昨年の台風19号で決壊した千曲川の左右両岸約8キロ区間について、国土交通省北陸地方整備局は堤防全体を水が浸透しにくい素材やコンクリートで覆うことになりました。決壊箇所の上下流500メートル区間の堤防は、堤防の川側と住宅地側ののり面をコンクリートブロックで覆う工事を進めるとのことです。
私たち市民運動が求めてきた耐越水堤防工法(住宅地側ののり面を連接コンクリートブロックで覆う工法)がようやく実施されることになりました。
昨年12月4日の千曲川堤防調査委員会で示された堤防工法は、耐越水堤防工法ではなかったのですが、耐越水堤防工法に変更されました。千曲川流域では、昨年の水害後に今後の治水対策を考える集会が開かれ、流域住民が決壊しにくい堤防をつくるよう求めてきました。被災した住民の声が国土交通省を動かしたようです。
◆2020年3月31日 信濃毎日新聞
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200331/KT200330ATI090035000.php
ー堤防全体覆う工事に 千曲川 村山橋下流8キロ区間ー
国土交通省千曲川河川事務所(長野市)は30日、昨年の台風19号災害による長野市の決壊現場付近の千曲川左右両岸約8キロ区間で、堤防全体を水が浸透しにくい素材やコンクリートで覆う方針を明らかにした。約70メートルに及んだ決壊は、堤防を越えた水流により堤防の住宅地側が削られ、水圧に耐えきれなくなったのが主な原因とされる。新たな「被覆(ひふく)型」堤防の工事により、仮に越水した場合でも決壊がしにくくなるとしている。
30日夜、長野市内で開いた長沼地区復興対策企画委員会で説明した。対象は長野市と須坂市を結ぶ村山橋から川幅が狭くなる中野市立ケ花付近までの左岸(長野市側)約7・5キロ、右岸(須坂市、上高井郡小布施町側)約8・5キロの区間。特に決壊箇所の上下流500メートル区間の堤防は5月末までに、川側と住宅地側ののり面をコンクリートブロックで覆い、優先的に工事を進めるとした。
国と流域自治体が2027年度までに取り組む「緊急治水対策プロジェクト」では、堤防の上部や住宅地側ののり面下を強化する「危機管理型ハード対策」を実施するとの方針を示し、堤防の住宅地側のり面の多くは盛り土が露出する構造の予定だった。
国交省が設置した大学教授らによる技術検討会が25日の会合で、川幅が狭くなる手前の区間などには、被覆型の堤防を取り入れる方向性が示されたという。
長沼地区復興対策企画委の柳見沢(やなみさわ)宏委員長は、堤防の住宅地側の補強は地元が求めてきた内容だ―と評価。「今後は工事の実施時期や内容を確認したい」とした。
◆2020年4月3日 中日新聞
https://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20200403/CK2020040302000025.html
ー台風で決壊の千曲川堤防、8キロ補強 国決定、住宅地側もー
国土交通省千曲川河川事務所(長野市)は、昨年十月の台風19号災害で決壊した千曲川の堤防について、決壊現場を含む約八キロを補強する方針を決めた。決壊現場付近はこれまで河川側だけをコンクリートによる補強の対象にしていたが、住宅地側も対象に含めた。
計画では五月末までに決壊現場に近い同市長沼地区の堤防の河川側、住宅地側ののり面を五百メートルにわたって盛り土した後、コンクリートブロックを敷く。広範囲での決壊も警戒し、水があふれる恐れのある七キロ以上で補強を進める。
国交省の千曲川堤防調査委員会は昨年十一月、豪雨による越水で住宅側ののり面が削られ、決壊に至ったと結論付けており、河川事務所の吉田俊康副所長は「堤防をコンクリートで覆うことで水があふれても削れにくくなる」と説明した。
河川事務所の従来計画に対しては、地元住民から安全対策が不十分で再度の決壊を懸念する声が上がっていた。堤防決壊現場近くに住む笹井妙音さん(69)は「土がむき出しでは心配なので補強はありがたい」と話す一方で、「より安全にするために、堤防の高さを上げることも検討してほしい」と求めた。 (城石愛麻)
—転載終わり—
(参考ページ)
▽「千曲川堤防 越水対策強化 有識者委 復旧方針を了承」(2019年12月8日)
▽「台風19号で氾濫した千曲川、災害検証シンポ開催」(2020年2月17日、信濃毎日新聞)
▽「千曲川の治水対策、長沼の住民集会 一層強化を 国へ注文」(2020年2月3日、信濃毎日新聞)