡部 義裕 東京商工会議所常務理事
佐々木 淳 横浜国立大学大学院工学研究院教授
清水 義彦 群馬大学大学院工学研究科社会環境デザイン工学専攻教授
田中 里沙 株式会社宣伝会議取締役編集室長
堤 マサエ 山梨県立大学国際政策学部総合政策学科教授
恵 小百合 江戸川大学社会学部ライフデザイン学科教授
山﨑 朗 中央大学経済学部教授
笠 京子 明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授

◆関東地方整備局事業評価監視委員会(平成23年度第6回)の開催結果について
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000050142.pdf

 上記の審議結果は、委員会の事務方を務める関東地方整備局の作文で、同局の主張を書き連ねたものに過ぎません。実際の委員会では、各委員よりいくつかの問題点が指摘されましたが、それらはこの審議結果には書き込まれていません。

◆2011年11月30日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581111300001

 -専門家ら支持 八ツ場監視委 継続を了承ー

 八ツ場ダムの再検証で、国土交通省関東地方整備局の事業評価監視委員会(委員長=家田仁・東大大学院教授)が29日、さいたま市であり、「建設継続が妥当」とした整備局の報告案を了承した。整備局は近く本省に結果を報告し、再検証の舞台は本省に移る。

 監視委は、「始まったら止まらない」と言われる公共事業の再評価のために設置されている。関東の場合、整備局長の委嘱を受けた12人の委員がいるが、この日の出席は6人。会議の成立条件「2分の1以上」のギリギリだった。

 監視委は、約1時間半の公開審議の後、別室に移って非公開で検討。了承理由を「河川や環境といった学識経験者の多くが整備局の結論を支持した」「地元の人々は、多大な迷惑にもかかわらず、ダムが下流域にもたらす治水・利水の効果を信じ、事業実施と地域再建に協力してきた」などと総合判断したという。

 整備局は、関係6都県などの自治体首長と利水者に対する文書での意見聴取結果も監視委で公表した。

 大沢正明知事は、整備局の報告案について「妥当な判断」と記述。早期の検証作業完了と基本計画通りの2015年度のダム完成、ダム湖を前提とした生活再建事業を国に求めた。事業参画による暫定水利権で給水量の約6割を得ている藤岡市の新井利明市長も「取水が不可能となる不安を常に抱えている」として、早期の本体工事着手を訴えた。他県でも「意見なし」とした自治体以外は、ほぼすべてがダム推進の意見を寄せた。

 整備局での再検証終了を受け、大沢知事はコメントを出し、「遅くとも年内には、この報告に沿った決断をしてほしい」と前田武志国交相に求めた。

◆東京新聞群馬版 2011年11月30日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20111130/CK2011113002000078.html

八ッ場ダム「建設継続が妥当」 事業評価監視委が答申

 建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(長野原町)をめぐり、国土交通省関東地方整備局事業評価監視委員会(委員長・家田仁東京大大学院教授)は二十九日、「建設事業の継続が妥当」とする意見を答申した。これを受け、同整備局は近く、「事業継続が妥当」とする対応方針案を決め、同省に報告する。

 同委員会は委員十二人で構成。この日は六人が出席し、同整備局側との質疑応答を経て委員間で審議し、意見をまとめた。

 委員会は「今後必要となる費用、事業完了までに要する時間、流域住民への影響などから見て、八ッ場ダム建設の完遂が相対的に有利とするのは妥当だ」と指摘した。

 これを受けて、大沢正明知事は「当然のことだ。遅すぎる。一刻も早く検証を終わらせてほしい」とのコメントを出した。 (伊藤弘喜)

◆2011年11月30日 読売新聞群馬版 
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111130-OYT8T00084.htm

 -八ッ場ダム 有識者がお墨付き/事業評価委 知事「早く決断を」ー

 八ッ場ダム(長野原町)の再検証で、有識者からなる国土交通省関東地方整備局事業評価監視委員会(委員長=家田仁・東大大学院教授)は29日、「事業継続が妥当」と判定した。同整備局は結果を本省に報告する。今後、本省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」による議論や、東日本大震災を踏まえた新たな検証などがあるが、同整備局段階では有識者がダム建設にお墨付きを与えた格好だ。

 同監視委は、意見をまとめた文書の中で、「首都圏を抱える利根川水系のように、中下流域が著しく市街地化している河川は、現実的に採用しうる治水・利水方策の自由度が限定される」と述べ、ダムに頼らない治水、利水の限界を指摘。今後予想されるコストや時間から「ダム建設が最も有利」と評価した同整備局の検証について、「ダムに対して懐疑的な意見があることを踏まえつつも、妥当な結論」と判断した。

 その上で、水没予定地の住民について「生活の場や生業の転換を強いられ、極めて大きな迷惑を被ってきた」とし、今後の事業遂行に際して十分に配慮するよう注文をつけた。

 この結論を受けて、大沢知事は「当然のこと。前田国交相は一刻も早く検証を終わらせ、(ダム建設を)決断してほしい」とのコメントを出した。

◆2011年11月30日 読売新聞社会面 
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111129-OYT1T01072.htm

 -八ッ場ダム「建設継続」の方針了承…国交省委ー

 建設中止か継続かを再検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)について、国土交通省関東地方整備局の事業評価監視委員会(委員長=家田仁・東大大学院教授)は29日、建設継続が妥当とした同整備局の方針を了承した。

 同整備局は近く、検証結果を同省に報告する。建設の可否は、前田国土交通相が年内に判断する見通し。

 同整備局は9月、利根川の複数の治水案のうち、コスト面などから、同ダムを建設し利用する案を最良と評価。その後、流域自治体の首長や住民らから意見を聞いた上で、「継続が妥当と考えられる」と結論付けていた。学識経験者12人で構成される同委員会は、「流域自治体なども建設継続を支持し、迅速な実施を要望しており、こうした意見を尊重すべきと考える」などと意見をまとめた。

◆2011年11月29日 上毛新聞
http://www.raijin.com/news/a/2011/11/29/news02.htm

 -八ツ場ダム建設継続が妥当と知事意見ー

 八ツ場ダム建設の是非を決める検証で、県は28日、国土交通省関東地方整備局が提示した「建設継続が妥当」とする対応方針案について、「妥当な判断。ただちにダム本体工事に着手するべきだ」とする大沢正明知事名義の意見を整備局に文書で伝えた。

 関東地方整備局はダム検証手順に従い、本県を含む利根川流域6都県や利水面で参画している藤岡市など関係自治体の首長に、文書で意見を聴いた。

 大沢知事は回答文書で①計画通り2015年度までのダム完成②ダム湖を前提とする生活再建事業の早期完成-を求めた。

 他の5都県と藤岡市も28日までにダムの早期完成などを求める同様の意見をそれぞれ回答した。