八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム礼賛に疑問投げかけたネット上の見解

 10月1日に試験湛水が始まった八ッ場ダムが12日の台風19号通過後、満水になったことから、「八ッ場ダムが首都圏を守った」などの言説が広く流布されました。

 今回の台風は関東地方を直撃したため、各地で甚大な水害に見舞われました。台風が襲来するまでは広大な水没予定地が広がっていた場所に、一夜にしてダム湖が出現したのを見ると、これだけの水が下流に流れたら、もっと大きな被害になっていただろうと思うのは無理もありませんが、八ッ場ダムは関東平野から遠く離れた山間部にあり、ダムの治水効果はダムから遠く離れるほど減衰します。見たままの感覚と実際の治水効果は切り離して考えなければなりません。

 八ッ場ダムの洪水調節の対象となっている利根川本川は、首都圏への影響が大きいため、全国の河川の中でも特に予算が優先して投じられてきました。利根川上流ダム群と呼ばれる7つの巨大ダムと渡良瀬遊水地がすでに整備されているだけでなく、堤防も他の河川より余裕をもって造られています。さらに現在は中流部で、「首都圏氾濫区域堤防強化対策事業」が巨額の予算を投じて進行中です。

 八ッ場ダムを英雄視するデマに対してネット上に公表された反論をまとめて紹介します。

◆2019年10月23日 論座
https://webronza.asahi.com/national/articles/2019102100008.html?iref=wrp_rnavi_rank
ー八ツ場ダムは本当に利根川の氾濫を防いだのか? 嶋津暉之 水源開発問題全国連絡会・共同代表ー

●2019年10月26日 現代ビジネス
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68036
ー台風19号で感じた「先人に感謝」という言葉の耐えられない軽さ 赤木 智弘ー

●2019年10月27日 週刊朝日 AERA dot. (アエラドット)
https://dot.asahi.com/wa/2019102600021.html
ー「ゲリラ豪雨ではダムは機能しない」 間違いだらけの水害対策 亀井洋志、多田敏男ー

●2019年10月28日 日刊ゲンダイ(紙面掲載は10/25)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263717
ー注目の人 直撃インタビュー 西島和氏「八ツ場ダムが利根川を守ったというのは誤解」ー

◆2019年10月29日 現代ビジネス 
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68075
ー「八ッ場ダムが洪水を防いだ」という主張は、こんなにも危ういー

●2019年10月17日 ハーバー・ビジネス・オンライン
https://hbol.jp/204240
ー八ッ場ダム、スーパー堤防……。幼稚な翼賛デマは防災・治水を軽視する愚論 牧田寛ー

●2019年10月16日 プレジデント
https://president.jp/articles/-/30180
ー橋下徹「八ッ場ダムは本当に機能するのか」 再考・大豪雨時代の治水行政ー

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写真下=不動大橋より2019年10月23日撮影。右手に安全対策工事を実施した林地区勝沼の地すべり地帯。押さえ盛土も水没している。

写真下=上の写真と同じ地点を10月1日に撮影。この日、試験湛水が始まったが、この時点ではまだ、東京電力の水力発電所が吾妻川の水の大半を取水していたため、河道に流れている水はわずかだった。東京電力が取水を止めたのは10月7日。