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八ッ場見直し民主議連、利根川河川整備計画に関して国交省にヒアリング

2012年6月10日

 国交省関東地方整備局が利根川の河川整備計画の策定に向けて動き出したことを受け、八ッ場ダムの見直し派らからなる民主党の議連(八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟)は、国交省へのヒアリングを実施しました。
 国交省関東地方整備局では、八ッ場ダム本体着工の条件である「利根川水系河川整備計画への八ッ場ダム計画の組み入れ」を目的とした「利根川の治水安全度と目標流量」に関するパブリックコメントを5月25日~6月23日の期間で実施中ですが、一昨日行われたヒアリングでは、民主党の議連メンバーより、このパブコメに関して厳しい意見が相次ぎました。
 出席したのは、川内博史、平智之、初鹿明博、宮崎岳志、大河原雅子、若井康彦、中川治ら衆参議員と国交省担当職員二名、財務省担当職員一名でした。民主党の国会議員らからの意見は、次の通りです。

・かつては工事実施基本計画によってダム計画が進められていたが、平成9年の河川法の改正により、河川整備計画がダム計画の上位計画として策定されることになった。なぜ、河川整備計画が必要とされることになったのか、国交省関東地方整備局のパブリックコメントの説明では、わからない。説明が必要だ。

・利根川の河川整備計画の策定作業をどのように進める予定であるのか、スケジュールが一切明らかにされていないのはおかしい。フローチャートを示してほしい。(前回のヒアリングの際には、パブリックコメントが近々行われることは明らかにされていなかった。)

・この間の八ッ場ダムをめぐる動きは、大飯原発の再稼動問題と同じだ。関東地方整備局は唐突に、「利根川の治水安全度と目標流量」に関するパブリックコメントを開始すると発表したが、利根川の有識者会議の人選にあたり、議連では「八ッ場ダムを推進してきた人物が委員長なのはおかしい」と委員長の差し替えを含め、八ッ場ダムを疑問視する識者を入れて真に利根川流域の住民の安全を守るための議論をするよう求めてきたが、国交省はこれに応えないままだ。これでは順序が違う。このパブコメは止めるべきだ。

・国交省は利根川の治水に関する学術会議の検証を根拠に、自ら示している治水安全度、目標流量は正しいと主張しているが、これらの数字が推定に推定を重ねたものであることは、学術会議も認めている。推定による数字は、係数によって幅があるもので、本来は一つの数値ではない。河川整備計画の策定に当たっては、治水安全度をどの程度にするか議論し、どの程度まで流域住民がリスクを負うのか、流域住民が決めるべきだが、今回の関東地方整備局のやり方は、八ッ場ダム本体着工を目的としたもので、本来の目的が忘れ去られている。

・今回のパブコメは、治水安全度と目標流量の数字が示され、これの可否を問うだけだ。全国の他の河川ではどうなっているのか、治水安全度や目標流量がどの程度であれば、水害は実際にどの程度発生する可能性があるのか、国交省の説明では何も分からない。

・国交省は今回のパブコメで何を期待しているのか? 治水安全度や目標流量の数字に異論があることは、これまでも指摘されてきたが、そうした意見を全く受け入れず、「単に治水安全度を最大にします。これでいいですか?」という聞き方はどうなのか。安全性は高いにこしたことはなく、事情を知らない人は、「安全性が高いならよいだろう」と思うかもしれない。だが実際は、数字を上げればダムの正当性が高まり、税金もかかる。また、「治水安全度」の数字が高いからといって、安全性が高まるかどうかも疑問だ。ダム事業によるマイナス面、財政負担、他の事業へ税金を投入できないなどの条件も示す必要があるだろう。このままでは、国民には判断のしようがない。

・最初に有識者会議の人選を公正に行い、その有識者会議がどのようなパブコメを実施するのかを話し合う必要がある。国交省が何でも勝手に決めるのはおかしい。

・国交省職員の皆さんは、ダムを造ることが仕事だから、ダムを整備するための理論をつくられるのは当然のことだ。だが、ダムを造るための理論を提示して、国民の意見も聞いてやるから言え、というパブコメのやり方はおかしいのではないか。

・利根川の河川整備計画が策定される前に、国交省が財務省に本体予算を求めることがないことは確認した。(財務省は官邸の判断がなければ、判断できない。)

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 関連記事を転載します。

◆朝日新聞群馬版 2012年6月8日 
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581206080001

 -目標流量の数値など疑問視ー

 八ツ場ダム(長野原町)建設見直し派の民主党国会議員でつくる「八ツ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」が7日、都内で総会を開いた。

 利根川水系の河川整備計画策定に向けた手続きで、国土交通省関東地方整備局が掲げた目標の数値などに疑問の声が相次いだ。

 河川整備計画策定は、藤村修官房長官による昨年12月の「官房長官裁定」で、本体着工を認める条件の一つとされた。

 整備局は現在、計画の前提となる治水の目標を示し、意見募集している。70~80年に1度の洪水を防ぐため、八ツ場ダムなどの事業を進め、基準点の伊勢崎市八斗島地点の目標流量を毎秒1万7千トンとするとしている。

総会で、宮崎岳志衆院議員(群馬1区)は「数値が適当かが論点だったはず だ」、議連事務局長の初鹿明博衆院議員(東京16区)は「妥当だと言い切っていて、検討しようがない」などと指摘。これに対し、国交省の担当者は、裁定でも目標流量の検証が求められているとし、「丁寧にプロセスを踏む観点からの意見募集だ」と説明した。

 また、賛否両派での構成も検討されている有識者会議について、「本当に反対派も入れるのか」とただす声も出た。議連は今後、官房長官裁定の条件が満たされない限り、本体工事予算を執行しないことの確認を羽田雄一郎国交相に求めていくという。(牛尾梓)

◆上毛新聞 2012年6月8日

 -河川整備計画 国交省に聴取 八ッ場ダム民主議連ー

 民主党の「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」(会長・川内博史衆院議員」は7日、国会内で総会を開き、八ッ場ダムの予算執行の前提条件とされる利根川水系の河川整備計画の進捗状況などについて、国土交通省からヒアリングをした。国交省は今後、同計画の目標流量設定の際に、ダム建設に反対する有識者からも意見を聴く意向を明らかにした。
 国交省の担当者は、計画策定に向け、現在流域住民らを対象に意見募集を行っていることを報告。計画策定における同省の基本的な考え方を説明した。
 国交省側は同日、有識者会議に反対派の学識経験者を入れることについては「方法を詰めている」と明言を避けた。