ダム中止後の生活再建支援法

 国交省が準備中のダム中止後の生活再建支援法についてのニュースを転載します。この法案は川辺川ダムをモデルとしてつくられることになっており、川辺川ダム予定地の五木村からは期待の声があがっています。
 ダム中止後の生活再建支援法案は、嶋津暉之さんが全国のダム事業の中止を訴える水源開発問題全国連絡会の活動の一環として法案の必要性を強く訴え、10年以上前に試案を発表しています。
 八ッ場あしたの会ではこうした活動を引き継ぎ、八ッ場ダムの中止の際には、ダム中止後の地域再生が可能となる法整備とセットで進める必要性を訴えてきました。ダムの関連事業が膨大な八ッ場ダム事業は、他のどの事業よりダム事業中止という政策転換が地元に与える影響が大きいため、本気で八ッ場ダムを止めるのであれば、法整備は不可避です。
 しかし、国交省はこれまで民主党政権下の大臣の指示にもか関わらず、法案作成をボイコットしてきたといわれます。八ッ場ダムの中止とセットで準備されるはずの法案が、八ッ場ダム再開との引き換え条件として漸くつくられようとしています。国交省は地元のために八ッ場ダムを推進しなければならないかのようなイメージをふりまいていますが、法案準備の経緯を見ると、ダム予定地の人々の本当の幸せなどどうでもよいと考えていることがわかります。

◆2012年2月15日 熊本日日新聞
http://kumanichi.com/news/local/main/20120215002.shtml

 -国有地の無償譲与も ダム中止生活再建法案概要ー

 川辺川ダムの水没予定地を抱える五木村をモデルに、ダム事業中止に伴う生活再建を支援する「ダム事業廃止特定地域振興特別措置法案」の概要が14日、分かった。

 法案は水没予定地などを「特定地域」に指定し、国に買収された土地を都道府県や市町村に無償譲与するのが柱。五木村にとっては、更地となったままの水没予定地を独自計画で再利用できる可能性も出てくる。

 国土交通省は今国会への提出を目指し、法案概要を22日にも民主党の国交部門会議に説明するとみられる。

 国交省は概要に、予定地の都道府県などへの無償譲与のほか、(1)ダム関連の道路整備など必要な事業の継続(2)継続事業などの財源として、地方自治体の裁量で使える「社会資本整備総合交付金」などの活用-を盛り込んだ。

 民主党議連が提案した、ダム予定地から移住していない人への生活再建支援金支給は、「個人資産への措置は自然災害の被害を受けた場合に限られ、移転した人などとの不公平が生じる」として見送る方針。

 生活再建法案をめぐっては、民主党議連が法案要綱を策定。要綱は、国がダム建設予定地を「特定地域」に指定し、都道府県が地域住民の意見を聴きながら振興計画をまとめる-などが大枠で、国交省も踏襲する方向で調整する。

 国交省は民主党部門会議の議論を踏まえ、財務省や総務省と調整し、今月末にも法案を取りまとめる。

 生活再建法案の国会提出は、政府と民主党が昨年12月、群馬県の八ツ場[やんば]ダム建設再開の条件として合意。前田武志国交相が議連要綱を参考に、法案づくりを急ぐ考えを示していた。(原大祐)

◆2012年2月16日 熊本日日新聞
http://kumanichi.com/feature/kawabegawa/kiji/20120216001.shtml

 -五木村長「ありがたい」 ダム中止特措法案の概要判明ー

 国有地となった水没予定地を地元自治体へ無償譲与する内容を盛り込んだ「ダム事業廃止特定地域振興特別措置法案」の概要の判明を受け、川辺川ダムの水没予定地を抱える五木村の和田拓也村長は15日、概要を評価。「予定地が無償譲与されれば、公共施設用地として活用できる可能性も広がる。大変ありがたい」と話した。

 概要は水没予定地を「特定地域」に指定し、地元の都道府県や市町村に無償譲与することなどが柱。概要を踏まえた特措法案が今国会に提出される見通しだが、和田村長は「国は法制定を待たずに、現行法でできることを早くやってほしい」とも話した。

 県は概要を冷静に受け止めた。川辺川ダム総合対策課の津森洋介課長は「内容は昨年6月に国と県、村の3者合意に基づくもの」。法施行まで時間を要することも考えられるため、「県は今できる部分で実績を重ね、村の再建へつなげたい」と話した。

 一方、法案を策定する国土交通省水政課は「調整段階で内容については答えられない」と繰り返した。また、民主党の国土交通部門会議は、22日の次回会合で、国交省から概要説明を受けることを確認した。(臼杵大介、岩下勉、原大祐)

http://kumanichi.com/feature/kawabegawa/kiji/20120216002.shtml

 -迅速な振興計画が不可欠  地方主体ダムは対象外ー

 ダム事業廃止特定地域振興特別措置法案がまとまれば、水没予定地での大規模な生活再建が可能になる。1966年に計画発表された川辺川ダムの水没予定地を抱える五木村など、事業の長期化で地元には疲労の色が濃い。このため、法案成立後には迅速な振興計画の策定が不可欠だ。対象は国などのダム事業に限られるため、地方が事業主体の補助ダムについては課題が残る。

 ダムで水没する地域向けには、道路や公共施設を下流自治体の一部負担で整備する水源地域対策特別措置法があるが、事業が中止になることは想定していない。「ダムを中止すると地元が衰退する」として、法整備を求める声が強まっていた。

 五木村を含め、建設予定地や水没予定地の多くは山間部にあり、高齢化も進む。水没を前提に道路の改修が見送られているケースもあり、計画の策定や事業開始にはスピードが求められる。

 53事業が見直しの対象となっている補助ダムは、特措法案の対象外。国土交通省幹部は「直轄事業に比べて規模が小さく、独自の再建策が取りやすい」と説明するが、多くは国の施策に準じる形で計画された経緯があり、直轄事業と同様の対策が必要だ。

◆2012年2月16日 上毛新聞

 -ダム中止地域支援で特措法 国有地を無償提供 国が財政支援 3月閣議決定目指すー

 ダム事業中止に伴い住民の生活再建を支援する「ダム事業廃止特定地域振興特別措置法案」の概要が15日、明らかになった。水没予定地を「特定地域」に指定し、都道府県が地元市町村などと話し合って振興計画を作成。国は財政面で支援するほか、買収した用地を自治体に無償で提供したり、買い戻しを希望する元の所有者に優先的に売却したりする。3月上旬の閣議決定を目指す。

 特措法案の対象になり得るのは、政府が事業の見直しを進めている国直轄や水資源機構の計31ダムと川辺川ダム(熊本県)。このうち現時点で中止方針が決まっているのは本県の吾妻川上流総合開発と七滝ダム(熊本県)の3事業だけだが、国が支援する枠組みが固まることで、地元が中止を求め易やすくなる効果もありそうだ。
 振興計画は、住民の意見も踏まえてまとめる。水没予定だった道路の付け替え工事など、地元の必要性が高い事業を継続。農業体験ができる施設の整備など地域振興策も盛り込める。事業費には、地方の使い勝手がいい「社会資本整備総合交付金」を想定。地方債の特例を設けて支援し、独自財源に乏しい地元に配慮する。
 国交省は法案の対象地域として、川辺川ダムが中止された熊本県五木村を想定。吾妻川と七滝ダムはいずれも事業が進んでいないため、法案の恩恵は少ない。
 地方が事業主体の補助ダムは「地域主権の考え方に基づく」として法案の対照に含めなかった。民主党の一部議員は、移転しなかった住民への直接的な支援金支給や免税を求めていたが「既に移転した人もおり、不公平になる」と見送った。

解説
 ダム事業廃止特定地域振興特別措置法案がまとまれば、水没予定地での大規模な生活再建が可能になる。ただ事業の長期化で地元意は疲労の色が濃く、法案成立後には迅速な振興計画の策定が不可欠だ。対象は国などのダム事業に限られるため、地方が事業主体の補助ダムについては課題が残る。
 ダムで水没する地域向けには、道路や公共施設を下流自治体の一部負担で整備する水源地域対策特別措置法があるが、事業が中止になることは想定していない。「ダムを中止すると地元が衰退する」として、法整備を求める声が強まっていた。
 建設予定地の多くは山間部にあり、高齢化も進む。水没を前提に道路の改修が見送られているケースもあり、計画の策定や事業開始にはスピードが求められる。
 53事業が見直しの対象となっている補助ダムは、特措法案の対象外。国土交通省幹部は「直轄事業に比べて規模が小さく、独自の再建策が取りやすい」と説明するが、多くは国の施策に準じる形で計画された経緯があり、直轄事業と同様の対策が必要だ。