八ッ場ダムの是非についての”民主党内の調整”

2011年12月19日  

 八ッ場ダム事業の再開(=ダム本体着工)をめざす国土交通省とそれに異を唱える民主党国会議員らの攻防が続いています。マスコミ報道では、民主党内で「建設再開へ向けての調整」が行われているとの報道が中心で、「八ッ場ダム建設再開は既定路線」という国交官僚の主張を先回りしているようです。 

 前原誠司政調会長は12月9日(金曜日)、民主党国土交通部門会議で提示された八ッ場ダム検証についての疑問点について、政府を通して国交省に回答を求めました。国交省は12日(月曜日)には、民主党からの疑問に対する回答を提出しましたが、その内容は、これまでの国交省の主張を切り張りしたものでしかなく、ダム検証の根拠を示す新たな根拠は何一つありませんでした。 

 このため、15日(木曜日)に開かれた民主党国土交通部門会議の「八ッ場ダム問題分科会」では、国交省の息のかかった沓掛哲男衆院議員(建設省出身)ら三名の議員が八ッ場ダム推進の意見を述べたものの、国交省側の説明に納得できないとの声が大勢を占めました。  

 しかし翌日の新聞各紙は、八ッ場ダム問題分科会におけるこうした情勢をそれほど大きく扱わず、15日の深夜に配信された共同通信のニュースなどが大きくクローズアップされました。 

 http://p.tl/pAeA  ↓
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 八ツ場ダム、建設濃厚に 前原氏が態度軟化  

 八ツ場ダム(群馬県)建設問題に関し、民主党の前原誠司政調会長は15日の記者会見で「官房長官に(党側の意見を)申し入れ、それから先については委ねたい」と述べ、藤村修官房長官に建設の是非の判断を一任する考えを示した。中止を強く主張してきた前原氏が、政府側に対応を委ねると態度を軟化させたことで、ダム建設が進む可能性が濃厚になった。  藤村氏は、党の議論も踏まえた上で「手続きにのっとって国土交通相が適切に処理、対処する」との立場で、ダム事業を検証し「継続が妥当」とした国交省側の意向を尊重するとみられる。前田武志国交相は「年内に最終判断する」と明言している。2011/12/15 22:40 【共同通信】
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 同じ共同通信は17日には、さらに踏み込んで、以下の記事を配信しています。 
 http://p.tl/2A1u  ↓
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 八ツ場ダム建設再開へ

 政府は16日、政権交代後に中止を表明した八ツ場ダム(群馬県)の建設を再開する方向で最終調整に入った。政府首脳は同日夜、記者団に「22日までに前田武志国土交通相が最終判断する」と述べ、国交省首脳も「(早期に完成する)代替案がないのに、途中で止めるのは無責任極まりない」と話した。政府は週明けから民主党と詰めの協議に入り、正式決定する方針。
 2011年12月17日(土)0時18分配信 共同通信
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 前田武志国土交通大臣は「八ッ場ダム建設再開」について正式な表明を行っていませんが、すでに前田大臣は会見で建設再開に言及しており、藤村官房長官もそれを容認する発言をしています。こうした中で、八ッ場ダム再開に反対している前原氏の態度が注目されてきましたが、前原氏の態度の軟化を伝えるニュースは、八ッ場ダム再開への障壁が取り払われたというイメージを一人歩きさせることになりました。

 ところが、その後の前原氏の発言は、相変わらず八ッ場ダム再開に否定的です。
 http://news.biglobe.ne.jp/domestic/1217/mai_111217_6561961714.html  
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 毎日新聞2011年12月17日(土)23時37分

<前原政調会長>「八ッ場再開」に政治的判断必要

 民主党の前原誠司政調会長は17日、東京都羽村市で記者団に対し、政府が建設再開へ向け最終調整に入った八ッ場ダム(群馬県)について「(建設中止を明記した)マニフェスト(政権公約)に関する案件なので政治的判断が必要だ。前田武志国土交通相が決めて終わりではない」と述べた。

 野田佳彦首相の出席する政府・民主三役会議での判断が必要との認識を改めて示したもので、藤村修官房長官に判断を一任したことについては「官房長官がどう判断するかだが、官房長官にフリーハンドで委ねたわけではない」と強調した。【野口武則】

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 「八ッ場ダムの中止」は2009年総選挙の際に掲げられた民主党の政権公約(マニフェスト)です。前原氏の見解は、政権公約を国交省の判断だけで覆すのは、民主党として容認できないとの立場からです。

 八ッ場ダム建設の是非についての関係者の意見を大まかに整理してみると・・・

 ○国交省と関係都県知事、ダム予定地の地元自治体首長は一貫して八ッ場ダム推進を主張

 ○前原政調会長は、国交省の判断のみで政権公約を覆すべきではないという見解

 ○藤村官房長官は国交省の意向を尊重
  (前国土交通事務次官の竹歳誠官房副長官の影響下にあるとされる)

 ○民主党国土交通部門会議における八ッ場ダム問題分科会において、八ッ場ダム建設に反対する国会議員が大勢を占める
  (国土交通部門会議の意見書は、反対派議員らの疑問点を列挙したものの、「八ッ場ダム建設反対」に踏みこまなかったため、これに反発した民主党国会議員有志約40名が八ッ場ダムに反対する意見書を独自に前原政調会長に提出ー12月8日)

 ○八ッ場ダム建設推進を主張する民主党国会議員は少数だが、官僚と結んで隠然たる力を発揮

 ○民主党国土交通部門会議の松崎座長は、再度の意見集約にあたり少数のダム推進議員にまたも配慮。反対派議員らがこれに反発し、座長案の修正を要請。(12月16日)

 ○民主党政調会役員会に松崎座長が国土交通部門会議の意見を20日に報告する見通し。

 
 一見、民主党内で意見が対立し、その調整が難航しているように見えますが、八ッ場ダム推進にとって有利な意見を述べる議員は、いずれも国交省の影響下にあります。民主党のダム反対議員と国交省の河川ムラとの攻防というのが真相でしょう。いずれが国民の方を向いているかは明らかです。

 関連記事を転載します。

◆2011年12月17日 読売新聞群馬版 
 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111217-OYT8T00128.htm

 -八ッ場 政府に要望合戦 国交相判断、20日かー

 八ッ場ダム問題で、建設推進、反対派双方が16日、政府内のキーマンへの要望合戦を繰り広げた。3知事の直談判に藤村官房長官は「建設継続が妥当」とした国土交通省の検証に欠陥がないことを認めて早期決断を確約する一方、反対派国会議員と面会した五十嵐文彦財務副大臣は、本体着工への予算配分に慎重な姿勢を示した。前田国交相の判断時期は、検証結果への民主党の意見が決まる20日になるとみられる。

 16日夕、大沢知事、埼玉県の上田清司知事、東京都の石原慎太郎知事の3人が首相官邸に集まり、建設継続を求める野田首相宛ての申し入れ書を藤村官房長官に提出した。

 内容は、〈1〉検証は、前原氏が人選した有識者会議でまとめた検証スキーム(枠組み)に基づき、科学的に行われた〈2〉有識者会議は建設継続が妥当と結論付けた〈3〉これ以上時間をかけることは許されない〈4〉国交相の判断を政府方針とすべき〈5〉最終段階で検証スキームの変更を迫る行為は断じて許されない――の5項目。

 大沢知事は要望後、「(前原氏は)自らがつくったスキームで出た結論を覆すのは言語道断」と憤り、官房長官の反応について「〈1〉から〈3〉まで『全く同感だ』と言っていただいた。予算(編成)もあるので、早いうちに結論を出すということだった」と説明。石原知事は、法律で、都県議会の承諾がなければ事業を中止できないことを挙げて、「政府が中止の結論を出したら大恥をかく」と語った。

 一方、反対派の民主党県連所属の国会議員4人は同日午後、五十嵐副大臣と面会。中島政希・県連会長代行は「検証は恣意的で納得していない。震災で財源難の時に、ダムを造るのは財政当局にとっても非常に問題」として予算をつけないよう要請した。

 五十嵐副大臣は、吾妻川上流で行われている、猛毒のヒ素を含む酸性水の中和事業の安全性に懸念を示し、「財務相や政府の閣僚がどう判断するかは別だが、疑問が晴れない限り軽々にゴーサインを出すべきでない」と応じた。

 また、同日は民主党の国土交通部門会議も開かれた。だが、座長の松崎哲久衆院議員が意見集約の素案に、検証に対する党の疑問に国交省から「明確な回答」があったと表記したため異論が噴出。会議の場ではまとまらなかった。

 そのため、松崎座長が表現を修正した素案が同日夜、関係議員に回覧された。修正案では「明確な回答」が削除され、「建設継続となればマニフェスト違反になる」との意見も盛り込まれており、20日の党政調幹部会に報告される見通しだ。

 一方、前田国交相は16日の閣議後記者会見で「来年度予算に反映させるのが私の公約。それが守られるようにしたい」と発言。党との意見調整についても「前原さんも責任をお持ちですから、ちゃんと間に合うと思う」と語った。