自民党、八ッ場ダムの治水効果をPR

 関東地方を直撃した台風19号により、試験湛水中の八ッ場ダムが7500万㎥の雨水を貯めこみ、貯水池は一気に満水となりました。自民党は安倍首相、菅官房長官、二階幹事長が国会答弁、記者会見、現地視察などを通じて、八ッ場ダムが治水効果を発揮したことを示唆し、2009年に発足した民主党政権が八ッ場ダム見直しを掲げたことを批判しつつ、自民党政権のPRに努めています。

(右写真(10/18付け東京新聞群馬版)=左から二人目に二階幹事長、三人目が山本知事、一番右が小渕県連会長)
 このたびの台風では、現時点で関東・東北・中部地方の64河川111カ所の堤防が決壊、死者78名、行方不明者15人と報道され、記録的な水害は今も進行中です。気候変動により、これまでにないような大きな勢力の台風が日本列島を襲う状況で、国土交通省自体が従来の方針の見直しを迫られていると思われますが、八ッ場ダムを自らの政治の成果と誇る自民党には、時代に応じた方針転換は望めそうもありません。

 自民党が八ッ場ダムを最大限利用する一方、旧民主党系の野党の姿が見えてきません。2009~2012年の政権獲得の際、国交省と自民党、土建業者、さらに利根川流域都県知事と議会、地元有力者も敵に回して孤立し、無様な挫折を経験しただけに、八ッ場ダムには近寄りたくないということかもしれませんが、これほどの水害が発生している今、最も高額なダム事業がどれほど役に立ち、どのような問題を抱えているのか、国会で明らかにすることが野党の使命ではないでしょうか。
 八ッ場ダムは16日午後6時より、地すべり等の危険性を確認する目的で、貯水位低下のための放流を始めています。

 民主党政権がダム見直し方針を掲げた時は、「八ッ場ダム」が注目を集めましたが、残念ながらクローズアップされたのは政治ネタの側面のみでした。八ッ場ダム問題は、ダム事業の受益者とされる利根川流域住民にとって、命を守るための治水、ライフラインとしての水道に直結するテーマです。今回の水害を踏まえ、治水について真剣な議論が始まることが望まれます。

◆2019年10月15日 産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/191015/afr1910150015-n1.html
ー【台風19号】自民が対策本部会合 「八ッ場ダムが氾濫防止に」の報告もー

 自民党は15日午前、台風19号の影響で広範囲にわたり被害が出ていることを受け、災害対策本部の会合を党本部で開いた。出席者からは、早期の激甚災害への指定や被災地のライフライン復旧を求める声が相次いだ。

 二階俊博幹事長は会合で「一日も早く(被災者が)元の生活ができるよう、全国各地から情報収集すると同時に的確な対応をしてもらいたい」と語った。

 群馬県長野原町の「八ッ場ダム」が川の氾濫防止に役立ったとの報告もあった。群馬県選出の国会議員は「民主党政権のときに(ダム建設が)ストップされて本当にひどい目にあった。われわれが目指してきた方向は正しかった」と述べた。

◆2019年10月16日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191016/k00/00m/010/066000c
ー安倍首相「後世の人の命救う」 八ッ場ダムが台風雨水貯留 参院予算委ー

 安倍晋三首相は16日午前の参院予算委員会で、台風19号の雨水を貯留した八ッ場ダム(群馬県)について「財政的な負担は国民が何世代にもわたって対応していかなければならないが、同時に後世の人たちの命を救うことにもなる。そういう環境の中、正しい判断をしていくことが大切だ」と述べ、引き続きインフラ整備に取り組んでいく考えを示した。自民党の松山政司氏の質問に答えた。

 八ッ場ダムについては、赤羽一嘉国土交通相も「本格的な運用前の試験を開始したばかりで水位が低かったため、約7500万立方メートル(の雨水)をためることができた」と説明。「八ッ場ダムがある利根川でも記録的な大雨となり切迫した状況だったが、ぎりぎりのところで(水位の)上昇が止まった」とし、同ダムなどが雨水をためたことで下流の氾濫防止につながったとの認識を示した。

 八ッ場ダムは、旧民主党政権が2009年にダム計画を中止し、11年に再び事業の継続が決まった経緯がある。【浜中慎哉】

◆2019年10月17日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20191017-OYT1T50071/
ー八ッ場ダムで旧民主政権を暗に批判…首相「正しい判断が大切」ー

 参院予算委員会は16日で2日間の基本的質疑を終えた。自民党は台風19号被害に関連し、八ッ場やんばダム(群馬県長野原町)を取り上げて、旧民主党政権が建設中止を一時表明したことを暗に批判した。

 赤羽国土交通相は、八ッ場ダムが利根川の氾濫を防ぐ要因になったとの認識を示し、「住民の安全な暮らしに大きく寄与する」と述べた。これを受け、自民党の松山政司氏が「インフラ整備はキャッチフレーズだけで語るものではない」と指摘し、安倍首相も「大変な財政的負担もあったが、正しい判断をすることが大切だ」と応じた。

◆2019年10月17日 NHK NEWS WEBより一部転載
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191017/k10012136341000.html
ー首相 台風19号を「特定非常災害」に指定へー

・・・また、菅官房長官は、群馬県の八ッ場ダムが水害の発生防止に果たした役割について、「今回の台風では利根川周辺でも記録的な大雨になったが、八ッ場ダムに加えて既存ダムも活用し、雨水をためたことにより、下流の越水を回避することができたと思う。特に八ッ場ダムは洪水調整用に使える容量が極めて大きく、災害を防ぐために極めて大きな効果があった」と述べました。

◆2019年10月18日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/167386
ー下流の水位抑制に「効果上げた」…八ツ場ダム視察の二階氏ー

  自民党の台風19号非常災害対策本部長を務める二階俊博幹事長は17日、試験湛水たんすい中の八ツ場ダム(長野原町)を視察した。国土交通省の担当者の説明を受けた後に報道陣の取材に応じ、「今回の災害において八ツ場ダムが一定の効果を上げた」と話した。

 同省八ツ場ダム工事事務所の朝田将所長が、上流の流域面積は711.4平方キロメートルと利根川水系ダムで最も広く、台風19号により大量の水が一気に流れ込んだと説明。ダムによって吾妻川下流の水位が抑えられたとの声が周辺自治体からあったことも紹介した。

 二階幹事長は「(八ツ場ダムが)地元の皆さんの安心をいただいたというのは重要。ダムは一日にしてできたわけでなく関係の皆さんの長年の苦労があった。教訓や経験を生かし国の防災について一層の努力をしたい」と話した。

 山本一太知事は「八ツ場ダムが災害に果たした役割を注目してもらった。群馬県も被害が出ているので、国の財政支援、激甚災害指定をお願いした」と述べた。ダムの利水と治水のバランスについて、県として研究を始めたことも説明した。

 八ツ場ダムは16日午後6時、貯水位を下げるための放流を開始した。

◆2019年10月18日 東京新聞群馬版 
https://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201910/CK2019101802000184.html
ー八ッ場ダム 二階幹事長が視察 「国の防災一層努力」ー

 自民党の二階俊博幹事長が十七日、長野原町の八ッ場(やんば)ダムを視察した。

 同日正午すぎに到着した二階幹事長は、同行した山本一太知事とともに、八ッ場ダム工事事務所の朝田将所長から試験的に貯水する「試験湛水(たんすい)」の現状についての説明を受けた。

 視察後、二階幹事長は「住民の皆さんのご苦労など長い歴史がある中で、地元の安心に役立ったのはひと安心だ。今回の教訓と経験を大いに生かして、国の防災について一層の努力をしたい」と述べた。

 二階幹事長の視察について、山本知事は「国土強靱(きょうじん)化計画の元祖の二階幹事長に八ッ場ダムが果たした役割に注目してもらえた」と語った。

 その上で、「八ッ場ダムが注目されたのは、試験湛水を始めた状況ではあったが、治水機能を発揮したからではないか。県ではダムの利水、治水機能について研究を始めた。国でも記録的な大雨の教訓からダム政策について考えてほしい」と要望した。

 八ッ場ダムを巡っては、台風19号による被害が多発した中、「八ッ場ダムが利根川を守った」などと称賛する声がインターネット上で上がる一方、洪水対策として疑問視する声も上がっており、賛否が分かれている。(市川勘太郎)

◆2019年10月18日 毎日新聞群馬版
https://mainichi.jp/articles/20191018/ddl/k10/040/051000c
ー八ッ場ダム「治水効果」確認 自民幹事長視察 市民「冷静な議論を」ー

 自民党の二階俊博幹事長が17日、台風19号に伴う記録的豪雨で予定より3カ月以上早く最高水位に到達した八ッ場ダム(長野原町)を視察し、同ダムの「治水効果」を確認した。民主党政権が一時建設中止を表明するなど紆余(うよ)曲折を経た同ダム。二階氏らは視察で、同氏が主導し、政府が推し進める「国土強靱(きょうじん)化」の正当性をPRした。一方、ダム建設に反対してきた市民団体は「科学的根拠に基づく冷静な議論を」と訴えている。【鈴木敦子】

 二階氏らは、国土交通省八ッ場ダム工事事務所の朝田将所長から、来春の本格運用前の安全点検のために実施していた試験湛水(たんすい)の仕組みや、台風19号に伴う水位の急上昇について説明を受けた。その後、二階氏は記者団に「今回の台風でダムが一定の効果を果たし、地元の皆さんの安心に役立った」と評価してみせた。

 今月1日に水をため始めた同ダムは、台風の大雨で15日午後6時に最高水位(標高583メートル)に到達。本格運用前で堆積(たいせき)土砂もないままの「まっさら」の状態のダムは本来の洪水調整容量上限を1000万立方メートルも上回る約7500万立方メートルの水をためたという。

 二階氏に同行した山本一太知事は、県として今回の台風でダムが発揮した実際の治水効果を検証する考えを示した。

 一方、長年、同ダムの建設に反対してきた「八ッ場あしたの会」は、伊勢崎市や埼玉県内の利根川に国交省が設置した水量計の数値と同ダムの貯水量を比較したところ、川の氾濫を防ぐほどの効果はなかったと指摘。事務局の渡辺明子さんは「客観的な数値を無視して政治的立場からダムを礼賛するのは危険だ」と訴えた。


写真下=川原湯温泉が移転した打越代替地を対岸の川原湯畑地区の代替地より撮影。白い発泡スチロールが点々と浮いている。ダムに反対する水没住民に「ダム湖観光」の未来を掲げて説得した自民党は、観光地にふさわしいダム湖の清掃を国交省に要請したのだろうか。10月14日撮影。

写真下=川原湯温泉の共同湯・王湯の跡地周辺のダム湖畔では、町道川原湯温泉幹線道路の工事が続いている。川原湯温泉がダム計画の受け入れを拒否していた1960~70年代には、川原湯区の公民館であった王湯の広間で自民党県連と住民との緊迫した話し合いが行われた。10月14日撮影。

写真下=湖面に浮かぶ流木、タイヤ、プラスチックごみなど。八ッ場大橋(湖面橋)より10月14日撮影。