茨城の会通信 西日本豪雨の現地調査報告と鬼怒川水害訴訟

 八ッ場ダムをストップさせる茨城の会よりお送りいただいた最新の通信138号を転載(一部省略)させていただきます。
 耐越水堤防の復活に取り組む建設省OB、石崎勝義さんによる「水問題の現場から…西日本豪雨の現地調査報告」と8月7日に提訴された鬼怒川水害裁判の特集です。

2018年8月20日発行

 「水問題の現場から…西日本豪雨の現地調査報告」
             報告者:石崎勝義(鬼怒川水害裁判を支える会共同代表)
 
 西日本でまた大きな豪雨災害が起きました。岡山県倉敷市真備町(まびちょう)で50人以上の人が逃げ遅れて亡くなるという痛ましい水害が起きました。
 大水害を引き起こす堤防決壊がなぜ繰り返されるのか? 倉敷市真備町の水害について考えてみました。

1 支流でも起きた堤防決壊 
 真備町の堤防決壊は 今回早い時間からテレビなどで報道されました。当初、小田川で3ヶ所の決壊が報じられましたが 次第に堤防決壊が支流でも多数起きていることが判明しました。
 
 下図=国土地理院の地図に石崎加筆
 

 その決壊箇所ですが 高馬川(たかまがわ)合流地点の堤防決壊は小田川左岸堤防のほか支流高馬川でも決壊していたことがわかりました。また支流、末政川(すえまさがわ)でも小田川からかなり離れて町の中を流れる位置で左岸 右岸2ヶ所で大きく決壊していることがわかりました。決壊場所の写真では近所に住宅が密集しており、被害が大きかったことが窺がわれます。
 これは意外でした。今回の堤防決壊の特徴は小田川本川だけでなく、末政川・高馬川という2つの支流で起きているということです。
 しかし それは水理的に考えれば当然といえます。小田川と支流の間に水門はありません。支流の途中で、もし堤防が低ければそこから越流が始まり決壊に至るでしょう。水は低きに流れる。大量の水が支流から市街地に流出すれば それを補うべく小田川の洪水が逆流してくるので、決壊箇所からの流出は長く続くに違いありません。
 それでは二つの支流、末政川・高馬川の堤防には何か決壊しやすい理由があるのでしょうか。次にそれを考えてみましょう。

2 治水地形から見た真備町  
 まず気が付くのは、真備町の高梁川(たかはしがわ)と小田川に囲まれた地域は治水地形区分でいうところの氾濫原になっています。氾濫原の中には特に地盤が軟弱な旧河道や湿地が含まれています。
 このあたり常総あたりの鬼怒川の地形とよく似ています。末政川・高馬川はこれらの地形を横断して流れています。両支流とも花崗岩地帯から真砂土の供給を受けて天井川の様相を示しています。

 下図=国土地理院 治水地形地分類図より
 

                                       
 軟弱地盤上の堤防はしばしば沈下します。鬼怒川でも堤防が決壊した上三坂地区では堤防沈下量が確認されただけでも50センチメートルを超え この地点で河川水が堤防を超えて決壊に至りました。
 真備町の場合支流の堤防の高さはまだ入手していませんが 2万5000分地図にある末政川堤防上の標高で小田川の堤防より低くなっているところがあります。堤防の沈下が生じている可能性があります。
 
3 堤防という名前の砂山が放置されている。
 堤防が決壊した付近の市街地を歩いていて妙なことに気が付きました。堤防決壊の現場から流れ出した土砂がまだあちこち堆積していました。その印象が全体に白ッぽく感じられるのです。そうだ これは砂だ、真砂土(まさど)に違いないと思いました。
 堤防を築くときに使う材料として 砂は望ましいものではありません。現在は砂だけを使って盛土をすることはないと思いますが、かつては砂であっても、近くで調達できることを良しとして築堤材料として使いました。
 砂でできた堤防で裏法が越水に対して無防備の堤防は砂山と同じです。
 このことを指摘した宮本博司さんは
「堤防決壊に対して抵抗力を増す対策があるにもかかわらず、耐越水堤防強化を実施しないということは、行政の重大な不作為である。」
といっておられます。注)
注)宇沢弘文・大熊孝編『社会的共通資本としての川』 東京大学出版会

 今回訴訟が提起された鬼怒川においても事情は同じです。
 異常気象のおかげで大雨が起こりやすくなった今 全国に存在する危険極まりない堤防が放置されたままでよいでしょうか。国の反省を促したいとおもいます。          
 小田川の河川敷には樹木がご覧のように鬱蒼と繁茂しています。この樹木が洪水の流下の妨げになった可能性があります。

 
鬼怒川水害被害者
 国に損害賠償を求め訴状を提出。8月7日午前11時。先の137号でもお知らせした鬼怒川水害の被害者は、水戸地方裁判所下妻支部へ訴状を提出しました。原告は30名(法人1を含む)、賠償額は総額約3億5000万円にも上る大きなものとなりました。当日は時間前からテレビカメラ数台を含む多くの報道陣が待ち受け、関心の高さを示しました。

 提出後、坂本博之弁護団共同代表は提訴の趣旨を説明(同封の水害ちらし参照)。只野靖弁護団事務局長は報道陣の質問に「近年は全国各地で集中豪雨による水害が続出している。今回提訴した鬼怒川水害は、調べれば調べるほど人災の側面が強いと考えている。国には事実関係を明らかにしてもらいたい。そして、今回の裁判によって同じように苦しんでいる人たちのためにも、国が治水の在り方を見直すきっかけになればいい」と答えました。

 第1回裁判集会は下妻図書館で開催。坂本弁護団共同団長は、原告のみなさんに「鬼怒川水害は、明らかに国の河川行政の瑕疵です。これまで集団訴訟の場合は通常賠償額を一律化するが、今回は、水戸地裁下妻支部前の原告団、家屋の違い、家財、商品、農作物、設備、休業補償、慰謝料など多岐に亘ることから個別に積算しました。その額が約3億5000万円になったわけです。第1回の裁判は11月頃になるでしょう。原告のみなさんの意見陳述の機会を得るためにも時間をたっぷり取りたい。裁判は長丁場になりますが一緒に頑張りましょう」と呼びかけました。

 鬼怒川水害裁判を支える会の共同代表である石崎勝義さんは「私は建設省の技術者だった。洪水でも簡単に決壊しない堤防技術は完成していた。それを無きものにしてしまった。文書もすべて隠滅してしまった。鬼怒川水害はこうした国の不誠実の結果だと思う」と語り唇を噛みしめていました。原告団共同世話人の片倉一美さんは「当初は茫然としていた。被害者の会に入り、水害の原因を知った。国は本当に好き勝手している。今の国会も同様だ。議員会館での国との交渉でも、役人に国民を守るという気持ちがまったく感じられなかった。本当に許せない」と訴えました。
 その後、東京地方裁判所の司法記者室に移り全国報道のため記者会見。長く充実した1日を終えました。

鬼怒川水害裁判を支える会にご参加ください。
 「鬼怒川水害裁判を支える会」が活動を始めました。目的は、自分のためだけではなく、被災者すべてのために立ち上がった原告を支えること。そして支える会の会員に逐次裁判情報をはじめ関連する情報の提供にあります。みなさまのご参加をお願いします。

■年会費:一口1000円(何口でも) カンパもお受けします。
■郵便振込先:鬼怒川水害裁判を支える会 振込番号:00250-1-88810
■お問合せ:事務局長 染谷修司 090-8497-7209 

八ッ場ダムをストップさせる茨城の会 代表:濱田篤信 船津寛
事務局:神原禮二 〒302-0023取手市白山1-8-5 携帯:090-4527-7768