八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

台風19号の大雨、八ッ場ダムを一昼夜でほぼ満水に

 10月12日に関東地方を直撃した台風19号は、八ッ場ダム周辺にも記録的な大雨を降らせました。
 台風襲来前は、水没地の鉄橋などシンボリックな建造物や美しい景観が徐々に水底に沈んでいく様に多くの観光客が足を止めて見入っていたのですが、一日にして出現した満々と水をたたえたダム湖は地元の人々にとっても観光客にとっても衝撃的でした。写真右=10月13日撮影

 翌13日は日曜日でしたが、国土交通省八ッ場ダム工事事務所は記者発表を行っています。(以下、太字は当会による)

◇国土交通省関東地方整備局 記者発表 2019年10月13日
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kyoku_s_00000334.html
「令和元年台風19号における八ッ場ダムの試験湛水状況について」

●現在、八ッ場ダムにおいては、ダムの本格的な運用を始める前に、実際に水を貯めてダム堤体および貯水池周辺の安全性を確認するため、試験湛水を実施しているところです。

●台風19号の影響により、長野原観測所では累加347ミリメートル※1の降雨を観測しました
 ※1:10月11日2時~13日5時(時間最大37ミリメートル 12日18時)

●この降雨により、八ッ場ダムにおいては、総貯留量約7,500万立方メートル、最大流入量約2,500立方メートル/秒を貯め込み、ダムの貯水池は518.8メートルから573.2メートルまで、約54メートル※2水位が上昇しました。
 ※2:10月11日2時~13日5時

●今回のダムへの流入水を貯留したことにより、まもなく平常時最高貯水位(常時満水位)まで到達する見込みとなっております。
このため、今後は水位維持の操作に移行いたします。

10月12日撮影の動画

◆2019年10月14日 上毛新聞(紙面記事転載)
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/166515
ー試験湛水中の八ッ場ダム 一気に満水近くー

  国土交通省八ツ場ダム工事事務所は13日、台風19号による大雨で試験湛水中の八ツ場ダム(長野原町)の水位が急上昇して満水位(標高583メートル)に近づいたため、同日午後4時から放流を実施した。今月1日の試験湛水開始から3、4カ月かけて満水にする計画だった。11日午前2時に518.8メートルだった水位は、13日午後2時半には約59メートル上昇して577.5メートルになった。

ー八ツ場ダムが水害防止に? 水位急上昇 SNSで話題ー

 「この水が流れたらどうなっていたのか」。一夜で満水近くになったダム。会員制交流サイト(SNS)では下流域での水害防止に一役買ったのでは、と話題になった。

 ダム周辺には13日、町内外から大勢の人が足を運んだ。町内に住む豊田昭次郎さん(78)は「今朝、館林に住むめいから無事だと連絡が来た。もしダムがなければ利根川が氾濫し、自宅が水没していたかもしれない。ダムの存在価値は見直されたと思う」と話した。

 一方、渋川市中郷から訪れた男性(61)は「ダムが一夜で満杯になるとは思わなかった。今後も防災の役割を果たしてくれるか心配」と不安をのぞかせた。

 利根川の氾濫抑止に今回、八ツ場ダムがどの程度効果を発揮したかは詳細な検証が必要となるが、台風19号の関東直撃は同ダムの治水機能に対する多くの人の関心を高めた。

◆2019年10月13日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20191013-OYT1T50060/
ー八ッ場ダム、一気に「満水まで10m」…台風で54m上昇ー

 国が来春の運用開始を目指し、今月1日に貯水試験を始めた八ッ場ダム(群馬県長野原町)の水位が、台風19号による大雨で急上昇した。国土交通省関東地方整備局の速報によると、13日午前5時現在の水位は標高573・2メートルとなり、満水時の水位(標高583メートル)まで10メートルほどに迫った。台風によるダムの被害は確認されていない。

 八ッ場ダムでは、満水にした後に最低水位の536メートルまで下げていき、ダム本体や周辺の斜面の安全性を確かめる試験湛水たんすいが始まっている。国交省は、最高水位に達するまで「3~4か月かかる」とみていたが、周辺では11日未明から13日朝までに累計347ミリの雨が降り、山間部から流れ込んだ水でダム湖の水位は約54メートルも上昇した。水没予定地に残された鉄橋も11日時点では見えていたが、完全に水の底に沈んだ。

 満水時の水位に近づいたことから、国交省は「今後は水位維持の操作に移る」としている。

—転載終わり—

写真下=ダム堤の右岸側に造成された川原湯地区の打越代替地。貯まったばかりの水は、湖畔にある川原湯温泉の移転代替地とともに夕陽を浴びていた。以下の写真3点、10月13日撮影。

写真下=川原湯地区・打越代替地の温泉街ゾーン。右手の尾根の林の中に共同湯・王湯会館。水面すれすれの斜面の工事はまだ終わっていない。

写真下=JR川原湯温泉駅付近から見える湖面には、流木や発泡スチロールなどのゴミが浮いていた。

写真下=湖面橋の橋脚にはダムの満水位の標高と天端の標高が青色とオレンジ色で表示されている。14日午前8時過ぎの段階では、583メートルまであと数メートルに迫っていた。