八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムコンクリート打設9割と、建設通信新聞

 八ッ場ダムのコンクリート打設高がダム堤の9割に達したと報道されています。
 
 以下の記事では、2009年の政権交代に伴い、八ッ場ダム事業が中止されたとされていますが、民主党政権下でも八ッ場ダム事業は継続され、毎年100億円以上の予算が計上されていましたので、これは事実ではありません。

 ダム建設の技術は大きく向上しており、この記事でもスピード施行が大きく取り上げられています。
 確かに巨大ダムは川の流れを遮ることはできますが、水を貯めるだけでなく、上流から海に流れ着くはずの土砂も溜め込んでいきます。河川環境や海岸線にも影響する、こうした深刻な問題は、最新技術をもってしても解決されていません。
 また八ッ場ダムは、「利根川の洪水調節」を主目的としていますが、利根川の支流である吾妻川中流に建設される八ッ場ダムが、利根川の洪水を軽減するという国交省の説明は、科学的根拠が曖昧なものです。実際、八ッ場ダムの治水負担金を支払うことになっている利根川流域下流都県では、八ッ場ダムの治水効果は誤差の範囲でしかありません。
 国交省がPRするように、八ッ場ダムが治水、利水の役に立つのであればよいのですが、役に立たないのであれば、何のための技術か、ということになります。

◆2018年11月18日 建設通信新聞
https://www.kensetsunews.com/web-kan/259566
八ッ場ダム堤体のコンクリート打設9割完了 清水建設ら

 国土交通省関東地方整備局が群馬県長野原町に、清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステム異工種JVの施工で建設を進めている八ッ場ダム。本格的に堤体のコンクリート打設を開始してから約2年、驚異のスピード施工で既に9割程度を打ち終え、堤高は110mに達した。名勝吾妻峡の紅葉に包まれ、大詰めを迎えている建設現場を訪ねた。

  カスリーン台風による甚大な被害を受け、旧建設省がダム事業の調査に着手したのは1952年。難航する地元交渉、近年では政権交代に伴う事業中止など、紆余(うよ)曲折を経た八ッ場ダムはようやく最終局面に入った。
 清水建設JVが手掛ける本体工事では、大幅な工期短縮を実現する「巡航RCD工法」を採用した。土砂のようにパサパサしたスランプゼロの堤体内部用コンクリートを先行打設し、打設効率の低い有スランプの外部用コンクリは独立・後行打設する。これにより高い打設効率を維持し、日平均打設時間は従来のRCD工法に比べ約3時間増えた。
 内部コンクリはダンプで運搬後、ブルドーザーで敷きならし、振動ローラーなどで締め固める。この現場では、最高で月6万m3の打設を記録した。機械化の一方で、表面は人の手で整えるなどして品質確保に万全を期した。
 また、クレーンやバッチャープラントなどコンクリート打設・製造設備を大型化。標準案に比べ、最大の搬送能力を2.4倍、製造能力を2倍に高めた。監査廊やエレベーターシャフト、張り出し部などにはプレキャストを活用し、打設休止日数を短縮した。
 1つが350tに上る常用洪水吐設備は、堤体上流側に設置した大型構台上であらかじめ組み立て、堤体が所定の高さに達したタイミングで引き込んだ。この工夫により、打設休止日数を72日から11日へと大幅に減らせた。

 原石山から採取した骨材は、全長9㎞に及ぶベルトコンベヤーでダムサイトに運ぶ。ダンプ輸送をやめ、土ぼこりや騒音を抑制した。4種類ある骨材の粒径判別には画像処理技術を導入。この試みは、内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した国交省のプロジェクトにも採択されている。
 素人目にはコンクリートをひたすら打つと思われがちな重力式ダムだが、清水建設JVの平塚毅統括所長は「実は非常に繊細で、機能に応じてたくさんの種類のコンクリートを使い分けている」と話す。堤体の内部・外部、プレキャスト周りなどでそれぞれ異なり、それらを「混然一体に“縫い”合わせている」

 さらに、目には見えないものの、岩盤内に水が浸透しないよう、セメントミルクを注入して亀裂を埋めている。地中に張り巡らされたグラウトカーテンの深さは、ダム本体の高さに匹敵するという。
 現場に従事する作業員はピーク時600人、現在も500人ほどが昼夜交代で24時間稼働している。八ッ場ダムは、かつてないほど工事中から注目を集めてきた建造物で、毎日多くの見学者が訪れる。建設業界のみならず、世間一般からの関心も非常に高い。
 「もともとあった自然を壊してしまったのは確か。しかし、人々の安全・安心も守れる新たな自然が生まれ、多くの人に愛されることを願っている」。平塚統括所長はこんな思いを抱きながら、きょうも現場の指揮を執る。
 八ッ場ダムは、来春の本体完成、来秋の試験湛水開始を目指している。

〈ダム諸元〉
▽型式=重力式コンクリートダム
▽堤高=116m
▽堤頂長=290.8m
▽堤体積=約100万m3
▽流域面積=711.4km2
▽総貯水容量=1億0750万m3
▽有効貯水量=9000万m3
▽洪水調節容量=6500万m3
▽目的=洪水調節、新規都市用水の供給、流水の正常な機能の維持、発電

写真下=名勝・吾妻峡で建設中の八ッ場ダム。上流の湖面橋・八ッ場大橋より撮影。2018年11月14日。

写真下=ダム下流の旧国道、長野原町と東吾妻町の町境付近から撮影。2018年11月14日。