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淀川水系・大戸川ダム早期着工要望、 西日本豪雨災害に便乗

 大戸川ダムは国交省近畿地方整備局が2005年に一旦は中止方針を公表しながら、2009年に今後20~30年の淀川水系の目標を示す河川整備計画に位置づけた、曰くつきのダム事業です。当時、大戸川ダムを河川整備計画に位置付けることに反対して声明を出した嘉田由紀子滋賀県知事、橋下大阪府知事、山田京都府知事の退任後、事業推進の動きが目立っています。

◆国土交通省近畿地方整備局 大戸川ダム工事事務所
 https://www.kkr.mlit.go.jp/daido/index.html

 大戸川ダム建設は凍結されているとはいっても、工事事務所が温存され、関連工事が続けられ、工事ニュース(右)も毎月発行されています。

 淀川水系では桂川の日吉ダムが今回の豪雨で満水になり、洪水調節機能を失いました。桂川で氾濫を防ぐことができたのは、5年前の嵐山での水害を経て、流域住民が一致団結して国交省に河道掘削を求め、河道掘削が大きな効果を上げたためとされます。
 2005年に国交省近畿地方整備局が大戸川ダム事業の凍結を決めたのは、専門家がダムより安価な方法で治水効果を上げられると結論付けたためでした。ダムに偏重してきた河川行政の問題が露呈した今回の西日本豪雨から何も学ばないどころか、自治体の首長らがこれに便乗してダム事業を推進しようとしているのですから、河川行政の転換は容易ではありません。

◆2018年8月30日 産経新聞
http://news.livedoor.com/article/detail/15231499/
ー大津市の大戸川ダム早期着工を 豪雨対応で要望相次ぐー

  滋賀県内13市の市長でつくる県市長会(会長・山仲善彰野洲市長)は29日、大津市内で定例の会合を開いた。

 大きな被害をもたらした7月の西日本豪雨を踏まえて豪雨時の対応が話し合われ、その中で建設凍結中の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)の早期着工を求める意見が相次いだ。

 会合には瀬田川洗堰(あらいぜき)を管理する国土交通省琵琶湖河川事務所や近畿地方整備局、琵琶湖の排水施設を管理する水資源機構の担当者も出席。

 瀬田川洗堰は大雨などの際、琵琶湖下流の天ケ瀬ダム(京都府宇治市)への流入量が一定値を超えると全閉し水の流出を止めることとなっており、県内の自治体からは反発も根強い。

 近畿地方整備局は、現在天ケ瀬ダムの改修を進めているとし、「大戸川ダムがあれば天ケ瀬ダムの流入量も減り、(支流の)合流点も流れやすくなる」と述べた。

 出席した市長らからは「大戸川ダムは淀川に大きな影響があり、欠くことができない。ぜひお願いしたい」などと、早期着工を求める声が上がった。

 また、県は今年度、大戸川ダム建設による効果を独自に検証する勉強会を設けており、進捗(しんちょく)状況についての質問もあった。

 県の担当者は「西日本豪雨と同様の線上降水帯が県内で起きた場合の想定も追加し、年内に2回目の勉強会を開催するよう作業を行っている」と回答した。

 一方、大雨などの際の県との連絡態勢について「避難準備情報や避難勧告にも関わるので、瀬田川洗堰の操作がどうなるか、説明会を開くなどしてしっかりと教えてほしい」などと不満の声も上がった。

 県や琵琶湖河川事務所など各機関の連携についての質問もあり、県は今後議論を進める考えを示した。