野田首相、八ッ場ダム予算執行に二条件

2012年1月7日

 昨年9月以来、「八ッ場ダム本体着工は既定路線」との報道が続いています。
 12月22日の前田大臣の会見とそれに続く現地訪問は、こうした報道のクライマックスでした。
 民主党の国交大臣が「八ッ場ダム中止」を掲げた同党の政権公約をあっさり放棄し、群馬県知事をはじめとする「地元住民ら」に深々と頭を下げて万歳三唱で歓待されたこの日の”現地シーン”は、翌日からマスコミによって民主党政権バッシングの格好の材料とされることとなりました。
 実際、前田国交大臣の「決断」は、八ッ場ダム事業の受注者を選挙基盤とする佐田玄一郎衆院議員(自民党)や上野宏史参院議員(みんなの党)から「英断に感謝したい」(上毛新聞12月24日付)などと歓迎されたものの、民主党に対する国民の激しい怒りの発端となったのです。

 前田大臣が「八ッ場ダム本体着工」を明言したこの日、政府は藤村官房長官名で「八ッ場ダム本体工事についは、この2条件を踏まえ、判断する」との裁定案を示していました。
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 https://yamba-net.org/wp/doc/201112/1222_saitei.pdf

 政府の裁定案には、「八ッ場ダム本体着工を認める」という趣旨の表現はありません。まして民主党は、前原政調会長の度重なる発言により、「八ッ場ダム本体着工は認められない」旨を繰り返し強調していました。
 前田大臣が党の意向を無視し、政府の裁定案を都合よく拡大解釈し、本体工事にゴーサインを出すかのような記者会見を22日に行ったのは、来年度予算が発表されるのが12月24日だったからです。
 前田大臣は22日の現地訪問に先立ち、関係自治体の首長らに電話を入れ、「本体着工の条件などが報道されているが、条件ナシで本体着工することが決まった」という説明さえしていたということです。期日が迫っていたとは言え、一大臣が勝手に官僚機構の意に沿った言動を行ったのでは、政党政治は成り立ちません。22日の前田大臣の言動は、「国交省のクーデター」とすらいわれます。強引な手法に対する民主党の反発をかわすために官僚たちが考えたのが、前田大臣の地元訪問と「地元民」による万歳三唱でした。

 政権交代直後、「地元住民」を活用した前原国交大臣への批判の嵐は、「八ッ場ダム中止」を「八ッ場ダム検証」へ転換させる上で、大きな影響力を発揮しました。今回も「地元住民」を利用した民主党政権への揺さぶりは効果をあげ、裁定案を提示したはずの政府責任者たる野田首相は、24日には、八ッ場ダム事業再開を「苦渋の決断」と、条件を提示したことなど忘れたかのようなな発言をしていました。

 ところが、あまりに一般世論が八ッ場ダム再開に反発したため、野田首相は改めて12月29日になって、八ッ場ダム本体工事の予算執行には二条件をクリアする必要があることを発言するに至りました。

 
 関連記事を転載します。

◆2011年12月30日2時6分 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201112290107.html

 -八ツ場、着工条件守る=野田首相ー

 野田佳彦首相は29日夜の民主党税制調査会などの合同総会で、2012年度予算案に本体工事費が計上された八ツ場ダム(群馬県長野原町)について「官房長官裁定の2条件をクリアしないと予算は執行しない」と明言した。出席した同党議員が明らかにした。[時事通信社]

◆2011年12月30日 東京新聞朝刊一面
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011123002000036.html

 -八ッ場予算執行に条件 首相「裁定案クリアを」ー

 野田佳彦首相は二十九日の民主党税制調査会と社会保障と税の一体改革調査会の合同総会で、建設再開の方針を決めた八ッ場(やんば)ダム(群馬県)への対応について、藤村修官房長官が再開条件の裁定案として示した流量の再検証などが完了しない限り、予算は執行しない考えを明らかにした。

 首相は「条件をクリアしてから予算を執行する」と述べた。八ッ場ダム再開をめぐっては、離党者が出るなど党内の反発が強く、消費税増税への理解を得るために配慮した。

 裁定案の主な内容は(1)利根川水系の河川整備計画を策定し、建設の根拠としてきた流量を再検証(2)建設を中止した場合の建設予定地の生活再建に向けた法案をまとめ、次期通常国会への提出を目指す-の二点。

◆2011年12月31日 朝日新聞群馬版

 -「官房長官裁定が予算執行の前提」 八ッ場再開で首相明言 -

 八ッ場ダムの建設問題で、野田佳彦首相は29日夜、民主党税制調査会などの合同総会で、「官房長官裁定をクリアしないと予算は執行しない」と述べた。出席議員が明らかにした。
 裁定は、利根川水系の河川整備計画を策定し、基準点(伊勢崎市八斗島)における「河川整備計画相当目標量」の検証▽建設中止の判断があったことを踏まえ、生活再建の法律を川辺川ダムをモデルにまとめ、次期通常国会に提出を目指すーの2項目。
 藤村修官房長官が22日、前田武志国土交通相と前原誠司民主党政調会長に提示。前田国交相は直後に建設再開を表明していた。前原政調会長は30日の会見で「国の最高責任者が(裁定は)予算執行の前提であると明確におっしゃった」と首相発言を評価した。

◆2011年12月30日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111230/t10014991221000.html

 -前原政調会長“野党に協力求める”ー

 民主党の前原政策調査会長は、記者会見で、消費税率を2015年10月までに段階的に10%に引き上げるなどとした社会保障と税の一体改革の素案について、「社会保障の財源を確保するために必要だ」として、実現に向けて野党側に協力を求める考えを示しました。

 この中で、前原政策調査会長は、年明けに政府・与党の社会保障改革本部を開き、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げるなどとした社会保障と税の一体改革の素案を正式に決定することになるという見通しを示しました。

 そして、前原氏は、一体改革は社会保障の充実と安定化の財源を確保するために必要だという認識を示したうえで、「案をまとめるだけではなく、しっかりと実現しなければならない。

 われわれの筋を通すことまではしなければならないが、ねじれ国会の現状を考えれば、与野党協議で協力をいただくことが大事だ。与野党協議を踏まえ、今年度中に必要な法案を提出したい」と述べました。

 また、前原氏は、群馬県の八ッ場ダムの本体工事について、「野田総理大臣はきのうの党の税制調査会で、『藤村官房長官の示した裁定案に盛り込まれている利根川水系に関わる河川整備計画の策定などの2つの条件を満たすことが予算執行の前提になる』と明言した」と述べました。

◆毎日新聞 2011年12月31日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111231ddm002010108000c.html

 -群馬・八ッ場ダム建設:予算執行「2条件が前提」 首相、総会で明言ー

 野田佳彦首相は29日夜の民主党税制調査会などの合同総会で、政府が建設再開を決めた八ッ場ダム(群馬県)の予算執行について

 (1)利根川水系の河川整備計画の策定(2)ダム建設が中止された地域に対する生活再建支援法案の国会提出--という官房長官裁定の2条件が満たされることが前提になるとの考えを示した。

 前原誠司政調会長が30日の記者会見で明らかにした。

 政府は12年度予算案に八ッ場ダムの本体工事関連費を計上したが、その際に藤村修官房長官は、2条件を盛り込んだ裁定案を提示した。

 党内の消費増税反対派には八ッ場ダムの建設再開にも強い不満を持つ議員が多い。首相は党側の理解を得るため、八ッ場ダムの予算執行に高いハードルがあることを強調したとみられる。【野口武則】

◆2011年12月31日 上毛新聞

 -八ッ場予算執行へ2条件 野田首相ー

 野田佳彦首相は29日夜、社会保障と税の一体改革に関する民主党合同会議総会で、八ッ場ダム(長野原町)工事費の予算執行について①全国のダム事業が中止された場合に地元の生活再建を支援する法案の国会提出②利根川水系の整備計画策定ーが前提条件になるとの認識を示した。
 出席議員によると、首相は「(2条件を)クリアしてからの執行だ。ハードルは高い」と述べた。
 前田武志国土交通相は来年度予算案にダム工事費を計上することを決めた22日に、支援法案提出や整備計画策定に言及したが、執行の前提条件になるかは明確にしていなかった。