石木ダムの完成3年延期、住民ら憤り、長崎県は本体着工に前のめり

 こちらのページでお伝えしたように、長崎県公共事業評価監視委員会は石木ダムの工期3年延長をいとも簡単に了承しました。

 今回の再評価では、石木ダムの費用対効果が1.25から1.21になりましたが、いずれにせよ1を超えているということで、ゴーサインが出ました。しかし、石木ダムの費用対効果の計算は恣意的な計算であって、現実に合わせて計算すれば、1を大きく下回り、石木ダムは見直すべき事業となります。
 現実と乖離した費用対効果(B/C)の計算を根拠に事業が正当化されることは、ダム事業では当たり前になっています。八ッ場ダム事業では、2009年の事業評価ではB/Cが3.4でしたが、2013年の再評価では6.5に跳ね上がりました。2016年には八ッ場ダムの事業費が4600億円から5320億円に増額され、これに伴う再評価では6.3でした。この時、B/Cが少し下がったのは増額のためですが、事業費が720億円も増額されながらB/Cの下げ幅がさほどでもないのは、治水効果(洪水調節便益)の計算結果が前回より4000億円以上も引き上げられたからです。ダム事業者の都合の良いようにいくらでも数字を作り出し、それを根拠に事業を正当化するのですから、住民が憤るのも当然です。
(→参考ページ「国交省の八ッ場ダム再評価(2016年11月22日)」

 長崎新聞の報道によれば、長崎県の担当課(河川課)は、来年度にも本体工事に着手したいと話したということです。知事以上に前のめりな河川課は、誰に忖度しているのでしょう。

◆2019年10月1日 朝日新聞長崎版
https://digital.asahi.com/articles/ASM9Z6D4FM9ZTOLB017.html
ー延期の石木ダム「必要か」 反対住民が批判ー

  約半世紀前に国に採択された石木ダム事業は、完成目標時期が、さらに3年延期される見通しとなった。反対住民からは、ダム事業の必要性を疑問視する声が上がった。

 30日に長崎市で開かれた県公共事業評価監視委員会で、県が新たなスケジュールを示した。2020年度にダム本体工事を着工し、25年度の完成をめざすというものだ。工期の延長により、事業の費用対効果の数値は悪化するが、「治水対策には必要不可欠な事業」だとして、事業の継続を委員会に諮った。

 監視委の委員を務める大学教授や元自治体首長らからは、ダム建設による環境への影響や、想定を超える雨量への対応などについて質問が出たが、事業の必要性を問うような質問は出ず、約1時間半の議論の後、県の原案通りに了承した。

 会場には、反対住民や支援者ら37人が傍聴に駆けつけた。ダム事業に反対する7団体は9月下旬、委員あてに事業の問題点を指摘する文書を送り、「県民が意見を述べる機会を作ってほしい」と要請していたが、この日、反対派が発言する機会はなかった。

 傍聴した住民の岩本宏之さん(74)は「事業のデメリットも聞いて委員は判断してほしかった」。委員会の議論については「短時間で、形式的なものだった」と突き放した。

 「石木ダム建設に反対する川棚町民の会」代表で住民の炭谷猛さん(68)は取材に「9回も延期しないといけない事業に、そもそも必要性があるのかをただしてほしかった。それは、私たち住民だけでなく、世間の理解を得られていないということ」と話した。委員会は、国の補助事業の再評価を行うのが目的だが、「延期をそのまま受け入れるだけでは、再評価の名に値しない」と批判した。(小川直樹、原口晋也)

◆2019年10月1日 長崎新聞
https://this.kiji.is/551593185819575393?c=62479058578587648
ー石木ダム 完成目標延期 反対派「現場を見ろ」 事業継続に憤り、失望ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で県は30日、県公共事業評価監視委員会に完成目標を3年延期して事業を継続する方針を諮問し、承認された。事業継続に、建設反対派からは憤りや失望の声が上がった。
 審議は長崎市内のホテルであり、用意された約40の傍聴席は建設予定地の住民や支援者らで埋まった。ダム事業の必要性を説明する県に対し、傍聴席からは時折「数字を示せ」「ウソをつくな」といったぼやきが漏れた。委員会がダム事業の継続を承認すると、「ちゃんと現場を見に来い」などとやじが飛んだ。
 傍聴した反対13世帯の一人、岩本宏之さん(74)は事業継続について「想定していた内容。知事の言ったことは認めないといけないのだろう」と冷ややか。工期変更については「中村法道知事の(3期目の)任期(2022年3月まで)中に行政代執行について判断したくないのでは」と推測した。
  ダム問題について考える「いしきを学ぶ会」実行委員の森下浩史さん(72)は工期変更を受け「これから市民の関心を高め、政治分野に踏み込めるかが焦点になるだろう」と話した。

https://this.kiji.is/551418592780190817
ー石木ダム完成3年遅れ 2025年度に目標延期ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、県は30日、2022年度としてきた完成目標を25年度に3年延期する方針を県公共事業評価監視委員会(井上俊昭委員長、7人)に諮問し、承認された。事業は継続する。県によると、建設工事の進捗(しんちょく)が計画より遅れているためという。石木ダムの当初の完成目標は1979年度だった。延期されるのは9回目。

 石木ダムを巡っては9月、県と同市が反対13世帯の宅地を含む全ての未買収地約12万平方メートルの権利を取得。家屋など物件を含まない土地が対象だった9月19日に続き、物件を含む土地の明け渡し期限が11月18日に設定されている。完成目標延期で反対住民との交渉を進める考えとみられる。
 諮問で、県は延期の理由について、ダムに水没する県道の付け替え道路工事が反対派の座り込みなどで遅れ、ダム本体の工程にも影響する見通しになったためとした。新しい工程によると、完成目標は、付け替え道路工事とダム本体工事が24年度、その他の工事と試験湛水(たんすい)が25年度とし、現行目標よりそれぞれ3年ずれ込む。
 有識者らでつくる同委員会は県が実施する公共事業について知事の諮問に応じて審議する県の付属機関。30日は長崎市内で開いた。県は延期に加え、延期などに伴い費用対効果を1.25から1.21に下方修正した上で事業を継続するとの対応方針を示した。委員からは環境への影響や住民に対する説明状況などの質問が上がり、県の方針を原案通り承認した。同委員会は議論を踏まえ、中村法道知事に意見書を提出する予定。

https://this.kiji.is/551592230770492513
ー石木ダム 完成目標延期 推進派は先行き懸念 長崎県、来年度本体着工の意向ー

  長崎県公共事業評価監視委員会が30日、9度目となる石木ダムの完成目標年度の変更を承認したことを受け、建設推進派からは今後の行方を懸念する声が漏れた。
 「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長は「早期完成を求めているが、3年延ばすのは県の事情があるのだろう。私たちは待つしかない」と言葉少なに語った。

 石木ダムを巡っては、土地収用法に基づき県と佐世保市が9月、反対13世帯の宅地を含む全ての未買収地約12万平方メートルの所有権を取得した。明け渡しに応じない場合、今後は行政代執行を巡る動きが焦点となる。
 行政代執行の対応を判断する中村法道知事は30日、中国出張中。委員会の審議終了後、県河川課の浦瀬俊郎課長は報道陣に「工事が妨害によって遅れている。来年度から本体工事を一部着工したい」と説明し、「住民の生活再建に努める」と述べた。佐世保市と東彼川棚町はコメントを控えた。
 一方、同委員会の井上俊昭委員長は取材に「反対する人の気持ちも分かるが、既に移転した人の思いも大切にする必要がある。行政代執行だけは避けられるように、粘り強い話し合いを続けてほしい」と話した。