”水もれダム”としてテレビでも取り上げられた農水省の大蘇ダムは、2005年にダム堤が完成したものの、試験湛水を行ったところ、ダム湖地盤からの水漏れが確認されました。2013年度から漏水対策工事が行われ、事業費は当初計画の5.5倍に膨れ上がったとのことです。ようやく今年6月にようやく工事が終わり、昨日、無事に試験湛水も終了したということですが、また新たな問題が明らかになりました。
◆2019年10月29日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/561698198851404897?c=92619697908483575
ー大蘇ダム利水、計画の3割 熊本側畑地、受益農家減少で負担増懸念もー
2020年4月に供用が始まる国営大蘇ダム(熊本県産山村)を水源とする土地改良事業で、熊本県内では実際に水を利用する畑地面積が現計画の3割強にとどまることが28日、分かった。県が、農家や地元自治体の意向を基に採算性を考慮して給水栓を整備する範囲を決めたため。40年前の当初計画と比べると1割程度となり、巨額の公費を投じたダム事業の実効性が問われそうだ。
受益農家の減少で、地元には将来の負担増を懸念する声もある。
大蘇ダムから農地までの水路は、国が幹線や支線を整備。そこから個別の農地に水を引くパイプラインと給水栓は、受益地である熊本県と大分県がそれぞれ整備する。
熊本県農村計画課によると、県内は18年度までに整備を完了。受益農地261ヘクタールのうち畑地207ヘクタールへの送水を計画していたが、給水栓まで整備したのは産山村の約40ヘクタールと阿蘇市の約30ヘクタールにとどまった。
同課は「地元の農業振興方針を踏まえた結果。残りの農地も、地元の需要があれば送水設備の整備を検討する」と説明。農林水産省は「送水区域は地元が決めることだが、国営事業を最大限活用してほしい」と話す。
大分県は受益農地1604ヘクタール全域へのパイプライン整備を目指し、21年度中の完了に向けて工事を進めている。
熊本県もパイプラインだけを引いた農地はほかに26ヘクタールあり、阿蘇市は「新たな県の事業の活用も検討し、利用を広げたい」と話す。
13年から国が進めるダム本体の漏水対策工事は、貯水機能を確認する試験湛水[たんすい]が28日に完了。農水省大野川上流農業水利事業所によると、異常は確認されなかった。今後、河川法に基づく国土交通省の検査を経て、来春からの供用を正式決定する。
漏水対策を含む総事業費は当初計画の5・5倍の720億円。熊本、大分両県の受益面積は計1865ヘクタールで当初計画の75%に縮小した。(中尾有希)