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長崎県事業評価監視委員会、石木ダム完成3年延長を承認

 長崎県が強行している石木ダム事業は、現在の工期が2022年度ですが、まだ本体工事にも着手しておらず、2022年度完成は到底不可能であることから、このほど工期の三年延長を事業評価監視委員会に諮りました。

 石木ダム事業は治水面(川棚川の洪水調節)でも利水面(佐世保市の水道用水の供給)でも不要であり、行政代執行によってダム建設に反対する13世帯の住民を立ち退かせなければダムは造れないという点を「事業評価」「監視」するのが委員会の本来の役目の筈ですが、「事業評価監視委員会」は、行政が進める事業について行政の説明を聞くだけで、三年延長を承認しました。

 9月19日に石木ダムの事業者である長崎県と佐世保市が、すべての事業用地を強制収用したことから、NHKは今もダム予定地で生活を営む住民を、これまでのように「地権者」ではなく、「元地権者」と呼んでいます。委員会を傍聴された住民が、事業者の説明を聞くだけなのはおかしいというのは、本当にその通りです。公共事業を客観的にチェックする仕組みがないわが国では、ダム事業の暴走を止めるすべがありません。

 長崎県公共事業評価監視委員会のお粗末な委員名簿は以下の通りです。
 https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/machidukuri/kokyo-jigyo/httpwww-doboku-pref-nagasaki-jphyokaindex-html/httpwww-doboku-pref-nagasaki-jphyokameibo-html/

大嶺 聖 副委員長 長崎大学大学院工学研究科教授 技術分野
井上俊昭 委員長 前新上五島町長 地方自治分野
梅本國和 委員 弁護士 法律分野
中村政博  委員 ㈱長崎経済研究所取締役調査研究部長 経済分野
山本緑 委員 保健医療経営大学准教授 環境分野
岡美澄 委員 公募委員 その他
五島聖子 委員 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科教授 その他

 関連記事を転載します。

◆2019年9月30日 NHK長崎放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20190930/5030005577.html
ー石木ダム 完成3年延期方針承認ー

 長崎県川棚町に建設が進められている石木ダムについて、県は関連工事に遅れが出ていることから、30日開かれた県の委員会にダムの完成時期を3年延期する方針を示し、承認されました。

長崎県と佐世保市が令和4年度の完成を目指し川棚町で建設を進めている石木ダムをめぐっては、県の収用委員会がダム建設に必要なすべての用地を強制的に収用できるようにする裁決を下し、今月19日、用地の所有権が地権者から国に移りました。

ただ、ダムに水没する県道の付け替え工事では、建設に反対する住民らによる座り込みの影響などで遅れが出ていることから、県はダムの完成時期を3年延期し令和7年度に見直すことになりました。

そして県は、30日開かれた有識者らによる「県公共事業評価監視委員会」でこうした方針を説明し、事業の再評価を行った結果、費用対効果は多少下がったものの、治水の面では、依然としてほかの方法よりも有利だと評価できるとして、事業を継続すべきだという対応方針案を示しました。

委員からは、強制収用に至るいきさつなどについて質問が出されたものの、対応方針案は原案通り承認されました。

完成時期の延期は、これで9回目になります。

今後は、県とともに建設を進める佐世保市が、水利用の計画を見直すなど利水の面から事業の妥当性を再評価するかどうかが焦点の1つになります。

委員会を傍聴した、元地権者の岩本宏之さんは「結論ありきの委員会だと感じた。県はメリットしか説明しないので、委員には、県と地元住民の両方から意見を聞いてほしかった」と話していました。

◆2019年9月30日 NBC長崎放送
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190930-00002923-nbcv-l42
ー石木ダム完成時期3年延長へ [長崎]ー

 県の公共事業を再評価する委員会がきょう長崎市で開かれ、川棚町に計画されている石木ダムについて工期を3年延長し完成予定を2025年度として事業を継続することが認められました。

 この委員会は県の公共事業のうち採択から長期間が経過したものについて外部の有識者らが検証を行うもので、会場には石木ダム建設予定地に住む反対住民らも傍聴に駆けつけました。
 この中で、県の担当者は反対住民らの行動で付け替え道路工事が遅れており工期を延長せざるを得ないものの、ダムは川棚川の治水対策に必要不可欠なため事業を継続したいと説明。
 これに対し委員から反対意見は出ず、工期を3年延長し完成予定を2022年度から2025年度として事業を継続することが認められました。
石木ダム建設予定地の所有権は土地収用法に基づき反対住民の土地を含めすでに国に移っており、建物を含む土地の明け渡し期限は11月18日に迫っています。

◆2019年9月30日 テレビ長崎
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190930-00010004-ktn-l42
ー石木ダムの完成は3年延期し2025年度に…県が方針 当初から46年遅れで見直しも9回目ー

 長崎県は住民などが住む土地を強制収用し建設事業を進めている川棚町の石木ダムについて、完成時期を3年延期し2025年度とする方針を示しました。
 長崎市で開かれた公共事業の再評価などを行う事業評価委員会が開かれ、川棚町の石木ダム事業について審議しました。
 石木ダムの審議は規模の見直しや事業が半世紀近くに渡ることなどから、9回目となります。

 事業を進める長崎県側は関連の道路工事などが遅れているとして、完成時期をこれまでの2022年度から3年延期した2025年度とする方針を示しました。
 見直しは9回目で、当初の1979年度から46年の遅れとなります。

 長崎県側は、洪水被害の防止や水道用水の確保など、ダム事業の目的を改めて説明すると、委員はダムの治水面が機能するのか質しました。

 委員 「四国のダムだったと思いますが、緊急放流によって下流域の浸水がひどかったというニュースを見たが、石木ダムについてはその危険性、可能性は」

 長崎県側は「ダムは100年に1度の雨を想定し建設している」として、安全性などを強調しました。

 地権者 岩本 宏之 さん 「今回で(審議は)9回目、ずっと(工期を)伸ばしてきている。県の説明は、当然メリットの部分だけを言っている、隠されたデメリットがある両方を聞いて判断すべき」

 長崎県の見直し案に対して委員からは異議は出ず、事業の継続を認める決定を出しました。