水没関係5地区の会合、ダム完成後の関連施設の維持管理を議論

 昨日の上毛新聞社会面に掲載されていた記事をお伝えします。
 以下の記事でも触れている八ッ場ダムの生活再建事業の進捗状況についての国交省資料は、以下のページの2ページ目に掲載されています。
 →「八ッ場ダム事業の進捗状況(2019年3月末現在、国交省資料)

◆2019年6月7日 上毛新聞 (紙面記事より転載)
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/137091
ーダム完成見据え施設管理議論を 八ツ場・水没関係5地区が会合ー

 八ツ場ダムの水没地区の住民で構成する八ツ場ダム水没関係5地区連合対策委員会(桜井芳樹委員長)は6日、群馬県長野原町役場で会合を開いた。町や県、国交省八ツ場ダム工事事務所の職員や地域住民ら約50人が出席し、本年度の事業計画案や予算案を承認した。

 同事務所の担当者が、生活再建事業の進捗状況を説明。川原湯地区にアウトドアレジャー施設、川原畑地区のダムサイト公園に売店を整備することなどを報告した。県の担当者は、高崎方面へのアクセスが向上する大柏木トンネルが来年度中に完成する見通しを示した。

 桜井委員長はダム建設に伴い整備される各種施設について、「11施設のうち10は町の所有。運営次第で町全体の負担になる。ダム完成後を見据え、何に取り組むべきか真剣に考えなくてはいけない」と強調した。

 会合はこれまで基本的に非公開で行われてきたが、ダム完成が本年度中に迫ることを受け、町全体で情報共有を図ろうと一部を公開にした。

—転載終わり—

 水没関係五地区連合対策委員会は、八ッ場ダムで全地区が水没する吾妻川下流側の川原湯地区と川原畑地区、一部が水没する上流側の林地区、横壁地区、長野原地区の住民の代表組織です。対策委員会の委員長は、2015年まで横壁地区の萩原昭朗氏が務めていましたが、萩原氏の死去に伴い、2016年以降、長野原地区の桜井氏が委員長になりました。

 かつて地元のダム反対運動は、全水没の川原湯地区が中心でしたが、対策委員会の委員長は二代続けて非水没地から出ています。
 長年のダム事業により、水没地区は大きな犠牲を払ってきましたが、ダム完成後はダム事業でつくられた町道、地域振興施設、公共下水道など、膨大な施設の維持管理が人口5000人余りの長野原町の負担となります。

 桜井委員長は草津温泉のホテル櫻井の社長であり、グループ会社は観光客になじみの大型ドライブイン、浅間酒造なども経営しています。最近の上毛新聞では、陰の町長ともいわれる桜井氏が、ダム事業の結果生じる維持管理の負担問題に言及している発言をたびたび取り上げています。

 長野原町では、2009年に発足した民主党政権が「八ッ場ダム中止」を選挙公約に掲げた際、町ぐるみの中止反対運動が起き、署名活動も行われました。中止反対運動の根拠として当時盛んに流布されたのは、「八ッ場ダムが中止になれば、長野原町は”第二の夕張になる”」という憶測でした。
 八ッ場ダムが完成すると、国有資産等所在市町村交付金法に基づくダム所在交付金が長野原町の収入となりますが、ダムが中止になればこれがなくなり、町の財政が破綻するということでした。

 しかし、ダム所在交付金は将来的には次第に減額されます。また、交付金の収入があると、地方交付税が減らされます。したがって、ダム所在交付金による長野原町の収入は、実質2~3億円と考えられます。(参照➡「ダム所在交付金」

 長野原町は群馬県の他の山間地の自治体と同様、今後、人口が大きく減少していくと予想されています。八ッ場ダム事業でつくられた様々な施設の維持管理は、長野原町にとって大きな負担になっていくにちがいありません。
 
 

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写真下=水田の奥で建設中の体育館と完成予想図。横壁地区の小倉にて、2019年6月6日撮影。水没五地区各地区に整備される「地域振興施設」の一つ。

写真下=林地区には地域振興施設として道の駅「八ッ場ふるさと館」が開業しているが、さらに水没文化財保存センターが整備されることになっている。このあたりは地盤がよくないことで知られている。

写真下=ダム湖予定地の上流端には、草津温泉の玄関口である長野原草津口駅(JR吾妻線)がある。現在、駅に隣接して、背後の山にある駐車場とつなぐエレベーターを建設中(写真の左手)。
 駅には長野原地区の地域振興施設として、食堂やみやげ屋が入る「長野原・草津・六合ステーション」(白い二階建ての建物)が整備されたが、この日は定休日だった。
 長野原草津口駅と東京・上野駅は特急草津で結ばれており、同駅の一日平均乗車人員は普通列車も含め700人を超えるが、ダム事業の駅前整備事業で周辺の食堂や土産物屋がなくなり、「長野原・草津・六合ステーション」以外に店舗はない。

写真下=吾妻川に架かる鉄橋を通り、長野原草津口駅に向かう特急草津。かなたに草津白根山がうっすら見える。特急草津は手前の川原湯温泉駅にも停車していたが、ダム予定地にある川原湯温泉を訪れる観光客が減少し、2017年のダイヤ改正以来、停車しなくなった。

写真下=JR川原湯温泉駅前から伸びる町道の脇で工事中の川原湯地区の地域振興施設。グランピング(豪華なキャンプ場)などが整備されることになっている。