2012年7月30日
このたび、「八ッ場ダムをストップさせる茨城の会」が所属する「茨城県の水問題を考える市民連絡会」(*注)が橋本昌茨城県知事に公開質問書を提出しました。
茨城県は、利根川流域の1都4県と共に、八ッ場ダム事業に参画しています。八ッ場ダム事業の主目的は「利根川下流部の洪水軽減」(治水)と「都市用水の供給」(利水)ですが、茨城県では水問題に取り組む多くの団体から、八ッ場ダム事業に参画する県の姿勢に対して疑問が高まっています。
茨城県が県民に対して、八ッ場ダム事業に負担金を支出している説得力のある説明をしない中、この質問書は県民が八ッ場ダム事業のどこに疑問を抱いているかを明らかにしており、茨城県が八ッ場ダム事業に参画する根拠を改めて問う内容となっています。
*「茨城県の水問題を考える市民連絡会」には、以下の団体が所属しています。
NPOアサザ基金、霞ヶ浦導水事業を考える県民会議、利根川の水と自然を守る取手連絡会、新しいつくばを創る市民の会、水道問題を考える土浦市民の会、八ッ場ダムをストップさせる茨城の会、農民運動茨城県連合会、つくばほっとネット(順不同)
公開質問書に先立って、5月25日に提出された茨城県知事宛の要望書↓
上記要望書に対する橋本知事の回答(6月13日付)↓
公開質問書の全文を以下に転載します。
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茨城県知事
橋 本 昌 様
平成24年7月27日
茨城県の水問題を考える市民連絡会
代表:船津 寛 濱田篤信
事務局長:神原禮二
茨城県取手市白山1-8-5
[公開質問書]
茨城県の水需給政策の見直し要望書への回答について質問いたします。
この度はご多忙にも関わらずご回答いただけましたこと深く感謝申し上げます。
ただ誠に残念なことは、私たちの要望の趣旨をお汲み取りいただけず、通り一片の回答で済まされたことです。
私たちの要望は、水需要の減少実績と将来人口の減少という、避けて通れぬ変化を踏まえてのものでした。しかるにご回答は、実績も将来予測も黙殺され、旧態依然とした回答にとどまりました。急激なしかも永続的な人口減少は、これまで経験のなかったことです。こうした未曾有の状況を前に、人口増大を前提とした旧来の計画を顧みることもなく、政策立案時の理由を得々と語られる様は、一県民として、一納税者として戦慄するを禁じ得ません。
さらに残念なことは、水需要の実績はもとより、県人口の急激な減少は「茨城県総合計画」において県自身が予測しておられることです。つまり、すべてを承知の上で、なお「一度決められた計画は何が起きても継続する」ということなのでしょうか。
私たちは主権者として、県政に係る県民の義務として、今回のご回答をもって納得する訳にはまいりません。改めて下記の通りご質問いたします。また、本質疑は広く県民が知るべきものと存じ、公開質問書とさせていただきます。
ご回答は恐縮ですが、20日以内に文書にてお願い申し上げます。
[質問項目]
1 要望書には逐条的に申し上げておりませんが質問いたします。
平成23年4月には改訂前の「茨城県総合計画」が発表されています。そこでの人口予測では、現行の「いばらき水のマスタープラン」の達成年度人口(2020年)297万人を12万人も下回る285万人と想定しています。さらに2035年には245~255万人まで減少するとしています。こうした状況を自ら把握しながら、何故、八ッ場ダム検証の場に現行マスタープランをそのまま「長期水需要計画」として提出されたのですか。
2 私たちは、「平成25年度に実施が予想される新・いばらき水のマスタープランの策定にあたっては、水需要の実績と人口減少を真正面から捉え、将来の水需給を現状より減少する計画にすること」と要望いたしました。
回答は、現在、国が行っておりますダム事業の検証結果などを見極めた上で、「いばらき水のマスタープラン」の改訂を行うかどうかを検討してまいりたいと考えておりますとしています。以下ふたつ質問をいたします。
①水需給計画とは、将来に亘る水需要を予測して、それを満たすべく供給計画を立て「水需給計画」とするのではありませんか。しかるに供給が決まらない限り水需給計画が立てられないとは、水源開発ありきの水需給計画になりませんか。
②「いばらき水のマスタープラン」の改訂を行うかどうか検討してまいりたいとは、これ程の水需要の減少が予測されながら、改訂しないということもあるのですか。
3 私たちは、「上記を踏まえ、無用となる霞ヶ浦導水事業、八ッ場ダム、思川開発、湯西川ダムから撤退すること」と要望いたしました。
回答は、それぞれの事業については、利水・治水の両面から必要であると考えておりますとしています。以下質問いたします。
①要望書に記しましたように水需要実績、将来人口の激減を踏まえた回答とは思えません。それでもなお水源開発が必要とお考えなら、合理的な回答=将来人口の激減があってもなお水源開発を必要とする「水需要予測」をお示しください。
②治水について質問いたします。それぞれのダムの治水効果をお訊ねしたいところですが、八ッ場ダムに代えて質問いたします。
八ッ場ダムの治水効果は先の八ッ場ダム検証の場では、八斗島地点の効果は1,176m3/秒としています。その後の情報公開では下流に行くに従い「河道貯留など」により治水効果は減衰し、取手より下流では1/10以下になるとしています。同計算では実際に古河地点、
取手地点、潮来地点で毎秒何m3の治水効果になるか、水位は何mm下がるか、計算式を添えてお答えください。
③河口132km地点(古河市)は、関東地方整備局の試算では1/5洪水で破堤するとしています。過去60年間に同地点は何回破堤しましたか。この試算を受けて県はいかなる対策を講じていますか。
④去る7月11日の共同運動と県ご担当との話し合いの席上、八ッ場ダム検証の場で用いられた河川整備計画相当の治水安全度1/70~1/80、目標流量17,000m3/秒は法的根拠がないと回答されました。また八ッ場ダム検証検討および検証結果=「八ッ場ダムは継続が妥当」は、茨城県として同意してないとも回答されました。後日、回答されたご担当に回答は県の公式見解と受け止めてよいか」と確認したところ「公式見解と受け止めてよい」と答えられました。改めて問います。両者は県の公式見解として受けとめて宜しいですか。
4 私たちは、「水源開発、およびそれに伴う浄水場など給水設備の増強をとりやめ、首都圏で最も高い水道料金の引き下げを図ること」と要望いたしました。
回答は、企業局の水道料金は、施設整備のための借入金の償還や維持管理費、また今後の施設改築等の費用を考えながら、長期的な展望に立って設定しております。
企業局の水道料金については、企業債の償還や施設改築事業などに要する費用を勘案しながら定期的に見直しを行っているところですが、今後も、適切な料金を設定してまいりたいと考えております。
市町村の水道料金の引き下げについては、水道事業を運営する市町村等が判断することであり、県として回答する立場ではないと考えておりますとしています。
以下質問いたします。
①企業局の水道料金が長期的展望に立っておられるなら、ここ10数年の水需要実績の減少傾向、将来人口の急減をベースにお考えになれば、自ずと水源開発の見直し、撤退を図るべきではありませんか。
②借入金の返済、企業債の償還、施設の維持管理費・減価償却などを考えれば、過剰な水源開発や浄水場などの増強を中止させ身軽になるべきではありませんか。
③水道料金が市町村の裁量であることは確かですが、本年4月、県南の首長は再び連名で「水道供給料金の引き下げ」要望書を県知事宛てに提出いたしました。前回は県西、県中央も提出いたしましたが、今回を含め、どの要望書も「水道供給料金の引き下げ」を表題にしていますが、内容は水需要の減少と将来人口の減少に苦慮していることは明らかです。要望書の本意は「過剰な供給契約の見直し」と読むべきでしょう。前回の要望書提出の折、企業局幹部が「そんなに供給料金の引き下げを求めるなら、供給契約の見直しを求めればいいのだ。我々は市町村の要望を満たすために水源開発をしている。水源開発をすればその維持費・減価償却費がかかるのだ」と語りました。図らずも真相を吐露しました。茨城県の水道料金が高いのは、水源開発費用、それに伴う浄水場などの増強費用、維持管理費、減価償却費が嵩み、県の水道料供給料金が高くなり、結果として市町村などの水道料金が高いのではありませんか。つまり「責任引取り制」が元凶だと思いませんか。
5 以上ご質問いたしましたように、茨城県の水需給は人口の急減というまったく新しい局面を迎えました。最早従来の政策手法は通用しないものと存じます。失礼ながら、これまでの「いばらき水のマスタープラン」も、改訂というより破たんの繰り返しでした。現行のマスタープランもまた「茨城県総合計画」が破たんを証明しています。
これまでの「いばらき水のマスタープラン策定委員会」を見直し、市民を加え公開の場で行うお考えはございませんか。 以上