野村ダムと鹿野川ダムの放流による肱川の水害(その2)

 7月豪雨で9人(野村ダムの放流で5人、鹿野川ダムの放流で4人)の命を奪った、愛媛県を肱川のダム放流問題が引き続きニュースで取り上げられています。

 肱川の野村ダムと鹿野川ダムの放流問題については、放流当時の流入量と放流量のグラフと解説を以下のページに掲載しています。 
「ダムがあるために避難の時間が失われた(肱川の水害)」

 放流問題についての国交省による検証委員会の情報は、こちらに掲載しています。
「国交省、肘川上流ダムの緊急放流についての検証始める」

◆2018年7月13日 時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018071300734
ーダムから大量放流、被害拡大=大雨で増水、基準6倍超-住民「説明足りない」・愛媛ー

  愛媛県では大雨により増水したダムから大量の放流をしたことが、下流にある肱川の氾濫につながった。行政側は「ダムがなければさらに被害は拡大していた」と説明するが、被災住民からは「事前の説明がない」と憤る声が上がる。情報周知に課題を残した。

 鹿野川ダムのある大洲市。ダムから約1.5キロ下流で料理店を営む岩田美保子さん(59)は7日午前7時ごろ、スピーカーから「放流します。川岸に近づかないで」と流れるのを聞いた。放流はいつものことで普段通り過ごしていたが、約1時間後に川からあふれた水が自宅に迫り、慌てて高台に逃げて助かった。「一気に何千トンも流す時はもっと分かるように言って」と憤る。
 さらに上流の西予市野村町には野村ダムがある。7日被災した同地区の男性(77)は「朝の時点では何も聞かなかった。いっぺんに放流するからこんな事態になる」。障害のあるおじが浸水した家に取り残されたという女性(53)は「警報を鳴らしても分からない人や聞こえない人がいることも考えて」と訴えた。

 何が起きていたのか。二つのダムを管理する国土交通省四国地方整備局によると、鹿野川ダムではこの日、放置すれば決壊する恐れもあったことから、流入量とほぼ同じ量を下流に流す緊急操作を午前7時35分に実施。最大で、安全基準の6倍を超える1秒間に約3700トンの水を放流した。
 野村ダムでも午前6時20分から同様の操作を行った。担当者は「放流量を増やすことで川の氾濫は予測できたが、避難を促すのは市の役割。洪水被害の直接の原因は想定外の豪雨だ」と話す。

  野村ダムを抱える西予市は午前5時すぎ、防災行政無線で住民に避難指示を発令。その後も複数回行い、避難誘導もしたという。担当者は「最大限の対応はした」と強調する。
 一方で、国交省が大洲市の住民向けに緊急速報メールで「河川氾濫の恐れ」と配信したのは、大量放流開始後の午前8時40分だった。
 愛媛大防災情報研究センターの矢田部龍一教授は「ダム放流による洪水災害は、住民が自分のことだと認識しているかが問題。流域の学校での防災教育など積極的な取り組みが必要だ。的確な情報発信や伝達に関し、いま一度検討する必要がある」と語った。

◆2018年7月13日 テレビ朝日
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000131679.html?r=rss2
ー「ダム放流」と連絡…なぜ避難指示まで2時間半も?ー

  愛媛県西予市では、ダムの放流で川が氾濫して5人が死亡しています。市が避難指示を出したのは国土交通省から「危険な放流をする」と連絡を受けてから2時間半以上経ってからだったことが分かりました。

 西予市を流れる肱川の上流にある野村ダムは、7日午前6時10分から安全基準の3倍を上回る量の水が放流され、ピーク時には約6倍に達しました。下流の西予市野村町で川が氾濫して5人が死亡しました。ダムを管理する国交省四国地方整備局は、この放流について西予市に対して午前2時半以降、複数回、連絡したということです。しかし、西予市が避難指示を出したのは2時間半以上経っていました。
 西予市・管家一夫市長:「(Q.避難指示なぜ2時間半後?)避難をしてもらうためには避難所も作らないといけないし、消防団で声を掛けて頂く態勢も作らないといけないし。暗い、真っ暗なということもあってそういうことになった」
 野村町の被災者:「やっぱり遅かったといえば、遅かったのかも分からん。避難指示というのが」「遅い。何もかも後手後手に回っています。向こうのダムから連絡があった時に皆を避難させていたら死者も1人も出なかった」

◆2018年7月12日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13581464.html?iref=pc_ss_date
ー肱川のダム放流、事前基準の6倍 西日本豪雨ー

 愛媛県の肱(ひじ)川で上流のダムの放流量を増やした後、下流域で氾濫(はんらん)し、5人が死亡するなどの被害が出たことを受け、ダムを管理する国土交通省四国地方整備局が11日、記者会見を開いた。野村ダム(西予市)と鹿野川(かのがわ)ダム(大洲市)の放流量が、洪水を防ぐ事前放流の基準量の約6倍に上っていたことを明かした。

 通常、ダムへの流入量が増えると、野村ダムは毎秒300立方メートル、鹿野川ダムは毎秒600立方メートルまで放流量を上げる。しかし、今回は両ダムとも過去最大の流入量を記録し、野村ダムで毎秒1797立方メートル、鹿野川ダムで毎秒3742立方メートルの水を放流した。その後、西予市で肱川が氾濫し、5人が亡くなった。

◆2018年7月12日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201807120065?sns=2
愛媛豪雨災害 国交省・西予市、野村ダム放流時間巡り 事前伝達認識食い違い

 西予市野村地域で死者5人を出した7日の肱川(宇和川)氾濫で、野村ダムが流入量と同量の水を放流する異常洪水時防災操作の事前伝達について、国土交通省野村ダム管理所と市の認識が異なることが11日、複数の関係者の話で分かった。管理所は放流開始の30分前倒しを「午前3時40分ごろまでに伝えた」との見解だが市関係者は4時半すぎと説明している。

 国交省四国地方整備局が11日に大洲市で開いた記者会見の説明では、7日午前2時半ごろに管理所長が、西予市野村支所の支所長に電話で、操作実施は不可避で毎秒千トンを超える放流を6時50分ごろ始める見通しと連絡。雨量が予測を超えたため、3時11分には開始見通しが6時20分になったと伝えた。数回通話し3時40分までに終えたとしている。

 一方で市関係者によると同2時半ごろ、管理所長から支所長に「6時50分をめどに放流を行う」と連絡があった。支所長は市危機管理課に電話報告し市役所へ移動。同3時半から管家一夫市長と協議して避難指示判断を受け、電話で支所職員に消防団招集と避難所の開設準備を指示した。5時半発令が目安だった。

 管理所長から支所長に「開始が30分繰り上がる可能性があり水量も増える」と連絡があったのは4時半すぎ。支所へ戻る途中の車内だったという。

 5時時点で避難所受け入れが可能となり消防団員も集まったため、5時10分に前倒しして防災行政無線で2回避難を呼びかけた。5時半、6時1分にも同様の放送を行い、消防団員はポンプ車や車で各家庭を回り避難を呼び掛けた。市によると野村地域の防災行政無線は、屋外設備に加え戸別受信機を配布している。

 支所長は取材に対し「コメントは控える」としている。

【水ためすぎたか/安易に考えていた 住民ら】
 肱川に架かる長さ約118メートルの大成橋が増水で破壊された大洲市森山の大川地区。住民らによると、橋近くの集落は上流の野村ダム(西予市)、鹿野川ダム(大洲市)完成後、3度目の浸水被害に遭った。

 2004年に床上約30センチ、05年に床下浸水だった家は、今回1階が全て水没。2度の浸水被害後にかさ上げされた堤防を濁流は軽々と乗り越えた。家主の男性(76)は「3回目となると、ダムの存在が不要に思えてくる」と途方に暮れた。目前には根本から折れた大きな橋脚があり、すさまじい水圧を物語っている。「ダムなしで自然に流しとってくれた方が、たとえ大水になっても納得できるかもしれない」

 津波のように押し寄せた水で、集落では1人が逃げ遅れて亡くなった。別の男性(72)は「大雨になると分かっていたのに、(鹿野川ダム)上流の野村ダムが水をためすぎていたのでは。事前にもっと減らせなかったのか」といぶかしむ。

 介護施設職員の女性(66)は、初めての浸水に命からがら逃げた。7日朝、雨はやんでいた。「避難せよ、避難せよ」。命令口調の市の防災放送がはっきりと耳に残る。「よそもひどい被害だから、ダムの問題だけじゃなく、雨も山から出る水も今までと違う量だったんじゃろう」と受け止める。軒に残った泥水の痕を見て「うちは漬かるわけないと安易に考えとった。もっと早く準備しとけば大事なものも守れたのに」とつぶやいた。

 一方、野村ダム近くの西予市野村町では、防災行政無線の効果にもばらつきがみられた。

 同市野村町野村の無職の男性(71)は「避難指示の放送は聞こえなかった。普段からなんといっているのか聞こえづらい」と打ち明け、消防団の訪問で避難を始めたという。

 ただ消防団員の話しぶりに緊急性は感じられなかったといい「行政から消防団にもっと緊急事態であるように伝えておくべきだったのではないか。こんな被害になるとは思わなかった」と話した。

 同所の主婦(80)は「放送で避難の準備に取りかかった。貴重品など荷物をまとめていると消防団員が避難するよう伝えに来て、慌てて主人と車で避難した」と振り返った。