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石木ダム訴訟の控訴審始まる 地権者らが陳述

 石木ダム事業認定取消訴訟の控訴審が12月19日に始まりました。
 ダムをめぐる裁判は、ダム事業者に有利な判決が続いています。石木ダムの裁判でも、ダムの不要性などの原告住民の訴えは、司法によって中身に立ち入ることなく退けられてきました。石木ダム予定地に今も住み暮らす13世帯の住民のドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」が全国で上映され、理不尽なダム事業を疑問視する世論が高まっています。裁判の行方が注目されます。

 19日の控訴審について、石木川まもり隊のブログが詳しく伝えて下さっています。5人の原告の意見陳述も掲載されています。
 http://ishikigawa.jp/blog/cat01/4626/
 地権者、意見陳述「ダムに翻弄」

 関連記事を転載します。

◆2018年12月20日 朝日新聞長崎版
 https://digital.asahi.com/articles/ASLDM4F32LDMTOLB008.html?iref=pc_ss_date
 -石木ダム訴訟の控訴審始まる 地権者らが陳述ー

 長崎県と佐世保市が川棚町で計画している石木ダム建設の事業認定取り消しを国に求めた訴訟の控訴審の第1回口頭弁論が19日、福岡高裁であった。地権者2人を含む原告側の5人が法廷で意見陳述し、十分審理して認定を取り消すよう求めた。次回期日は来年3月11日。

 石木ダムは2013年、国に事業認定された。国が認定判断の根拠にした佐世保市の水需要予測は過大だなどとして、地権者ら100人超が15年に提訴。一審の長崎地裁は今年7月、原告側の訴えを全面的に退ける判決を出し、原告側が控訴していた。

 この日の陳述で地権者の石丸勇さん(69)は「必要性がないダム計画の犠牲になることは、どうしても受け入れられない」、水源開発問題全国連絡会の遠藤保男共同代表(74)は「事業認定は住んでいる13世帯の人格権の否定」と訴えた。

 弁護団3人も陳述し、佐世保市による水需要の予測や、県が算出した水流の量や建設費用に対する便益の比率について疑問を投げかけた。馬奈木昭雄弁護団長は「事実をありのままに見て審理を」と求めた。

 法廷終了後には集会があり、原告で地権者の岩下和雄さんは「私たちは寒いなか、予定地で抗議行動を続けている。裁判に勝って工事中止に追い込みたい」と訴えた。(福岡泰雄)

◆2018年12月19日 NHK長崎
 https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20181219/5030002846.html
 -石木ダム訴訟 2審始まるー

 川棚町で建設が進められている石木ダムについて、建設に反対する地権者などが国に事業の認定の取り消しを求めた裁判の2審が福岡高等裁判所で始まり、水没する予定の地域に住む原告は「ダム問題がなければ自然豊かで平穏な地域だった。事業が適正だと信じられない」と訴えました。

石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に285億円をかけて川棚町に建設を進めているダムで、3年前反対する地権者など100人余りが「ふるさとが奪われる」などと、国に事業認定の取り消しを求める訴えを起こしました。

1審の長崎地方裁判所は「石木ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のための必要性がある」として、訴えを退ける判決を言い渡し、地権者が控訴していました。

19日から2審の裁判が福岡高等裁判所で始まり、水没する予定の地域で3世代にわたり生活してきた原告の石丸勇さん(69)が「ダム問題がなければ自然豊かで人情が厚い平穏な地域でした。1審は私たちを愚弄した事実から目を背けた判決です。ダム事業が適正なものであると私には信じられません」と意見を述べました。

次回は来年3月に開かれます。

◆2018年12月20日 長崎新聞
 https://this.kiji.is/448312052564116577?c=39546741839462401
ー石木ダム控訴審「住民翻弄されてきた」 第1回口頭弁論 地権者側 意見陳述ー

  長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対地権者ら108人が国に事業認定取り消しを求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が19日、福岡高裁(西井和徒裁判長)であった。地権者側は意見陳述であらためて事業の中止を訴え、国側は引き続き争う姿勢を示した。
 一審の長崎地裁は7月、原告側が「不合理」と主張していた佐世保市の水需要予測や県の治水計画はいずれも「合理性を欠くとはいえない」とし、ダムの必要性を認定。原告の請求を退けた。
 原告側は控訴理由書と準備書面で、地裁判決は利水、治水の必要性の両面で「論理的な矛盾や根拠のない事実認定がある」と反論。地権者の石丸勇さん(69)は意見陳述で、ダム事業の影響で地域コミュニティーが破壊され、住民が翻弄(ほんろう)されてきたと主張。「代替地に移転すれば地域のコミュニティーは再現可能」とした地裁判決について「移転した仲間を含む私たちを愚弄(ぐろう)し、事実から目を背けている」と訴えた。原告弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は「(行政と住民の)合意形成を目指せるような審理を切望する」と求めた。
 国側は事業認定の手続きは適正として、棄却を訴えた。原告側は今後、佐世保市の水需要予測と、実際の給水量の乖離(かいり)などを追及する方針。次回期日は来年3月11日。