八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム貯水開始

 試験湛水を行っていた八ッ場ダムは、昨年12月12日に最低水位に達した後、最低水位を維持していましたが、昨日3月10日、国土交通省関東地方整備局は八ッ場ダムの試験湛水を3月9日に終了し、貯水を開始したことを記者発表しました。写真右下=満水状態の八ッ場ダム。2020年3月9日撮影。

 1964年の東京オリンピックの年には、夏に大渇水となり、”オリンピック渇水”、”東京砂漠”などと言われました。しかしその後、水資源開発が進み、利根川にはすでに国と(独)水資源機構のダムが11基あり、夏期利水容量は合計約4億5千万㎥となっています。
 八ッ場ダムは事業費が全国トップであることから、ダムの規模も飛びぬけて大きいと思われがちですが、貯水容量は1億750万㎥と全国のダムの中では50番目ぐらい、利根川水系では矢木沢ダム(2億430万㎥)、下久保ダム(1億3000万㎥)に次いで三番目の規模です。しかも、夏期の利水容量は2500万㎥しかありません。利根川の既設の11ダムの総利水容量は、八ッ場ダムが完成しても5.6%増えるだけです。しがたって、仮に八ッ場ダムができても、渇水に対する利根川水系ダムの状況は変わりません。

◆国土交通省関東地方整備局ホームページ
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000770273.pdf

 

 関連記事を転載します。記者発表には書かれていませんが、報道では貯水が前倒しで開始されたと書かれています。

◆2020年3月11日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/198924
ー八ッ場ダム31日完成 本格運用へ貯留開始ー

 国土交通省関東地方整備局は10日、建設中の八ッ場ダム(長野原町)の水をためて安全性を確認する試験湛水が9日終了し、31日に完成すると発表した。ダム機能が発揮できる状況が整ったことから、本格運用に向けて水をためる「貯留」を10日に開始、4月1日から利用を始める。ダム計画発表から68年を経て、大きな節目を迎える。

 ダム本体のコンクリート打設は昨年6月12日に完了し、試験湛水は10月1日に始めた。3~4カ月かけて満水にしてダム堤体や貯水池周辺の安全を確認する想定だったが、同12~13日の台風19号(令和元年東日本台風)の影響で同15日に常時満水位(標高583.0㍍)に到達。貯水位を下げ、台風により貯水池に流れ込んだ倒木の処理や安全性確認のため、12月12日から最低水位(536.3㍍)を維持していた。

 台風などで生じた「八ッ場林ふるさと公園」の出入り口となる車道の緩み対策工事も完了したため、試験湛水を終了した。

 ダムの高さは116㍍。洪水調節や本県や下流都県の水道、工業用水として活用する。県などがダム下流に新設工事中の発電にも使う。同局は「水不足が生じないよう八ッ場ダムを含めた利根川上流の9ダムの細やかな運用をしていく。東京五輪・パラリンピックの水資源を確保したい」とする。

 ダムの事業費は5320億円。1947年のカスリーン台風で利根川の堤防が決壊したことを受け、国が52年に建設調査に着手した。水没地区の反対運動や民主党政権による工事中止表明など紆余曲折を経た。

 本体の工事は2019年度で完了するが、地域振興施設など一部工事が20年度も残る。同町の萩原睦男町長は「試験湛水を予定通り終えられ良かった。(本年度で終わらずに)延期された事業があり、本当の意味での完成まで国と県と力を合わせしっかりと対応したい」と話す。

◆2020年3月9日 NHK首都圏ニュース
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20200310/1000045277.html
ー八ッ場ダム 前倒しで貯水を開始ー

 群馬県の八ッ場ダムは、東京オリンピック・パラリンピックに向けて水不足に備えるため、予定を3週間前倒しして10日から貯水を始めました。

群馬県長野原町の八ッ場ダムは、東京や千葉、埼玉など1都5県の治水や利水の目的で国が建設し、構想からおよそ70年を経て今月完成する予定です。
去年10月からは、試験的に水を貯めてダムの強度や安全性を確かめる「試験湛水」と呼ばれる工程に入り、台風19号の大雨で貯水率が100%になったあとも、水位を下げながら作業が続いていました。
その結果、関東地方整備局はダムと周辺の安全性が確認できたとして、10日から貯水を始めました。
関東地方整備局によりますと、この冬の雪不足に加え夏場の渇水などによる水不足に備え、予定を3週間前倒しして水をため始めたということです。
八ッ場ダムは構想からおよそ70年を経て来月から運用が始まります。
関東地方整備局は「春以降に水が足りない状況が起きないよう、気象状況も見ながら早めの対策を心がけていきたい」としています。

◆2020年3月10日 日本テレビ
http://www.news24.jp/nnn/news890217451.html
ー東京五輪 水不足防止で八ッ場ダム貯水開始ー

 計画から68年を経て今月末に完成する群馬県の八ッ場ダムで、10日から本格的な貯水が始まった。この夏の東京オリンピック・パラリンピック期間中に首都圏での水不足を防ぐため、予定より早い貯水開始。

群馬県北部にある八ッ場ダムで建設計画が持ちあがったのは1952年。途中、政権交代で建設が一時中止されたが、68年の歳月を経て今月末に完成する。

国土交通省関東地方整備局は、ダムの安全性や機能の確認が終わったため、予定より早く、10日に本格的な貯水を開始したと発表した。

この冬は記録的な暖冬でダムの上流に雪が少なく、今後も雪解けによる水の流入が少ないことが予想されるため、夏場に渇水で水不足が生じるおそれがある。このため、予定より早く貯水を始めることで夏場の渇水を防ぎたいとしている。

八ッ場ダムのある利根川水系は、首都圏の大切な水がめとなっているうえ、今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されるため、関東地方整備局では水不足にならないよう気象状況に注視してダムの運用をしたいとしている。

◆2020年3月10日 毎日新聞(共同通信)
https://mainichi.jp/articles/20200310/k00/00m/040/189000c
ー群馬・八ッ場ダム、31日完成 計画68年、事業費5320億円ー

 国土交通省は10日、群馬県長野原町の利根川支流に建設中の八ッ場ダムが31日に完成すると発表した。洪水調節や利水、発電に対応する多目的ダムで、5320億円を投じた大型公共事業。計画浮上から68年、民主党政権下では「コンクリートから人へ」の象徴として工事が一時中断した。豪雨災害が相次ぐ中、治水機能の強化にどう寄与するか真価が問われる。

 国交省は昨年10月から試験的に水位を上下させ、安全性を確認。完成に先立ち10日から貯水を始めた。東京五輪・パラリンピック期間中は会場やホテル、飲食店の水利用が急増すると見込まれる。(共同)

—転載終わり—

写真下=上毛新聞が台風などで車道の緩み対策工事が行われたと伝えている「八ッ場林ふるさと公園」は、地すべり地として知られる林地区勝沼で整備中の公園の名称か。2019年12月17日撮影。

ダム湖周辺では至る所でまだ工事が行われており、川原湯温泉の移転代替地とダム堤を結ぶ道路もこれから整備することになっているという。
 八ッ場ダムの観光施設である「なるほど!やんば資料館」、両岸の展望台はコロナウイルス感染拡大防止対策として閉鎖中。2020年3月9日撮影。