八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム、試験湛水開始から2週間余で貯水率100%到達

 10月12日に関東地方を直撃した台風19号は、八ッ場ダム周辺にも記録的な大雨を降らせました。
 10月1日に試験湛水を始めた八ッ場ダムについて、ダムを管理する国交省関東地方整備局は3~4ヶ月かけて満水になるとの見通しを示していましたが、13日の記者発表で約7,500万立方メートルを貯め込んだことを伝え、15日の記者発表で貯水率が100%に達したことを明らかにしました。満水状態を約一日継続、その後は一日1メートルの範囲内で水位を下げていくとのことです。
写真右=八ッ場大橋(湖面橋)より下流側のダム堤を望む。10月14日撮影。

 このまま順調に進めば、試験湛水は12月上旬ごろに完了するとのことですが、ダム本体はエレベーター棟などの工事が残っているため、来年3月のダム完成予定は変わらないとのことです。

 試験湛水では水位を下げる時、ダム湖周辺の地盤が不安定になりやすいとされていますが、急激な水位の上昇は地盤にどのような影響を与えているのでしょうか。八ッ場ダムの関連工事は今も続いており、湖面すれすれのところでも各所で重機が作業を続けています。

(太字は当会による)

◇国土交通省関東地方整備局記者発表 2019年10月15日
 八ッ場ダムの試験湛水において貯水率が100パーセント(平常時最高貯水位)に到達しました
 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kyoku_s_00000371.html

 八ッ場ダムでは、ダムの本格的な運用を始める前に、令和元年10月1日より試験湛水を開始しております。
 令和元年10月15日午後6時頃に、平常時最高貯水位(常時満水位)標高583.0メートルに到達し、貯水率が100パーセントとなりましたので、お知らせします。
 この試験湛水は、実際に水を貯めて、ダム堤体および貯水池周辺の安全性を確認するために行っているもので、現在のところ異常は確認されておりません。
 今後、満水状態を約1日継続したのち、1日1メートル以下のスピードで水位を最低水位まで降下させ、試験湛水を完了することとしており、引き続き、安全性の確認を実施してまいります。

【令和元年(2019年)10月15日時点の試験湛水状況】
水位状況 貯水位を維持(安全性の確認中)
貯水位 標高583.0メートル
貯水率(貯水量/有効貯水容量の割合) 100パーセント

 八ッ場ダム工事事務所のホームページには、同じく15日に次の情報が掲載されました。

◆2019年10月18日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASMBF55ZJMBFUHNB01N.html
ー八ツ場ダム、一昼夜でほぼ満水 試験貯水中に突然の変貌ー

 国が来春の完成を目指し、利根川上流の吾妻川で試験貯水中の八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)が12日から13日にかけ、一昼夜でほぼ満水になった。台風19号による記録的な大雨の影響。ダムの一夜城のような変貌(へんぼう)ぶりに、周辺には観光客らの人だかりができた。

  前橋地方気象台によると、ダム上流の同県嬬恋村田代で11日午後2時ごろからの48時間に、年間降水量の3分の1相当で観測史上1位の442ミリを観測するなど、記録的な雨が降った。

 国土交通省の発表では、八ツ場ダムには11日午前2時から13日午前5時の間に約7500万立方メートルの水が流入した。この結果、水位は54メートル上昇。その後も水量が増え、15日午後6時ごろ、満水位に達した。今月1日からの試験貯水では3~4カ月で満水位まで水をためる予定だったが、半月で満水になった。

 計画上は、降水量が増える7月1日~10月5日の洪水調節容量は6500万立方メートルで、今回はそれを上回る水が流入した。実際に運用していれば、10月6日以降は下流都県の水道用水などの確保のために水位を上昇させる時期のため、さらに洪水調節容量は少なかった可能性がある。

 国交省関東地方整備局の藤田正・河川情報管理官は「試験中でなければ(ためる余裕がなく)増水による下流への放流もあったかもしれないが、今の時点では利根川の治水上、八ツ場ダムに一定の効果があったとみている」と話す。

 ダム本体近くの川原湯地区で飲食店を営む水出耕一さん(65)は「12日の朝に見たときと全く違っていて一夜城のよう。少しでも下流の人たちの役に立ったなら、ダムを受け入れた地元も報われる」と話した。(丹野宗丈)

◆2019年10月16日 上毛新聞 (紙面より転載)
ー八ッ場ダム満水 試験湛水、年内にも完了ー

 水をためて安全性を確認する試験湛水中の八ッ場ダム(長野原町)について、国土交通省八ッ場ダム工事事務所は15日、常時満水位(標高583㍍)となり、貯水率が100%に達したと発表した。満水状態を約1日継続した後、2カ月弱かけて最低水位(同536.3㍍)まで下げる。台風19号による大雨で、想定よりも早く水がたまったため、順調に進めば年内にも試験湛水が完了する見通しとなった。

 今月1日から始まった試験湛水は、水位を上下させて堤体や貯水池周辺の安全性を確認する。当初は半年程度かけて年度内に終える予定だったが、地滑りなど異変が確認されなければ、12月上旬ごろに完了する。

 同事務所によると、台風19号の大雨に伴い、貯水池の水位は急上昇。12日(午前9時時点)は522.7㍍だったが、13日(同)には50㍍程度上昇し575.4㍍となった。満水位に近づいたことから、同日午後4時から水位維持のための放流を開始した。水位の急激な上昇に伴う異常は、現時点で確認されていない。

 ダム本体は建屋などの工事が残っており、年度末を完成予定とするスケジュールは変わらないという。

◆2019年10月17日 読売新聞群馬版(紙面より転載)
ー八ッ場ダム満水にー

 今月1日に貯水試験を始めた八ッ場ダム(長野原町)の水位が15日午後6時ごろ、満水時の水位(標高583メートル)に達した。

 国土交通省の同ダム工事事務所は、これから2か月かけて安全性を確認しながら最低水位(同536メートル)まで下げ、試験が完了する見込み。以降は状況をみて貯水量を調整していく。ダム本体はエレベーター棟などの工事が残っており、来年3月の完成予定は変わらないという。

 同事務所は満水に達するまで「3~4か月かかる」とみていたが、台風19号による大雨で今月11日未明から13日朝まででダム湖の水位は約54メートルも上昇し、ほぼ満水状態となっていた。

—転載終わり—

写真下=八ッ場大橋(湖面橋)の橋脚にはダムの天端の高さ(標高586㍍)がオレンジ色、満水位(標高583㍍)が水色の標識で表示されている。10月14日。

写真下=ダム湖のかなたに、この地域のシンボル的な景観となっている丸岩。道の駅「八ッ場ふるさと館」の脇に架かっている湖面橋、不動大橋より10月14日撮影。

写真下=ダム堤に流れ着いた発泡スチロールを取り除く作業が続いている。10月14日。